グローバルグリーニングによる地球冷却効果

2022年08月09日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

Petmal/iStock

今回はマニア向け。

世界の葉面積指数(LAI)は過去30年あたりで8%ほど増えた。この主な要因はCO2濃度の上昇によって植物の生育が盛んになったためだ。この現象は「グローバルグリーニング」と呼ばれる。なお葉面積指数とは、土地の単位面積あたりの植物の葉の面積のことである。

これによって雨が植物に蓄えられ、蒸発散する量が増え、地表を冷却した。それによって雲も増えたが、これは地表を温める効果と冷ます効果の両方があった。下記はその模式図である(説明は略):

出典:Piao, S., Wang, X., Park, T., Chen, C., Lian, X., He, Y., Bjerke, J. W., Chen, A., Ciais, P., Tømmervik, H., Nemani, R. R., & Myneni, R. B. (2020). Characteristics, drivers and feedbacks of global greening. Nature Reviews Earth and Environment, 1(1), 14–27.

様々な効果を合計すると、蒸発散による冷却効果が卓越していた。その冷却効果は、地球平均で、10年あたりで0.24W/m2と推計された:

出典:Zeng, Z., Piao, S., Li, L. Z. X., Zhou, L., Ciais, P., Wang, T., Li, Y., Lian, X., Wood, E. F., Friedlingstein, P., Mao, J., Estes, L. D., Myneni, R. B., Peng, S., Shi, X., Seneviratne, S. I., & Wang, Y. (2017). Climate mitigation from vegetation biophysical feedbacks during the past three decades. Nature Climate Change, 7(6), 432–436.

この0.24W/m2というのはとても大きい。例えば40年間で合計すれば約1W/m2にもなる。IPCCによれば1750年以来のCO2の増加の効果が合計2W/m2だから、その半分を相殺することになる:

出典:IPCC AR6 Fig. TS.15

地球温暖化については、このように、まだよく分かっていないことがある。

 

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • はじめに 地球温暖化に高い関心が持たれています。図1はBerkeley Earthのデータで作成したものです。パリ協定は、世界の平均気温上昇を2℃未満に抑え1.5℃を目指す目標ですが、2030年代には1.5℃を超えること
  • 福島の1ミリシーベルトの除染問題について、アゴラ研究所フェローの石井孝明の論考です。出だしを間違えたゆえに、福島の復興はまったく進みません。今になっては難しいものの、その見直しを訴えています。以前書いた原稿を大幅に加筆しました。
  • 「エネルギー資源小国の日本では、国策で開発したナトリウム冷却高速炉の技術を次代に継承して実用化させなければならない。それには高速増殖原型炉『もんじゅ』を運転して、技術力を維持しなければならない。軽水炉の運転で生ずるプルトニウムと劣化ウランを減らすためにも、ナトリウム冷却高速炉の実用化が必要だ」
  • デモクラシーの歴史は長くない。それを古代ギリシャのような特権階級の自治制度と考えれば古くからあるが、普通選挙にもとづく民主政治が世界の主流になったのは20世紀後半であり、それによって正しい意思決定ができる保証もない。特に
  • バラバラになった小石河連合 ちょうど3年前の2021年9月、自民党総裁選の際に、このアゴラに「小泉進次郎氏への公開質問状:小石河連合から四人組へ」という論を起こした。 https://agora-web.jp/archi
  • 著名なエネルギーアナリストで、電力システム改革専門委員会の委員である伊藤敏憲氏の論考です。電力自由化をめぐる議論が広がっています。その中で、ほとんど語られていないのが、電力会社に対する金融のかかわりです。これまで国の保証の下で金融の支援がうながされ、原子力、電力の設備建設が行われてきました。ところが、その優遇措置の行方が電力自由化の議論で、曖昧になっています。
  • アゴラ研究所の運営するエネルギー調査機関の「GEPR」(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
  • 「2020年までに地球温暖化で甚大な悪影響が起きる」とした不吉な予測は多くなされたが、大外れだらけだった。以下、米国でトランプ政権に仕えたスティーブ・ミロイが集めたランキング(平易な解説はこちら。但し、いずれも英文)から

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑