サンゴに問題は無く、サンゴの科学に問題が有るという指摘
オーストラリア海洋科学研究所が発表した、グレートバリアリーフのサンゴの被覆面積に関する最新の統計は、グレートバリアリーフの滅亡が間近に迫っているという、60年にわたる欠陥だらけの予測に終止符を打つものだ
ピーター・リッド氏が、オーストラリアン誌の取材に応えている。
ここで被覆面積と言っている意味であるが、サンゴ礁といっても全体がサンゴに覆われているわけではなく、砂地や岩の場所もあれば、サンゴが死んでしまっている場所もある。そこで海底全体がどのていどサンゴで覆われているかを観測してサンゴ礁の健全性の指標とする。観測方法については野北教授が分かり易く解説している。
以前に本コラムに書いたとおり、オーストラリアの東海上に連なる世界最大のサンゴ礁であるグレートバリアリーフにおけるサンゴの被覆面積は、「地球温暖化で滅亡する」という予言とは全く異なり、増加を続け、2022年には過去最大になった。
2023年にも調査が行われ、グレートバリアリーフ全体でのサンゴ被覆面積は、記録的な高水準を記録した昨年とほとんど差は無かった(統計的に有意な差は無かった)。
この結果、大型サイクロンに見舞われサンゴ礁の被覆面積が低水準を記録した2012年に比べると、じつに2倍となった。
2022年の記録的な被覆面積は、「サンゴ礁の危機」を煽ってきた科学機関にとって恥ずべきものだった。なぜなら、「サンゴ礁は2016年、2017年、2020年、2022年の4度にわたる前代未聞の高温白化現象によって壊滅的な打撃を受けたばかりだ」、と彼らは宣言していたからだ。
リッド氏は舌鋒鋭く続ける:
今年、オーストラリア海洋科学研究所AIMSは、記録的な2023年のサンゴの被度を「回復の一時停止」と表現することで、良いニュースを悪いニュースにすり替えるという悪しき伝統を受け継いだ。
メディアは悪いニュースが大好きだが、その悪いニュースがサンゴ礁ではなく、サンゴ礁の科学機関に関するものであることに、人々はいつ気づくのだろうか?良いニュースを悪いニュースにすり替えようとする彼らの哀れな試みは、この科学機関の知的破綻の決定的な証拠である。
真実は何かといえば、私たち国民は、何十年もの間、詐欺に遭ってきたということだ。かつては信頼されていた科学機関も、今や信用できない存在となってしまった。そろそろ真剣に精査すべき時だ。
イデオロギー的になっていないか?
集団思考に陥っていないか?
サンゴ礁が破滅するという宣伝文句による、資金調達の必要性に突き動かされていないか?
異論を唱える者をどう扱っているのか、追放しているのか、歓迎しているのか?
明らかに失敗している科学的な品質管理のシステムはどうなっているのか?
なぜ60年間もこのような間違いを犯してきたのか?
明らかに、多くのオーストラリア人がサンゴ礁科学者の信憑性を疑っている。オーストラリア環境財団(Australian Environment Foundation)の世論調査によると、何十年もの間、サンゴ礁の「破滅の科学」がメディアで容赦なく取り上げられたにもかかわらず、サンゴ礁が現在悪い状態にあると考える人はわずか51%に過ぎなかった。
グレートバリアリーフは、私たち国民の科学機関を精査するのに適した場所だ。一部の科学機関が信頼に値しないことを示すこれ以上の例はない。私たちはサンゴ礁科学を監査しなければならない。マスコミが怒ることは避けられないが、それでもサンゴ礁のサンゴの被覆面積が極めて高いという事実を世間に知らしめるためには、科学機関を監査する必要がある。
■
関連記事
-
「気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか」については分厚い本を通読する人は少ないと思うので、多少ネタバラシの感は拭えないが、敢えて内容紹介と論評を試みたい。1回では紹介しきれないので、複数回にわたることをお許
-
古野真 350.org Japan代表 石炭発電プラント(カナダ、Wikipediaより) (GEPR編集部より) 投稿原稿を掲載します。GEPRは、石炭火力の使用増加は環境配慮をすればやむを得ないという立場の意見を紹介
-
さまざまな専門家が実名ブログで発言する、言論プラットフォーム『アゴラ』と、 ニコニコ生放送がコラボしました。その名も『ニコ生アゴラ』。第3弾は「被災地の復興を脅かす、『汚染がれき』と除染」がテーマです。
-
「もんじゅ」以降まったく不透明なまま 2016年12月に原子力に関する関係閣僚会議で、高速原型炉「もんじゅ」の廃止が決定された。それ以来、日本の高速炉開発はきわめて不透明なまま今に至っている。 この関係閣僚会議の決定では
-
はじめに 世界の脱炭素化の動きに呼応して、今、世界中の自動車メーカーが電気自動車(EV)に注力している。EV化の目的は走行中のCO2排出を削減することにあり、ガソリンエンジンなどの内燃機関を蓄電池駆動のモーターに切替えて
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。
-
CO2を多く排出するとして、ここのところ先進国ではバッシングを受けている石炭事業だが、世界には多くの炭鉱開発計画がある。 最近出た環境団体グローバル・エナジー・モニターの報告によると、世界で提案されている新しい炭鉱開発事
-
以前、2021年の3月に世界の気温が劇的に低下したことを書いたが、4月は更に低下した。 データは前回同様、人工衛星からの観測。報告したのは、アラバマ大学ハンツビル校(UAH)のグループ。元NASAで、人工衛星による気温観
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間