環境危機を警告する人達が見過ごしていること:『地球温暖化で人類は絶滅しない』

HowardPerry/iStock
最近出たお勧めの本です。
著者のマイケル・シェレンバーガーは初めは環境運動家だったが、やがてその欺瞞に気づき、いまでは最も環境に優しいエネルギーとして原子力を熱心に推進している。
地球温暖化に関しては小生とほぼ意見は同じだ。CO2は増えていて気温は緩やかに上昇した。だが経済成長のお陰で自然災害による被害は激減した。気候危機というほどの兆候などない。急進的な温暖化対策の悪影響の方がよほど大きい。再生可能エネルギーはコストが高く、不安定で、広い面積を使うなど環境にも優しいとはいえない。
さらにこの本の面白いところは、シェレンバーガー自身がコンゴやブラジルに行き、貧しい人々と共に暮らしたことだ。そこで、先進国の環境運動の押し付けによって、いかに経済開発の芽が奪われ、また環境がかえって悪化しているかを体験に基づいて書いている。
コンゴでは、水力発電の建設が阻止され、エネルギー不足の中、人々の薪炭利用が続いた。炭が焼かれ、都市に出荷される。これによってゴリラの生息域が失われ、時に人々とトラブルを起こして射殺される。ブラジルでは、セラードと呼ばれる生産性の高い土地での大豆生産が制限され森林保全を強要される。この代わりに生産性の低いアマゾンの森林地帯が開墾されて、かえって森林が多く失われる。
シェレンバーガーは技術進歩が環境保全に果たした役割を強調している。プラスチックによって象牙、亀の甲羅、クジラのヒゲなどの天然起源の材料が代替されたことは動物保護のために決定的に重要だった。人工的だから環境に悪いなどという思い込みは間違っている。
経済成長によって繁栄し、技術進歩の恩恵を受けることで、災害にも強く、また環境とも調和して生きて行けるようになる。これから豊かになりたいという貧しい人々を否定するような環境運動ではなく、「環境ヒューマニズム」が必要だと著者は説く。
■
■

関連記事
-
最近、私の周辺で「国連の幹部の発言」が話題となりました。 NEW – UN Secretary for Global Comms says they "own the science" o
-
最大の争点 EUタクソノミーの最大の争点は、原子力発電を善とするか悪とするかの判定にある。 善すなわちグリーンと認定されれば、ESG投資を呼び込むことが可能になる。悪となれば民間投資は原子力には向かわない。その最終判定に
-
2023年1月20日、世界経済フォーラム(World Economic Forum。以下、WEF)による2023年の年次総会(通称「ダボス会議」)が閉幕した。「世界のリーダー」を自認する層がどのような未来を描こうとしてい
-
本年1月17日、ドイツ西部での炭鉱拡張工事に対する環境活動家の抗議行動にスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリが参加し、警察に一時身柄を拘束されたということがニュースになった。 ロシアからの天然ガスに大きく依存して
-
福島の「処理水」の問題は「決められない日本」を象徴する病理現象である。福島第一原発にある100万トンの水のほとんどは飲料水の水質基準を満たすので、そのまま流してもかまわない。トリチウムは技術的に除去できないので、薄めて流
-
世界的に化石燃料の値上がりで、原子力の見直しが始まっている。米ミシガン州では、いったん廃炉が決まった原子炉を再稼動させることが決まった。 米国 閉鎖済み原子炉を再稼働方針https://t.co/LILraoNBVB 米
-
12月22日に開催された政府の地球温暖化対策推進本部の会合で、本部長を務める安倍晋三首相が来春までの温対計画策定を指示しました。環境省の中央環境審議会と、経済産業省の産業構造審議会の合同会合で議論が始まっています。
-
英独仏を含む欧州7か国が、海外における化石燃料事業への公的支援を段階的に停止する、と宣言した。 だが、もちろんアフリカには経済開発が必要であり、化石燃料はそのために必須だ。このままでは、先進国の偽善によって、貧困からの脱
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間