気候変動の賠償が年間48兆円で日本は何兆円払うのか?

malerapaso/iStock
11月24日にCOP29が閉幕して、2035年までに、先進国は途上国への「気候資金」の提供額を年間3000億ドルまで増加させることを約束した。現在の為替レートで48兆円だ。
「気候資金」の内容は、①途上国が受ける気候災害についての被害への賠償と、②途上国のCO2等の削減のための費用と、③途上国が気候変動によって受ける災害に対する防災能力向上である。
年々この金額は増大してきていて(図)、現在、年間約1000億ドルが支払われているから、それを10年間で3倍増にするという訳だ。
さて日本もこの合意をした訳なので、応分の負担を要求される。
仮に48兆円の1割なら5兆円近いが、いったい誰が払うのか? なぜ政府はこんな約束を勝手にしてくるのだ? 国会議員はそもそもこんな約束を政府が勝手にしていることを知っているのか?
これだけでなく、11月25日には、政府は2035年までにCO2等を60%削減するという数値目標を提示した。これを第7次エネルギー基本計画に書きこんで、25年2月10日にはパリ協定に提出する構えだ。
すでに政府はグリーントランスフォーメーションのために今後10年で150兆円を洋上風力発電などに投資するとしている。だがこれでも60%削減などには到底足りない。
このままでは、日本から工場が消え、経済は破滅、減税で手取りが少々増えてたとしても、あっという間に吹き飛んでしまう。
加えてこの48兆円である。米国は来年1月20日にトランプ大統領就任初日にパリ協定から離脱することはほぼ確実だ。残るは欧州と日本だ。欧州も経済がガタガタだから、どうせ支払わないだろう。日本だけが、愚かにも、毎年何兆円も支払うのか?
ちなみに、これはいくら支払っても、当然の責務だと言われるだけで、誰からも感謝されない。何しろパリ協定の世界では、自然災害は全てCO2のせいで起きていることになっている。バイデン大統領やグテーレスがそう言い続けてきたからだ。
実際のところは、この連載で書いてきたように、統計で確認できるように自然災害の激甚化などそもそも起きていないから、CO2のせいの筈もない。
途上国はといえば、3000億ドルでは到底足りないとしている。元々、1兆ドルとか5兆ドルとか言っていたところが、大バーゲンして3000億ドルになった。なんにせよ、「これしか資金提供が無いのでは、我々はCO2をゼロまで減らすことなど出来ない」、という主張を延々と続けることになる。
こんな愚かなパリ協定を続けてはいけない。米国トランプの離脱に合わせて、日本もパリ協定から離脱すべきだ。
■

関連記事
-
「もしトランプ」が大統領になったら、エネルギー環境政策がどうなるか、これははっきりしている。トランプ大統領のホームページに動画が公開されている。 全47本のうち3本がエネルギー環境に関することだから、トランプ政権はこの問
-
16年4月29日公開。出演は原子力工学者の奈良林直(北海道大学大学院教授・日本保全学会会長)、経済学者の池田信夫(アゴラ研究所所長)、司会は石井孝明(ジャーナリスト)の各氏。4月の九州地震、3月には大津地裁で稼動した高浜原発の差し止めが認められるなど、原子力の安全性が問われた。しかし、社会の原子力をめぐるリスク認識がゆがんでいる。工学者を招き、本当のリスクを分析している。
-
先日紹介した、『Climate:The Movie』という映画が、ネット上を駆け巡り、大きな波紋を呼んでいる。ファクトチェック団体によると、Xで150万回、YouTubeで100万回の視聴があったとのこと。 日本語字幕は
-
ドイツの地金 ロシアのウクライナ侵攻で、白日のもとに晒されたことがある。 それは、脱炭素政策に前のめりなドイツが実はロシアの天然ガスにドップリと浸かっているという事実である。ドイツのエネルギー政策の地金が出てきたとでも言
-
福島の原発事故では、原発から漏れた放射性物質が私たちの健康にどのような影響を与えるかが問題になっている。内閣府によれば、福島県での住民の年間累積線量の事故による増加分は大半が外部被曝で第1年目5mSv(ミリシーベルト)以下、内部被曝で同1mSv以下とされる。この放射線量では健康被害の可能性はない。
-
バイデン政権は温暖化防止を政権の重要政策と位置づけ、発足直後には主要国40ヵ国の首脳による気候サミットを開催し、参加国に2050年カーボンニュートラルへのコミットや、それと整合的な形での2030年目標の引き上げを迫ってき
-
先日、ロンドンの著名なシンクタンクが主催するハイレベルのフリーディスカッションに参加してきた。テーマはエネルギーを巡る4つの相克(Quadlilemma)である。4つの相克とはエネルギー安全保障、環境保全、国際競争力、エネルギーアクセスを指す。エネルギーの安定供給を図りながら、温室効果ガスも削減し、エネルギーコストを抑えて競争力を確保し、かつエネルギーアクセスを有していない人々(世界の人口の26%)へのエネルギー供給を確保していくことはミッション・インポッシブルに近い難題である。
-
福島第一原発事故をめぐり、社会の中に冷静に問題に対処しようという動きが広がっています。その動きをGEPRは今週紹介します。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間