データが語る「人為的地球温暖化説」の崩壊

2024年08月07日 06:50
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元静岡大学工学部化学バイオ工学科

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気候関係で有名なブログの一つにClimate4youがある。ブログ名の中の4が”for”の掛詞だろうとは推測できる。運営者のオスロ大学名誉教授Ole Humlum氏は、世界の気候データを収集し整理して世に提供し続けている。

内容は海洋と大気の両方の幅広い温度測定をカバーしており、海洋振動、海面水位、雪氷の測定、嵐の記録などにも言及する。「気候変動」に関心ある人なら、必ず参照すべき情報源の一つと言えるだろう。

このブログは毎年、気候報告書(The State of the Climate)で年次レビューを発表するほか、時々内容を更新している。その最新版が7月20日に出ているが、全64頁に及ぶ内容豊富なデータ集である。その冒頭部分と和訳を以下に示す(和訳は田中博・筑波大名誉教授によるもの)。

SHORT SUMMARY OF OBSERVATIONS UNTIL JUNE 2024

1: Observed average annual global air temperature change last 30 years is about +0.016oC (UAH). If this change rate remains stable, additional average global air temperature increase by year 2100 will be about +1.2oC.

2: Tide gauges along coasts indicate a typical global sea level increase of about 1-2 mm/yr. Coastal sea level change rate last 100 year has essentially been stable, but with periodic variations. If change rate remains stable, global sea level at coasts will typically increase 8-16 cm by year 2100, although many locations in regions affected by glaciation 20,000 ago, will experience a relative sea level drop.

3: Since 2004 the global oceans above 1900 m depth on average have warmed about 0.037oC. The maximum warming (about 0.2oC, 0-100 m depth) mainly affects oceans near Equator, where the incoming solar radiation is at maximum.

4: Sources and sinks for CO2 are many. However, changes in atmospheric CO2 follow changes in global air temperature, and changes in global air temperature follow changes in ocean surface temperature.

5: There is no perceptible effect on atmospheric CO2 due to the COVID-related drop in GHG emissions 2020-2021, demonstrating that natural sinks and sources for atmospheric CO2 far outweigh human contributions. Therefore, any future reductions in the use of fossil fuels are unlikely to have any significant effect on the amount of atmospheric CO2.

2024年6月までの観測結果の要約

1:過去30年間に観測された世界の年間平均気温の変化は約+0.016℃(UAH)です。この変化率が安定していれば、2100年までに世界の気温の平均上昇は約+1.2℃ になります。

2:海岸沿いの潮位計は、世界の海面上昇が約1~2mm/年であることを示しています。過去100年間の沿岸海面の変化率は基本的に安定していますが、周期的な変動があります。変化率が安定していれば、2100年までに沿岸の海面は8~16cm上昇しますが、20,000年前の氷河作用の影響を受けた地域の多くの場所では、相対的に海面が低下することになります。

3:2004年以降、深さ1900mまでの世界の海は平均で約0.037℃温暖化しています。最大の温暖化(約0.2℃、深さ0~100m)は、主に太陽放射が最大となる赤道付近の海域に影響を及ぼします。

4:CO2の発生源と吸収源は多数あります。ただし、大気中のCO2の変化は地球の気温の変化に追随し、地球の気温の変化は海面温度の変化に追随します。

5:2020~2021年のCOVID関連のGHG排出量の減少による大気中のCO2への影響は目立ちません。これは、大気中のCO2の自然の吸収源と発生源が人間の寄与をはるかに上回っていることを示しています。したがって、将来化石燃料の使用を削減しても、大気中のCO2の量に大きな影響を与える可能性は低いでしょう。

衝撃的な報告書の内容

何の誇張もなく淡々と書かれているが、実際にはその内容はかなり衝撃的である。何故なら、世の中に広まっている「人為的地球温暖化説」を、根底から否定する内容であるから。特に4と5が。

4は、書いてあることを逆に言うと、温度変化は海水温→気温の順に起こり、気温変化→大気中CO2濃度変化の順に起こる、となる。「人為的地球温暖化説」ならば、大気中CO2濃度→気温変化→気候変動、海水温変化の順になるはずだが、ちょうど真逆なのである。さぞや温暖化論者たちにとっては「えらいこと」「そんなバカな・・」であるだろう。

しかし、科学的に冷静に考えてみれば、この記述には何の不思議もない。まず、温度変化が海水温→気温の順に起こるのは、熱容量が両者で1000倍も違うから当然である。無論、海洋の熱容量が大気の1000倍以上大きい。だから、気温は海水温変動に敏感に追従するが、逆に気温が少々変動しても海水温はほとんど変化しない。

折しも、最近、気象庁と東大などが、去年の猛暑の主な要因が海洋にあるとする発表を行った。海洋水温の極端な高温が続く海洋熱波の影響が大きかったと。海洋熱波の原因の一つとして「地球温暖化」も挙げられてはいるが、これは「負け惜しみ」に近い感じだ。上記のように熱容量が桁違いなので、大気温の上昇が海水温の上昇を招くことがほぼあり得ないことくらい、彼らは分かっているだろうに。

TVのお天気キャスターたちも、最近は海水温の高さに言及することが増えたが、しかし彼らは海の熱容量が巨大であることに決して触れない。まるでタブーであるかのように。

海洋の熱容量が大気よりずっと巨大であることを認めてしまうと、気温変動など海水温には全然響かないこと、ましてや大気中の微量成分であるCO2の動向など海水温にはほぼ影響しないことなどは、ほとんど自明のことになってしまう。だから彼らは触れたがらないのではないか?

海水温変動がもたらす地域差と影響

さて、報告書15頁の海洋表面温度分布を見ると、太平洋北部の日本周辺はほぼ全域、温度が高い。特に北海道など北日本でその傾向が著しい(最大で5℃近く高い)。水産物の取れ高や内容が大きく変化するのも、これだけ水温が変化しているので無理はない。魚たちは水温環境に敏感に反応するから。北海道でサケが獲れず、代わりにブリが大漁、などが典型例と言える。

逆に、今は冬の南米では近海の表層温度が低くて酷寒に苦しんでいる。世界中どこでも暑いと思ったら大間違いだ。また暑さが続くと「温暖化」を念仏のごとく唱える単細胞思考も、どうにかならないものかと思う。日本付近では今年の夏が暑く大雨が降るのも、基本的には近海の海水温が高いせいなので、おそらく今年も去年並みの暑さと大雨が続きそうだ。つまり、気温変動の第一原因は、海水温の変化である。

しかし日本のマスコミは、海水温の上昇も「地球温暖化」の結果だと言わんばかりに報道する。ここには、海洋と大気の熱容量が1000倍以上違うという科学的事実が存在しないみたいだ。

今は気象庁でも気象予報の際にエルニーニョ・ラニーニャ現象に言及する時代である。これらは海洋の温度に関わる現象なのだ。ここではまず、海水温→気温の因果関係を押さえておこう。

海水温変動の謎とその影響

それでは、海水温がなぜ変動するのかと言えば、それはまだ十分に解明されていない。第一原因が太陽放射であることは確実だが、太陽放射にも長波と短波がある。さらに、それを遮るエアロゾルや雲の生成具合が影響し、雲の生成には銀河宇宙線も効く(昨年、その研究例を紹介した:「科学は真実を明らかにする:銀河宇宙線と雲生成の関係を明らかにした論文」)。季節や月にもよるが、銀河宇宙線放射密度と海洋表面温度の分布がきれいに同期しているデータもあった。

海水温の変動には北太平洋の太平洋十年規模振動(Pacific Decadal Oscillation:PDO)や北大西洋における大西洋数十年規模振動(Atlantic Meridional Overturning Circulation:AMOC)などの周期的温度変化が知られており、地球平均気温の長期的な変動と関連が深いことは広く知られている。なお、エルニーニョ・ラニーニャ現象もPDOの一環と見なされている。

また海流の動きも立体的に複雑であり、例えば黒潮の「大蛇行」について、何も解明されていない。長い年月をかけて海の深層で流れる動きも存在すると言うし、海の複雑なシステムには、まだまだ人知の及ばない領域が広大に拡がっているように思われる。

大気中のCO2動態とその誤解

次に、上記報告の第5項が重要である。実は、この内容はIPCC報告書にも地球全体での炭素循環量として記載されている。私が2021年4月に発表した論文でも引用しているが、大気へのCO2放出量=218.2 Gt-C/年、大気から海・陸へのCO2吸収量=215.0 Gt-C/年、差し引き3.2 Gt-C/年が大気に残留し、これが毎年約2ppmずつ上昇する濃度と計算が合う。なおGt-C/年とは、炭素換算ギガ(=109)トン/年の意味である。

片や、人類の放出するCO2総量は、8〜9 Gt-C/年であり、このうち化石燃料由来は6.4 Gt-C/年とされる。つまりこれは全CO2放出量の2.9%に過ぎない。以上が上記第5項で述べられている具体的な内容である。

全CO2放出量の2.9%に過ぎない化石燃料起源CO2が、2020~2021年のCOVID関連の減少によって多少変動したとしても、大気中のCO2への影響が微々たるものであることは当然である。実際、大気中CO2濃度変化を見ると、観測開始以来50年以上もの間ずっと、ほぼ一定速度で上昇しており、年間変動はほとんど観察されていない(無論、微細な変動はある)。

なお、地球上のCO2は毎年200 Gt-C/年以上も出入りしているのに、大気残留量がまるで計ったように3〜4 Gt-C/年に収まっている理由は、まだ解明されていない。大気にも海洋にも、我々の理解が及んでいない領域は、まだたくさん残っているわけだ。

この大気残留CO2量3.2 Gt-C/年は、化石燃料由来CO2量6.4 Gt-C/年の半分に相当する量であるが、IPCC報告書では「人類の放出するCO2の約半分が大気中に蓄積する」と書いている。この違いは、実は大きい。話が全然違うのだ。

IPCC報告書の主張を言い換えると、人為的CO2の半分が、他の大部分の自然由来CO2を全部押しのけて、選択的に大気に残留すると言っているに等しい。完全混合する気体で、そんなことが実際に起きると、本気で考えたのだろうか?そもそもこんな内容が、200人以上の科学者の手による報告書に書かれるとは驚きだ。そして、誰も異議を唱えない(異議を唱えたのは、2021年の私の上記論文で)。

私の考えでは、大気中に放出されたCO2は、その起源(天然・人工)で区別されることなく平等に吸収されるはずなので、大気に残る人為的CO2量の比率は、大気へ放出される時の比率と同じはずである。つまり放出時の比率8/218.2=3.6%程度しか含まれないので、3.2×0.036=0.11 Gt-C/年しか残留しない。濃度で言えば、毎年2ppm増えるうちの0.07ppm程度である。この中の何%かが変化しても全体濃度に影響しないのは当たり前である。

なお、IPCCの記述は単なる書き間違いではない。彼らは、自然界のCO2収支は平衡状態にある(つまり出入りゼロだ)から、大気中CO2で増えた分(約2ppm=年間4〜5 Gt-C)は人間由来だと主張しているからだ。

しかし、もし自然界のCO2収支は平衡状態にあるとの仮定が正しいなら、人間活動の影響がなければ大気中CO2濃度は一定のはずだが、海底堆積物の分析により過去150万年間の大気中CO2濃度の変動を復元した研究を見ても、その値は常に変動しており、一定値が継続した期間などは観察されない。つまりこの仮定は成り立たない。またこの研究では、100万年より前の温暖だった時代でCO2濃度は決して高くはなかったことも指摘されている。つまりここでも、CO2が多ければ温暖化、と言う説は否定されている。

気温・CO2・海面温度の相互関係

次に上記報告の第4項を補足したい。ここでは「大気中のCO2の変化は地球の気温の変化に追随し、地球の気温の変化は海面温度の変化に追随」と書かれているが、実際には、海面温度の変化が大気中CO2濃度に強く響く。

なぜならCO2の海水への溶解度は温度が上がるほど小さくなるので(気体の液体への溶解度は、一般に温度上昇とともに低下する)、海水温が上がると大気中への放出が増えて大気中濃度が上がり、海水温が下がると海面吸収が増えて濃度が下がるからである。むろん、海水温が変化すれば気温も変化するので、結果的にCO2変化は気温変化に追随するように見える。

なお、私の知人の研究では、CO2変化への影響因子を統計的に分析すると、第1位に海水表面温度が出てくるとのことだ。この結果も、言わば当然の帰結と言える。この研究成果は、近々論文として世に出ると聞いている。

最近の異常な暑さの原因は?

最後に、去年から今年にかけての異常な暑さについて触れたい。衛星観測による世界平均気温偏差の推移を見ると、過去数年おきに発生した気温ピークのほぼ全てにエルニーニョが関与していた。例えば1998年、2010年、2016年、2020年など。しかし、昨年2023年は異例の記録的な暖かさの年だったが、強いエルニーニョ年とは言えなかった。これはどうしたわけだろうか?

その答えの一つとして、米国の物理学者ハビエル・ピノスが「2022−2024年の異常な気候現象」と題する興味深い論文を書いている。その中で指摘されているのは、2022年1月に起きたフンガ・トンガ火山の大噴火による影響である。

通常の火山噴火ではエアロゾルや火山灰をまき散らすため日射量の減少と地表面冷却をもたらす。つまり寒冷化を引き起こす。しかし、フンガ・トンガは異常で、海底からの噴火で大量の水蒸気を成層圏にもたらした。成層圏の水蒸気濃度変化の観測データが同論文に載っているが、成層圏に大量の水蒸気が流入した様子がはっきり分かる。成層圏の水蒸気は10%も増加したとのこと。

強力な温室効果ガスである水蒸気がこれだけ増えたら、当然温室効果が強まり、地表を温めながら成層圏からは赤外放射量が増えて成層圏温度は下がる。火山噴火の影響は少し時間が経ってから現れるらしく、22年1月の噴火が23年以降の高温の原因になっているようである。この仮説が正しいならば、成層圏内の水蒸気濃度が元に戻れば地表面温度も正常に戻るはずである。

またこの論文の後半では今年1月から3月にかけて起きた「極渦(Polar Vortex)」の発生とその影響について述べている。長くなるので詳しい説明は省くが、この現象も成層圏の急激な温暖化(SSW)を引き起こす。SSWは通常約2年に1回発生するが、23〜24年の冬は初めて3回ものSSWが観測されており、この面でも最近が特に異常気象状態にあることを示す。しかしその影響は一時的なものであるとも著者は述べている。

「人為的地球温暖化説」は崩壊している

こうして最新研究の成果などを見るにつけ、我々の地球環境への理解は、まだまだ未熟な域に留まっていると痛感させられる。それでも、明確に分かってきたのは、海水温→気温→CO2濃度の因果関係であり、人類起源CO2の影響の小ささである。

要するに、信頼すべき科学的データは「人為的地球温暖化説」が完全崩壊していることを告げている。これはCO2排出削減=脱炭素が無効で無意味であることを示す。つまり脱炭素政策への税金支出は、すべて無駄遣いである。そろそろ多くの日本人は「人為的温暖化真理教」からの脱却を図るべき時期に来たと私は考える。

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