国内外から孤立する石破ゲル首相:締まりのない演説が暗示する未来
トランプ次期米国大統領の外交辞書に儀礼(プロトコール)とかタブーという文字はない。
大統領就任前であろうが、自分が会う必要、会う価値があればいつなんどき誰でも呼びつけて〝外交ディール〟に打って出る。
石破のトランプ詣でお断りの理由に「就任まで外国首脳には会わない」なんて方便はちゃんちゃらおかしい。
論は証拠、トランプ氏は11月29日、カナダのトルドー首相をフロリダの邸宅マール・ア・ラーゴに呼びつけて、関税や不法移民問題について協議している。
このことから分かるように、トランプ次期大統領は石破ゲル総理にはなんの関心もないのであろう。
ゲル外交
ゲル首相こと石破茂総理が誕生してほぼ1ヶ月が経った。
この間、言っていることがコロコロ変わる、総理になった途端に極端なトーンダウンと次から次へと批判が。
初めての本格的外遊であるアジア太平洋協力会議(APEC)では、思わず習近平主席との初対面の際に差し出された習氏の右手を〝両手で握り返した〟、曰く下手に出ている手下のようとか、挨拶回りにきた各国首脳に座ったまま握手をしたとか、スマホをいじっている暇があればもっと積極的に首脳周りをせよとか、ここぞとばかりに言われっ放しである。
まあ、国内で格好つけている分、外での一挙手一投足のヘマが目立つのだろうが。なんか気の毒な気もする。
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在ペルー日系人と懇談する石破首相
首相官邸HPより
トランプ次期大統領
トランプ氏だって、石破ゲル総理が亡き安倍元首相に対するガンコな政敵であったことや、現政権あたりで唯一親交のある麻生元首相を政権の座から引きずり降ろそうとした張本人であったことぐらいすでに知っているだろう。
であるのに、たった5分の電話会談で話が合ったようなことをいい、「お互いにいい仕事ができることを楽しみにしているということで会談を終えた」などと言えるのはいささかナイーブでないかと思う。
アジア版NATOとか日米地位協定とか・・・今後仮にチャンスがあっても一切口にしないのだろうか? アジア版NATOはともかくも、日米地位協定のことは、もしかしたら「ああいいよ。その代わりあとは一切自分たちの手(戦力)で周辺国に対応するようにね・・・」とトランプなら〝ディール外交〟の手札にするかもしれないというのは、私の知人の安全保障の専門家の言である。
マイク・ポンペオやジョン・ボルトンは次期トランプ政権にはもう居ないのだから。誰が日米安全保障条約やその周辺事情をレクするのだろうか。
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トランプ氏インスタグラムより
所信表明演説―地方創生2.0
そんな石破茂総理が11月29日初の所信表明演説を行った。
全文を読んだが、まあシャキッとしない。字ズラを見ても内容を読み返しても、なんか物足りない。出汁の効いていない味噌汁みたいで、味噌汁のお椀にゲル状になった味噌がぼんやりと浮かんでいるがごときである。
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第216回国会で所信表明演説をする石破首相
首相官邸HPより
そんななかで唯一私の目を惹いたのは「地方創生2.0」である。
私の郷里は石破氏の鳥取県の隣の兵庫県の山奥である。大した産業や観光業もなく、主な産業な農業。担い手平均年齢67歳の世界である。若者は都会に出て行ったきりか、安定を求める若者は地元の役所、学校、JAなどに勤めている。農業の主たる担い手ではない。言ってはなんだが、農業に元気や活力がない。
〝元気な地方から元気な日本を創る〟のだそうだが、その具体的施策に豊かな未来の日本を想起させるものはない。結局2.0って、交付金×2.0(地方創生交付金倍増)ってこと?
エネルギー問題・原子力
さて、所信表明演説で石破さんは原子力にどのようにふれるのかふれないのかが、私の最大の関心事だった。
原子力への言及は、この地方創生2.0の小節のなかにあった。
地方の取り組みが花開くためには、国としての環境整備も必要です。GXの例では、洋上風力、地熱や原子力の脱炭素電源を目指して、工場やデータセンターの進出が進み、教育機関との連携などによって、新たな地域の活力に繋がる動きが始まりつつあります。
このようなきわめて受け身の態度でGXが本当に乗り切れるのだろうか。急速に進歩するAIへの対応力はどうするのだろうか。
私は常々説いてきたように、GXに対処するには2040年代までに大型原子力発電所100基以上の新設が欠かせない。
https://agora-web.jp/archives/240629162834.html
そのためには、①新たな資金調達制度の法制化(例は、英国のBAR[規制資産ベース])、②原子力規制改革、③原子力賠償法の見直しが急務である。
① についてはやや議論がなされているようであるが、②と③についてはまったくもってお寒い限りなのである。なんら、実質感のある動きはない。
亡国のゲル総理にならないことを祈るばかりだ。
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