ジャニーズ問題と脱炭素の共通点
なんとなく知っていたり噂はあったけど、ファンもメディアもスポンサー企業も皆が見ないふりをしていたことでここまで被害が拡大してしまったという構図が、昨今の脱炭素や太陽光発電などを取り巻く状況とよく似ています。
産業界でも担当者レベルで話してみると、日本がCO2排出量をゼロにしても世界全体で3%しかないのに意味があるのか、この10年で停電のリスクが増えていないか、太陽光パネルは強制労働の疑いがあるらしい、米国では輸入禁止になったらしい、山や森林を切り崩して環境を破壊している、土砂災害や土壌汚染につながっていないか、といったあたりを気にしている人が結構おられます。
でも・・・、国が言っているし自治体が言っているし経団連が言っているし会社の方針だし他社が取り組んでいるしメディアが言っているし取引先や金融機関から言われるし・・・ということで黙っている。不都合な部分は見ないふりをしている。
構図としてはそっくりです。
さて、ジャニーズ問題に対する産業界や企業側の対応に関する報道を一部抜粋します。
経済同友会の新浪剛史代表幹事は12日の定例記者会見で、ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川元社長による性加害問題に関連し、同事務所の対応を「真摯に反省しているのか大いに疑問だ」と批判した。企業が広告起用を見直す動きについて「毅然とした態度を示す必要がある」と述べた。
新浪氏が社長を務めるサントリーホールディングスは、同事務所と新たな契約を結ばない方針だ。
アサヒ社長「ジャニーズ起用継続は人権侵害」 問われるTV局の対応
勝木社長は「マーケティングに影響がないとはいえないが、代替策を考える。人権を損なってまで必要な売り上げは1円たりともありません」とはっきりと言っています。
【独自】《ジャニーズCM打ち切り問題》元ネスレ社長独占告白! 看板商品のCMに退所後の香取慎吾さんを起用…「タレントには罪がない」という理由
ジャニー氏の性癖については、単なる噂とはいえ昔から耳にしていました。グローバルの常識では、噂の段階でもNGです。
“今回の件について「(ジャニー氏の)性加害が本当かどうかわからなかったので起用していました」と弁明している企業もありますが、言い訳にならないと思います。
このような経営判断を表明することは大変に立派なことですし筆者も大いに賛同いたします。
一方で、上記の企業をはじめジャニーズ事務所との契約を見直すと表明した企業のウェブサイトでは、SDGsやサステナビリティの取り組みとして再エネ電力の購入や自家発太陽光発電の導入が紹介されています。
しかしながら、CO2削減のために契約を切り替えた再エネメニューの元になるメガソーラーや、自社の敷地に設置した太陽光パネルはほとんどが中国製のはずです。言うまでもなく、中国製太陽光パネルは新疆ウイグル自治区における人権侵害が疑われており、世界ウイグル会議のドルクン・エイサ総裁は「中国製のパネルであればジェノサイド(民族大量虐殺)に加担することになる」と訴えています。
大手企業であれば必ず自社の行動指針を策定し環境や人権に対する取り組み方針を公表しています。ジェノサイドに加担したり森林破壊の上に成り立っているビジネスから得られる売り上げは1円たりともあってはなりません。噂の段階でもNGだし、本当かどうかわからなかったという言い訳はできないはずです。
今回のジャニーズ問題をきっかけにして、脱炭素における人権についても再考されることを願います。
■
関連記事
-
IEA(国際エネルギー機関)が特別リポート「エネルギーと大気汚染」(Energy and Air Pollution)を6月発表した。その概要を訳出する。 [2016年6月27日] IEAのリポートによれば、エネルギー投
-
はじめに 世界の脱炭素化の動きに呼応して、今、世界中の自動車メーカーが電気自動車(EV)に注力している。EV化の目的は走行中のCO2排出を削減することにあり、ガソリンエンジンなどの内燃機関を蓄電池駆動のモーターに切替えて
-
ドイツ政府は社民党、緑の党、自民党の3党連立だが、現在、政府内の亀裂が深刻だ。内輪揉めが激しいため、野党の発する批判など完全に霞んでしまっている。閣僚は目の前の瓦礫の片付けに追われ、長期戦略などまるでなし。それどころか中
-
村上さんが委員を務める「大阪府市エネルギー戦略会議」の提案で、関西電力が今年の夏の節電期間にこの取引を行います。これまでの電力供給では、余分に電力を作って供給の変動に備えていました。ところが福島の原発事故の影響で原発が動かせなくなり、供給が潤沢に行えなくなりました。
-
12月4日~14日、例年同様、ドバイで開催される気候変動枠組み条約締約国会合(COP28)に出席する。COP6に初参加して以来、中抜け期間はあるが、通算、17回目のCOPである。その事前の見立てを考えてみたい。 グローバ
-
(上)より続く 受け入れられた遺伝子組み換え作物 イリノイ州の農家のダン・ケリーさん(68)の農場も訪れた。 よく手入れされた美しい農園だった。大学卒業後に会社務めをした後で、父親の農場を手伝いながら金を貯め、土地を自分
-
エネルギー問題では、常に多面的な考え方が要求される。例えば、話題になった原子力発電所の廃棄物の問題は重要だが、エネルギー問題を考える際には、他にもいくつかの点を考える必要がある。その重要な点の一つが、安全保障問題だ。最近欧米で起こった出来事を元に、エネルギー安全保障の具体的な考え方の例を示してみたい。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間