中国の狙いは台湾のエネルギー封鎖と環球時報が報じた
遠藤誉氏のホームページで知ったのだが、10月14日に実施された中国の軍事演習の狙いは台湾の「エネルギー封鎖」であった。中国環球時報に国防大学の軍事専門家が述べたとのことだ。
「連合利剣-2024B」演習は台湾島の主要港の封鎖を実施 専門家:台湾のエネルギー輸入を封鎖する能力がある(中国語)(環球時報 10月14日午後3時51分)
以下はその抜粋の機械翻訳:
国防大学の軍事専門家、張志氏は環球時報に対し、今回の演習は台湾島のいくつかの主要港を封鎖するという明確な方向性があると語った。張志氏は、「台湾はエネルギー資源が非常に乏しい孤島であり、人々の生活と社会活動に必要なエネルギーのほとんどは輸入する必要がある、特に液化天然ガスは東部戦区に位置している」と述べた。「人民解放軍は、台湾のエネルギー資源の輸入を阻止する能力があることを証明し、それによって台湾の経済と社会に重要な影響を与えることを望んでおり、これは『台湾独立』分離主義勢力に対するより強力な抑止力を生み出すことである・・」
実際のところ、今回の軍事演習(下図中の赤)は、台湾の6つの主要港の沖合で行われている。
これに合わせて中国海警局も台湾を1周するパトロールをした。
中国海警局も台湾周辺でパトロール、人民解放軍と歩調合わせ「台湾をコントロール」
台湾が中国海軍によって取り囲まれ、さらに台湾に近づくタンカーが中国海警局によって「大量破壊兵器を持ち込もうとしている」などと難癖をつけて「取り調べ」を受けて近寄れないようになると、中国による「封鎖」状態が完成する。
台湾のエネルギー供給は日本よりもさらに脆弱だ。
エネルギーの9割以上が化石燃料の輸入によるものだ。残り少ない原子力も2025年には脱原発政策が完成して全て消滅してしまう。再生可能エネルギーは2.7%しかない(下図)。
エネルギー備蓄も貧弱だ。海上封鎖されると、台湾は11日でLNG火力発電が止まり、40日で石炭火力発電が止まる。すると発電の8割が失われる。もちろんいざという時には節約しながら使うにしても、3カ月も持たないだろう。
ところが当の台湾はどうかというと、どうも危機意識が感じられないのが心配だ。9月19日にBS TBSの報道1930に筆者が出演した際、台湾安全研究院国防戦略・資源研究所長 蘇紫雲氏が取材班のインタビューに答えている(動画の36分ごろ)。
ここでは「太陽光発電を増やす」「有事には工場への電力供給を止めて発電できる期間を7か月まで伸ばす」と述べている。
だがこれで本当に大丈夫か? 太陽光は不安定であるし、いつ起こるか分からない台湾有事に間に合わない。また工場を止めてしまえば、経済活動にも軍事行動にも重大な支障を来す。
脱原発を止めて原子力活用に舵を切るとか、石炭の備蓄を増やすといった対策こそ、必要なのではなかろうか。
「台湾有事など本当にあるのですか」とよく聞かれるが、全くやる気がなければ、このような軍事演習をすることは無かろう。中国は、隙あらば襲い掛かってくる、ということだ。
ならば、その隙を見せないように、抑止が必要であり、中国がエネルギー封鎖という狙いをはっきりさせた以上、台湾はそれに備えるべきだ。
日本にとっても決して他人事ではない。
イエメンのフーシ派はドローンなどによる威嚇で紅海を事実上封鎖している。日本近海も、同様な方法で、封鎖されるかもしれない。備えることが必要だ。
■
関連記事
-
国際環境経済研究所主席研究員 中島 みき 4月22日の気候変動サミットにおいて、菅総理は2030年度の温室効果ガスを2013年度比で46%削減、さらには50%の高みを目指すと表明。これまでの26%削減目標から7割以上引き
-
昨年夏からこの春にかけて、IPCCの第6次報告が出そろった(第1部会:気候の科学、第2部会:環境影響、第3部会:排出削減)。 何度かに分けて、気になった論点をまとめていこう。 縄文時代は「縄文海進期」と言われ、日本では今
-
鳩山元首相が、また放射能デマを流している。こういうトリチウムについての初歩的な誤解が事故処理の障害になっているので、今さらいうまでもないが訂正しておく。 放射線に詳しい医者から聞いたこと。トリチウムは身体に無害との説もあ
-
気候研究者 木本 協司 1960-1980年の気象状況 寒冷で異常気象が頻発した小氷河期(1300-1917)以降は太陽活動が活発化し温暖化しましたが、1950年頃からは再び低温化傾向が始まりました。人工衛星による北極海
-
国際環境経済研究所(IEEI)版 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が7都府県に発令されてから、およそ3週間が経ちました。様々な自粛要請がなされる中、宣言の解除予定である5月を心待ちにされている方もいらっしゃると思います。
-
早野睦彦 (GEPR編集部より)GEPRはさまざまな立場の意見を集めています。もんじゅを肯定的に見る意見ですが、参考として掲載します。 高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市) (本文) もんじゅの存在意義の問いかけ 「政府
-
新潟県知事選挙では、原発再稼動が最大の争点になっているが、原発の運転を許可する権限は知事にはない。こういう問題をNIMBY(Not In My Back Yard)と呼ぶ。公共的に必要な施設でも「うちの裏庭にはつくるな」
-
提携する国際環境経済研究所(IEEI)の竹内純子さんが、温暖化防止策の枠組みを決めるCOP19(気候変動枠組条約第19回会議、ワルシャワ、11月11?23日)に参加しました。その報告の一部を紹介します。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間