東京都は太陽光発電が人権侵害しないことを規定せよ

2022年08月04日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

blew_i/iStock

新設住宅への太陽光発電設置義務付けを検討中の東京都がQ&Aとして「太陽光発電設置 解体新書」を8月1日に出した。

Q&Aと言っても筆者がこれまで指摘した、一般国民の巨額の負担や、江戸川区等の洪水時の感電による二次災害等については全く触れていない。

他にもツッコミどころは満載だが、今回は、筆者が最も重要と考える人権問題に絞る。

東京都は住宅用であれば国内企業シェアが多い、としているが、国内企業だからといって日本製のパネルとは限らない。中国製のパネルはどの程度あるのか?

それから、メーカーにヒヤリングをしたら新疆ウイグル自治区の製品は使っていないとのことだったそうだ。人権問題に関する調査をしたことは評価したい。何しろ、これまで国が見て見ぬふりをしてきた点だからだ:

だが、いったいどうやって証明するのか? 中国から輸入する際に、シリコンの採掘・精錬、パネル製造、モジュール製造の全ての工程に渡って新疆ウイグルの工場を使っていない証明を輸出者にさせたのだろうか? そもそも中国政府が人権問題自体を否定している中、そのような証明は可能なのか? 新疆ウイグル自治区のシェアは、いま世界の40%もある。

なお、国際エネルギー機関(IEA)の最新の報告によれば、これから太陽光発電における中国産のシェアは更に上がり、世界の95%に達する見込みだという

このような中で太陽光発電を義務化するということは、事実上、中国製品の使用の義務化になりはしないのか?

東京都は、太陽光発電を義務化するよりも、むしろ、東京都民が人権侵害に加担しないようにするために、「設置事業者は、製品が人権侵害に加担していないことを証明すること」を規定すべきだ。

ただしそうすると、太陽光発電の経済性は現状よりも更に悪化して、ますます正当化できなくなる。

やはりこの義務化は止めるべきだ。

 

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 4月の半ばにウエッジ社のウエブマガジン、Wedge Infinityに「新聞社の世論調査の不思議さ 原子力の再稼働肯定は既に多数派」とのタイトルで、私の研究室が静岡県の中部電力浜岡原子力発電所の近隣4市で行った原子力発電に関するアンケート調査と朝日新聞の世論調査の結果を取り上げた。
  • 「気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか」については分厚い本を通読する人は少ないと思うので、多少ネタバラシの感は拭えないが、敢えて内容紹介と論評を試みたい。1回では紹介しきれないので、複数回にわたることをお許
  • 藤原かずえ 1月14日の「豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議」において、環境基準を超過する多数の汚染物質の濃度計測値が公表されました。この日の会議資料が公開されたのちに詳細に検討してみたいと思いますが、まず
  • 電気自動車(EV)には陰に陽に様々な補助金が付けられている。それを合計すると幾らになるか。米国で試算が公表されたので紹介しよう(論文、解説記事) 2021年に販売されたEVを10年使うと、その間に支給される実質的な補助金
  • 日本の温室効果ガス排出量が増加している。環境省が4月14日に発表した確報値では、2013 年度の我が国の温室効果ガスの総排出量は、14 億 800 万トン(CO2換算)となり、前年度比+1.2%、2005年度比+0.8%、1990年度比では+10.8%となる。1990年度以降で最多だった2007年度(14億1200万トン)に次ぐ、過去2番目の排出量とあって報道機関の多くがこのニュースを報じた。しかし問題の本質に正面から向き合う記事は殆ど見られない。
  • 日本に先行して無謀な脱炭素目標に邁進する英国政府。「2050年にCO2を実質ゼロにする」という脱炭素(英語ではNet Zeroと言われる)の目標を掲げている。 加えて、2035年の目標は1990年比で78%のCO2削減だ
  • 「気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか」については分厚い本を通読する人は少ないと思うので、多少ネタバラシの感は拭えないが、敢えて内容紹介と論評を試みたい。1回では紹介しきれないので、複数回にわたることをお許
  • 大阪のビジネス街である中之島で、隣接する2棟のビルの対比が話題という。関西電力本社ビルと朝日新聞グループの運営する中之島フェスティバルタワーだ。関電ビルでは電力危機が続くためにその使用を減らし、夏は冷暖、冬は暖房が効かない。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑