「トウモロコシが温暖化で被害」はモデルの中だけの話

feellife/iStock
IPCCの気候モデルによるシミュレーションは、観測値と比較して温暖化を過大評価していることは以前にも何回か述べてきた。過大評価の程度は、地域・期間・高度などによって異なるが、米国の元NOAAのロイ・スペンサーが、特に酷い例を紹介している。
図は、米国海洋気象庁NOAAの公式の気温観測データ(青い棒グラフ)を、IPCCで用いられている36のCMIP6気候モデル(赤い棒グラフ、SSP245排出シナリオに基づくもの、データセットリンク)によるシミュレーション計算の値と比較したものだ。

縦軸は、米国のコーンベルトとよばれるトウモロコシ生産地12州における、トウモロコシ生育期(6月、7月、8月)についての、1973年から2022年までの50年間の地域平均気温の上昇の速さである。
これを見ると、観測値は10年あたり0.1℃程度と僅かであるのに対して、シミュレーションはことごとく極端な温暖化を示している。過去についてこれだけ過大評価するモデルであれば、将来についても相当な過大評価になることは間違いなかろう。
「地球温暖化でトウモロコシが暑さにやられて生産できなくなる」といった将来予測は、このようなシミュレ-ションに基づいたものだ。
ロイ・スペンサーは、農業事業者に対して、このような将来予測を信じるな、とアドバイスしている。
なおこのNOAAの観測値には都市熱の影響が混入していることはほぼ確実なので、過大評価の実態はこれよりも酷いと思われる。
■
関連記事
-
表面的に沈静化に向かいつつある放射能パニック問題。しかし、がれき受け入れ拒否の理由になるなど、今でも社会に悪影響を与えています。この考えはなぜ生まれるのか。社会学者の加藤晃生氏から「なぜ科学は放射能パニックを説得できないのか — 被害者・加害者になった同胞を救うために社会学的調査が必要」を寄稿いただきました。
-
(前回:再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か③) 結局、火力発電を活かすことが最も合理的 再エネの出力制御対策パッケージをもう一度見てみよう。 需要側、供給側、系統側それぞれの対策があるが、多くの項目が電力需給のバラ
-
シナリオプランニングは主に企業の経営戦略検討のための手法で、シェルのシナリオチームが“本家筋”だ。筆者は1991年から95年までここで働き、その後もこのチームとの仕事が続いた。 筆者は気候変動問題には浅学だが、シナリオプ
-
10月22日、第6次エネルギー基本計画が7月に提示された原案がほぼそのままの形で閣議決定された。菅前政権において小泉進次郎前環境大臣、河野太郎前行革大臣の強い介入を受けて策定されたエネルギー基本計画案がそのまま閣議決定さ
-
以前アゴラに寄稿した件を、上田令子議員が東京都議議会で一般質問してくれた(ノーカット動画はこちら)。 上田議員:来年度予算として2000億円もかけて、何トンCO2が減るのか、それで何度気温が下がるのか。なおIPCCによれ
-
福島の原発事故から4年半がたちました。帰還困難区域の解除に伴い、多くの住民の方が今、ご自宅に戻るか戻らないか、という決断を迫られています。「本当に戻って大丈夫なのか」「戻ったら何に気を付ければよいのか」という不安の声もよく聞かれます。
-
以前にも書いたことであるが、科学・技術が大きく進歩した現代社会の中で、特に科学・技術が強く関与する政策に意見を述べることは、簡単でない。その分野の基本的な知識が要るだけでなく、最新の情報を仕入れる「知識のアップデート」も
-
太陽光発電や風力発電のコストに関して我が国ではIEAなどの国際機関の研究報告結果で議論することが多いが、そもそも統計化するタイムラグが大きい事、統計処理の内容が明らかにされないためむしろ実際の入札での価格を見るほうが遥か
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間

















