小池都知事が伊豆諸島を洋上風力で環境破壊とCOPで宣言

2024年11月20日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

アゼルバイジャンで開催されている国連気候会議(COP29)に小池東京都知事が出張して伊豆諸島に浮体式の(つまり海に浮かべてロープで係留する)洋上風力発電所100万キロワットの建設を目指す、と講演したことが報道された。

伊豆諸島に洋上風力発電導入へ…小池都知事がCOP29で方針強調

どんな発言をしたのか調べてみたが東京都はまとめていないようだ。

知事の海外出張について(東京都)

小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和6年11月15日)

なので、実際に何を話したのかは突き止められなかった(誰か知っていたら教えてください)。

それにしてもこの構想、ちょっと聞いただけですぐに問題だらけだ。

【景観】
伊豆諸島は富士箱根伊豆国立公園の一部であり、しかも風光明媚な観光地で、多くの人々が自然の癒しを求めて訪れる。ビーチに行っても、100万キロワットもの風車が林立していれば、台無しではないのか? 少なくとも私は1本も見たくない。

【浮体式という技術】
冒頭の記事では「都によりますと、浮体式の洋上風力で現在稼働しているものは、世界的にみても現時点では0.1GW程度にとどまっているということで、都が目指すGW級の浮体式洋上風力発電が実現すれば世界最大となります」とのことだ。つまり、浮体式の洋上風力発電というのは、まだ実証途上の技術に過ぎない。なぜそれを1GW、つまり100万キロワットも建設する計画を建てるのか? それに伊豆諸島は台風も多いし海流も早い。

【送電線】
100万キロワットの風力発電は伊豆諸島では消費しきれない。だから本土まで送電線を引かねばならないが、深い海が横たわっている。海底に送電線を引くことは出来るのか? 仮に出来るとして、コストは?

【費用】
浮体式の洋上風力はとても高くつく。送電線まで含めれば、なおさらだ。伊豆諸島まで行って工事するなら、ますますコストは膨らむ。離島では、何をするにもコストが嵩むのだ。誰が、いくら負担するのだろうか?

小池知事は「東京都再エネ実装専門家ボード」で「専門家」に意見を聞いてこの構想に至ったというが、いったいどんな専門家やら・・。

上記の問題点を少しでも考えたのだろうか。

この構想(というより妄想)、まずは机上で検討してみて、結果を都民に公開し、ダメ出しをされたらさっさと諦めるべきだ。住宅の太陽光パネル義務付けはゴリ押しで条例を通してしまったが、まさか同じことをするのではないかと危惧する。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 透明性が高くなったのは原子力規制委員会だけ 昨年(2016年)1月実施した国際原子力機関(IAEA)による総合規制評価サービス(IRRS)で、海外の専門家から褒められたのは組織の透明性と規制基準の迅速な整備の2つだけだ。
  • 10月22日、第6次エネルギー基本計画が7月に提示された原案がほぼそのままの形で閣議決定された。菅前政権において小泉進次郎前環境大臣、河野太郎前行革大臣の強い介入を受けて策定されたエネルギー基本計画案がそのまま閣議決定さ
  • 2月24日、ロシア軍がウクライナ侵攻を始めてからエネルギーの世界は一転した。ロシアによる軍事侵攻に対して強力な経済制裁を科すということをいち早く決めた欧米諸国は、世界の生産シェアの17%を占めるロシアの天然ガスについて、
  • 「ブラックアウト・ニュース」はドイツの匿名の技術者たちがドイツの脱炭素政策である「エネルギーヴェンデ(転換)」を経済自滅的であるとして批判しているニュースレター(ドイツ語、一部英語、無料)だ。 そのブラックアウト・ニュー
  • 原子力規制委員会が11月13日に文部科学大臣宛に「もんじゅ」に関する勧告を出した。 点検や整備などの失敗を理由に、「(日本原子力研究開発)機構という組織自体がもんじゅに係る保安上の措置を適正かつ確実に行う能力を有していないと言わざるを得ない段階に至った」ことを理由にする。
  • 日本各地の火山が噴火を続けている。14年9月の木曽の御嶽山に続き、今年6月に鹿児島県の口之永良部島、群馬県の浅間山が噴火した。鳴動がどこまで続くか心配だ。火山は噴火による直接の災害だけではない。その噴煙や拡散する粒子が多い場合に太陽光を遮り、気温を下げることがある。
  • 全国知事会が「原子力発電所に対する武力攻撃に関する緊急要請」を政府に出した。これはウクライナで起こったように、原発をねらって武力攻撃が行われた場合の対策を要請するものだ。 これは困難である。原子力規制委員会の更田委員長は
  • 国会は今、GX推進法の改正案を審議している。目玉は2026年度から本格稼働する予定の国内排出量取引制度(GX-ETS)の整備を進めることであり、与党は5月15日に採決する構えであると仄聞している。 日本政府は、排出量取引

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑