どこまで上がる?日本のエネルギーコスト

Daniele Mezzadri/iStock
世界的なエネルギー価格の暴騰が続いている。特に欧州は大変な状況で、イギリス政府は25兆円、ドイツ政府は28兆円の光熱費高騰対策を打ち出した。
ところで日本の電気代総額は幾らなのか、ある会社の方に聞いてみたら、「知らない」とのこと。そんな筈がないと思ったが、電力市場自由化して以来、企業には分からないそうだ。政府内部には数字はあるらしいが、公表されていないとのこと。「憶測だが」、と前置きした上で、「高騰していることがバレてしまうから、公表したがらないのではないか」との氏の見解。
何てこった。総額も知らずに、補助金やらカーボンプライシングやらの政策を議論するなど、速度メーターも無しに車を運転しているようなものだ。政府においては、毎月エネルギーコストを公表するようにして欲しい。
ところで、政府ではないが、慶応大学産業研究所の野村浩二教授がデータの公表を始めてくれた。

図 日本のエネルギーコストの推移
データは慶応大学産業研究所野村浩二教授による
これを見ると、日本のエネルギーコストは鰻登り中であり、電力コストも例外ではない。2022年8月には、全エネルギーで4.3兆円、うち電力は2.1兆円だった。
日本企業は安定供給を重視して天然ガスや石炭を長期契約で買ってきたし、また電源を多様化してきたために、いまのところ欧州のような酷い価格高騰にはなっていない。このことはじつは電気事業者やガス事業者のファインプレーなのだが、あまり褒めてくれる人がいないのは残念だ。
しかし今後は、長期契約も切れてくるし、小売り料金改定の度に価格高騰の波が押し寄せてくると予想される。
どのような対策が必要か。それを議論するためには、エネルギーコストのリアルタイムな情報把握が欠かせない。
野村教授は、これから毎月末にこのデータを更新する予定と伺っている。要注目である。
■
『キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。

関連記事
-
ドイツで高騰しているのはガスだけではなく、電気もどんどん新記録を更新中だ。 2020年、ドイツの卸電力価格の平均値は、1MW時が30.47ユーロで、前年比で7ユーロも下がっていた。ただ、これは、コロナによる電力需要の急落
-
昨年3月11日以降、福島第一原子力発電所の事故を受け、「リスクコミュニケーション」という言葉を耳にする機会が増えた。
-
頭の悪い地方紙は、いまだに「原発新増設」がエネ基の争点だと思っているようだが、そんな時代はとっくに終わった。 311の原発事故がまるでなかったかのようである。 【原発推進派を集めて「エネルギー基本計画」議論スタート 「関
-
米軍のソレイマニ司令官殺害への報復として、イランがイラク領内の米軍基地を爆撃した。今のところ米軍兵士に死者はなく、アメリカにもイランにもこれ以上のエスカレーションの動きはみられないが、原油価格や株価には大きな影響が出てい
-
新しいエネルギー基本計画が決まり、まもなく閣議決定される。「再生可能エネルギーを主力電源にする」といいながら再エネ22~24%、原子力20~22%という今のエネルギーミックスを維持したことに批判が集まっているが、問題はそ
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 以前、「IPCC報告の論点③:熱すぎるモデル予測はゴミ箱
-
2011年3月11日に東日本大震災が起こり、福島第一原子力発電所の事故が発生した。この事故により、原子炉内の核分裂生成物である放射性物質が大気中に飛散し、広域汚染がおこった。
-
昨年の震災を機に、発電コストに関する議論が喧(かまびす)しい。昨年12月、内閣府エネルギー・環境会議のコスト等検証委員会が、原子力発電の発電原価を見直したことは既に紹介済み(記事)であるが、ここで重要なのは、全ての電源について「発電に伴い発生するコスト」を公平に評価して、同一テーブル上で比較することである。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間