日本はウイグル弾圧の中国軍から太陽光パネルを買っている(ムカイダイス)
太陽光パネルを買うたびに、日本国民のお金が、ジェノサイドを実行する中国軍の巨大企業「新疆生産建設兵団」に流れている。このことを知って欲しい。そして一刻も早く止めて欲しい。
太陽光パネル、もう一つの知られざる問題点
日本の電力事業に参入する中国企業のメガソーラービジネスの問題点が多く指摘されるようになった。
メガソーラー事業は「FIT制度(固定価格買取り制度)」により売電価格が決まっている為、安定した利益が見込めるので、この結果、日本は毎月巨額の利益を中国に献上している。
また東京都と川崎市は、新築建物への太陽光発電パネルの設置を義務化し、2025年4月に施行する予定だ。これによりさらに多くの中国製太陽光パネルが日本に輸入される、と見込まれる。
中国製の太陽光パネルが「ウイグル強制労働」と結びついて生産されているという指摘は以前からあった。
しかし、その生産を担うのが中国の軍事企業だということをご存じだったであろうか。
太陽光パネルを生産する製造業ネットワークの根幹を担う企業は、新疆生産建設兵団(以下、単に兵団とする)という巨大な軍事(準軍事政府組織とも言われている)企業グループである。
同兵団は、欧米社会から「ウイグルでのジェノサイドを実行し強制収容所を運営している」と批判を浴びて、経済制裁を受けている。
新疆生産建設兵団(XPCC)とは
新疆生産建設兵団(Xinjiang Production and Construction Corps, XPCC)は1954年に設立された「軍政党企」一体の特殊な組織である。設立当時は「中国人民解放軍新疆軍区生産建設兵団」と呼ばれていたが、1981年に鄧小平の「兵団は解放軍の名を表に出さない方が良い」との指示により「新疆生産建設兵団」に変わったという経緯がある。つまり実態としては人民解放軍の軍事組織である。
軍と同様「師団連隊」の構造であり、現在14の師団と185の団を所有する。所属する人員は348万5100人にも及ぶ。ウイグルの各地に配置され、師が市を、団が町や農場を併せ持つ「師市合一・団鎮合一」制度を用いている。
新疆石河子市、新疆アラル市などの多くの市は兵団に所属する市である。ウイグル自治区の管轄を受けない治外法権であり、「国の中の国」と呼ばれている(図)。
設立当初からウイグルへ入植する大量の漢族の受け皿として、また中国共産党中央軍事委員会と並ぶウイグル経済支配の両輪の一つとしての役割を果たして来た。その役割はイギリス東インド会社やオランダ西インド会社にも例えられてきた。
現在の兵団は4500以上の会社を所有し、世界70カ国の82万6000社以上の企業と貿易を結び、ウクライナやケイマン諸島などで土地、アメリカ、日本などで資産を持つ、巨大軍産複合組織である。2021年のGDPは日本円でおよそ7兆円(3395.61億元)に上った。
そしてこの兵団こそが、「中華民族共同体」を造る為として、テュルク系のウイグル人を強制収容所に入れて「中華民族」に改造するという、ウイグル・ジェノサイドの政策の実行役を担ってきた。
経済制裁を受ける新疆生産建設兵団
ウイグルでの人権侵害行為に対して、米国は2019年7月、兵団とその最高幹部の2人に対して制裁を発動し、兵団傘下のいくつかの企業の製品について、米国への輸入を禁止した。
更に、2021年6月24日アメリカ商務省は、兵団に加え、太陽光パネルの原材料であるポリシリコンなどを製造する中国メーカー5社に対して、アメリカ企業と事実上取引できなくなるよう「エンティティ・リスト」に追加したと発表した。エンティティ・リストとは、商務省が輸出管理法に基づいて、国家安全保障や外交政策上の懸念があるとした企業リストだ。
制裁を受けたホシャイン・シリコン・インダストリー(合盛硅業)、新疆ダコ・ニューエナジーなどの製品供給網は、全て、兵団と密接に結びついている。
加えて、2022年、世界の民主主義国の超党派の有志議員が組織する「中国に関する列国議会同盟(IPAC)」の共同議長20人は「兵団が過半数の株式を保有する中国内外の2873社に対する貿易管理」を提案している。
これは、諸国で策定されてきた”現代奴隷制法”の改定の提案の一部としてなされたもので、強固な貿易規制措置をとることで、兵団はもとより、新疆ウイグル自治区で強制労働に責任のある組織により製造された商品について、その輸入を禁止する、というものだ。
ますます高まるウイグル・ジェノサイドへの国際的非難
アメリカや欧米諸国では、中国に対する非難決議やジェノサイド認定に止まらず、経済制裁や様々な法案なども、重ねて採択されている。また国連においても、2022年8月17日「ウイグル強制労働は存在する 人類に対する犯罪」と明記した報告書を発表。8月31日に「重大な人権侵害・性的暴行・ウイグルの文化施設のマザール・やモスクの破壊が行われている」と人権報告書に明記した。
日本でも「ウイグルジェノサイド」の詳細について、東京大学平野聡先生が「2017から2019年にかけ、ウイグルで164万5400人も人口が減少し、マイナス9.9%を記録した」と明らかにした。
日本に留学し東京大学大学院で修士号を取ったミヒライ・アルキンは、一時帰国中、カシュガルの強制収容所で2020年に亡くなった。まだ30歳の若さだった。こうして日本とウイグルの架け橋になる人々も強制収容所の中で消えてしまっている(写真)。
人権弾圧の中国軍に日本国民のお金を流すな
最近読んだ報告によれば、近い将来に世界の太陽光パネルの95%は中国製となり、その半分は新疆ウイグル自治区で生産されるという。
中国製の太陽光パネルを買うことが中国との「友好」だと思う方がいるのかもしれないが、もしそうなら、そのような「友好」は極めて危ういと指摘したい。
真の友好を望むのであれば、一刻も早く、人権弾圧を実行している中国軍に日本国民のお金が流れる仕組みを打ち切るべきだ。
私たちは人として、人間の尊厳を破壊するあらゆる悪に対して共通の価値観で戦えるはず。正しい選択が尊い平和を世界にもたらすと信じている。
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ムカイダイス
ウルムチ出身の在日ウイグル人 大学非常勤講師 上海華東師範大学ロシア語学科卒。神奈川大学歴史民俗資料学研究科博士課程修了。Ismail Gasprinski 賞受賞者。『万葉集』、『百人一首』のウイグル語訳などを手がける。
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