グテーレス国連事務総長の"地球沸騰 "は、多くの人に否定された
先日、グテーレス国連事務総長が「地球は温暖化から沸騰の時代に入った」と宣言し、その立場を弁えない発言に対して、多くの人から批判が集まっている。
最近、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の新長官として就任したジム・スキー氏は、「1.5℃の目標は存亡の危機ではない。1.5℃の気温上昇が人類の存亡を脅かすとほのめかすのは良くない。地球の気温がこれだけ上昇しても、絶望したり、ショックに陥ったりするべきではない」と発言しており、気候変動の議論に対してバランスのとれたアプローチを求めている。
Don’t overstate 1.5 degrees C threat, new IPCC head says
また、米大統領候補であるビベック・ラマスワミ氏(共和党)は、気候変動アジェンダに異議を唱えている。バイオテクノロジー起業家であり、企業の社会的「正義」を告発する『Woke, Inc.: Inside Corporate America’s Social Justice Scam』の著者でもあるラマスワミ氏は、「実際の気候変動よりも、出鱈目な気候変動政策のために多くの人々が死んでいる」と語っている。
Vivek Ramaswamy says the ‘climate change agenda’ is a hoax
一方で、気候科学者マイク・ハルム氏は、人為起源の地球温暖化について主流派の見解を持つとされている。彼の新著『Climate Change isn’t Everything』は、「気候主義」がどのようにして社会におけるマスター・シナリオとなり、すべてを非難するために使われているかについて論じている。
複雑な「気候」現象が単純化され、すべてを包含し、終末論的な表現がますます強まっている。それが、理性的な議論を拒む一方で、説得力のある感情的なマスター・ストーリーを形成している。
ロシアのウクライナ侵攻にはじまり山火事の管理に至るまで、今日の世界が直面している多くの社会的、政治的、生態学的問題が、すぐに気候変動化され説明される。複雑な政治的および倫理的課題が非常に狭い枠組みで捉えられると、気候変動を阻止することが現代の最高の政治的課題であるかのように捉えられ、他のすべてがこの1つの目標に従属するものになってしまう。
ハルク氏によれば、これは社会にとって危険であり、全体主義的な反応につながるとして、気候緊急事態や気候終末の考え方を否定している。
最近、2022年にノーベル物理学賞を受賞したジョン・クラウザー博士が、1600人以上の科学者や学者が賛同するクリンテルの「WORLD CLIMATE DECLARATION」に署名したということである。
Nobel Prize winner Dr. John F. Clauser signs the Clintel World Climate Declaration
シンクタンク「クリンテル」については、本年5月に杉山大志氏が論文を引用している。
IPCC報告の論点63:過去トレンドと掛け離れた海面上昇予測
クリンテルは、2019年9月23日、国連本部で開催された「気候行動サミット」当日、国連事務総長に対して、500名の科学者やエンジニアによる「気候変動政策に反対する」書簡を提出していた。この宣言は、気候緊急事態の概念を否定しており、その賛同者は、現在、1600名に増えている。
この宣言は6つの骨子から成り立っている。
- Natural as well as anthropogenic factors cause warming
- Warming is far slower than predicted
- Climate policy relies on inadequate models
- Global warming has not increased natural disasters
- Policy must respect scientific and economic realities
- CO2 is not a pollutant. It is essential to all life on Earth. Photosynthesis is a blessing. More CO2 is beneficial for nature, greening the Earth: additional CO2 in the air has promoted growth in global plant biomass. It is also good for agriculture, increasing the yields of crop worldwide.
関連記事
-
政府が「2030年温室効果ガス46%削減」という目標を発表したことで、責任を感じた?小泉環境相が、「2030年までに太陽光発電の規模を2000万kW積み増して、1億800万kW以上にする」という方針を提示した。 太陽光発
-
1. メガソーラーの実態 政府が推進する「再生可能エネルギーの主力電源化」政策に呼応し、全国各地で大規模な太陽光発電所(メガソーラー)事業が展開されている。 しかし、自然の中に敷き詰められた太陽光パネルの枚数や占有面積が
-
ニューヨークタイムズとシエナ大学による世論調査(7月5日から7日に実施)で、「いま米国が直面している最も重要な問題は?」との問いに、気候変動と答えたのは僅か1%だった。 上位は経済(20%)、インフレ(15%)、政治の分
-
以前、尾瀬の自然保護活動に関して「仮想評価法(CVM)」という手法を使ってその価値の計測を試みたことがある。ハイカーが押し寄せて自然が荒廃した1960年代の尾瀬の写真と、保護活動により回復した現在の尾瀬の写真を2つ提示し、尾瀬の美しい自然価値に対して自分が支払ってもいいと考える評価額(支払い意思額)を聞いたものだ。回答のなかには驚くほど高額の回答もあり、平均すると年間で1人1000円超となった。担当者としては、尾瀬の自然に高い価値を感じてくださっていることを嬉しく思うと同時に、その場で自分が支払うわけではない「架空の財布の紐」は緩いのだとも感じた。
-
バイデン政権にとって昨年来のエネルギー価格高騰は頭痛の種であり、ウクライナ戦争は状況を更に悪化させている。 脱炭素をかかげるバイデン政権は国内石油・天然ガス生産の拡大とエネルギー独立をかかげるトランプ政権とは対照的に、発
-
夏の電力不足の対策として、政府が苦しまぎれに打ち出した節電ポイントが迷走し、集中砲火を浴びている。「原発を再稼動したら終わりだ」という批判が多いが、問題はそう簡単ではない。原発を動かしても電力危機は終わらないのだ。 電力
-
日本の原子力規制委員会、その運営を担う原子力規制庁の評判は、原子力関係者の間でよくない。国際的にも、評価はそうであるという。規制の目的は原発の安全な運用である。ところが、一連の行動で安全性が高まったかは分からない。稼動の遅れと混乱が続いている。
-
集中豪雨に続く連日の猛暑で「地球温暖化を止めないと大変だ」という話がマスコミによく出てくるようになった。しかし埼玉県熊谷市で41.1℃を記録した原因は、地球全体の温暖化ではなく、盆地に固有の地形だ。東京が暑い原因も大部分
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間