日本が圧倒的に世界1位のSDGsランキング
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/iStock-1324140796-660x440.jpg)
Yuuki Mizoguchi/iStock
日本のSDGs(持続可能な開発目標)の進み具合は、世界19位にランクダウン――。国連と連携する国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」は2日、世界各国のSDGsの達成状況をまとめた報告書を発表した。日本は年々、少しずつ順位を下げている。
報告書は「持続可能な開発リポート 2022」。データのある163カ国のSDGs達成度を比べた国別ランキングでは、フィンランドが2年連続で1位だった。トップ3は北欧諸国で、上位18位までは旧東欧の国を含む欧州勢が占めた。
この手のSDGsランキングを受けて「日本はSDGs後進国!」「SDGsの認知度が低い!」「ジェンダーフリーが進んでいない!」「石炭火力発電を廃止せよ!」などと訴える言説が後を絶ちません。記事の見出しも煽っているように見えます。しかしながら、こうしたランキングは評価基準によっていくらでも結果が変わるものです。
そこで、世界中の誰もが検証可能で、日本が圧倒的に世界1位であるSDGsランキングをご紹介します。Googleトレンドで、「SDGs」の検索結果を調べる方法です。図1は、キーワードを「SDGs」、対象を「すべての国」、期間を「過去5年間」で検索した結果です。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/7b805964d2cfc6dedb0ef8958cd7b629-660x532.png)
図1 Googleトレンド検索結果「キーワード:SDGs、対象:すべての国、期間:過去5年間」
「人気度の動向」の折れ線グラフは、検索数が最も多い週を100とした相対値を示しています。2017年6月からの5年間では、「SDGs」の検索が全世界で右肩上がりに上昇していることが分かります。また対象の国や地域を指定することが可能ですが、ここでは「すべての国」を選択しており、「地域別のインタレスト」として国別のランキングが表示されます。こちらは検索数が多い国を100とした国別の順位となります。
図1より、過去5年間で最も「SDGs」というキーワードを検索した国は日本です。しかも、2位ジンバブエの3倍以上となっています。ちなみに、折れ線グラフが急降下している底の部分は日本の正月、ゴールデンウィーク、お盆などにあたります。おそらく日本の企業人や学生が平日に検索しているのではないかと想像することができます。1位という結果だけでなく日本の影響の大きさが伺えます。
さらに、Googleトレンドでは対象期間を指定することができます。試しに、一年ずつ遡って各期間における国別の順位を確認してみます。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/e37250952b6da2ebc69bf062caa34206-660x544.png)
図2 Googleトレンド検索結果「SDGs、すべての国、2021/06/04~2022/06/04」
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/461c2e4dbb92a3df9feb9bf8fbdae6d6-660x548.png)
図3 Googleトレンド検索結果「SDGs、すべての国、2020/06/04~2021/06/04」
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/908cd327965fa5b731d4fd2409c52a84-660x545.png)
図4 Googleトレンド検索結果「SDGs、すべての国、2019/06/04~2020/06/04」
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/66b4a28b80f1bb26f14e57db4dcf7cbc-660x548.png)
図5 Googleトレンド検索結果「SDGs、すべての国、2018/06/04~2019/06/04」
図2~図4の通り、2019年6月以降を1年ごとに区切ってみるとすべて日本が1位でした。また図5より、2018年6月~2019年6月の1年間では日本が2位でした。さらに一年遡ります。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/f74c09e12f32f8ee635569f5e6c46f52-660x550.png)
図6 Googleトレンド検索結果「SDGs、すべての国、2017/06/04~2018/06/04」
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/bec21025e2d89e961f15b2c1d5cd5f24-660x548.png)
図7 Googleトレンド検索結果「SDGs、すべての国、2017/06/04~2018/06/04」
図6および図7より、2017年6月~2018年6月の一年間では日本が8位でした。ここまでのGoogleトレンドの結果を整理すると、2017年頃から日本で「SDGs」の検索数が増えはじめ、2018年に世界2位、2019年に僅差で世界1位となり、2020年以降は圧倒的な検索量で世界一を継続している、ということになります。
では、再び図1に戻ります。過去5年間の検索上位国を見てみると、1位日本、2位ジンバブエ、3位ウガンダ、4位インドネシア、5位ガーナとなっています。6位以下は図8の通りです。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/d458e5f4bbd8a305794fd3adfe9bb3b8-660x545.png)
図8 Googleトレンド検索結果「SDGs、すべての国、過去5年間」
8位に台湾、9位に韓国が出てきますが、いずれも検索数の比率では日本の1/10以下となっています。ページを送るとさらに下位の国・地域を見られますが、先進国はほとんど出てきません。Googleで「SDGs」を検索する国の上位は途上国ばかりです。国別の人口に比例しているとも言えず、途上国が多い理由は不明です。
Googleトレンドは広告や製品開発などのマーケティングでもよく利用されます。世界中、特に欧米先進国でSDGsが流行っていて日本は遅れているはずなのに、この結果をどう解釈すればよいのでしょうか。ひょっとしたら他国では「SDGs」ではなく別の表現で検索しているのかもしれないので、いくつかの検索キーワードで同様の調査を行ってみました。ところが、結果は似たような傾向ばかりでした。一例として、図9に「Sustainable Development Goals」の結果を示します。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/fcc35d42da9fc0d4ff9cbb7f929794af-660x537.png)
図9 Googleトレンド検索結果「Sustainable Development Goals、すべての国、過去5年間」
地域別のインタレストは1位マラウイ、2位シエラレオネ、3位ボツワナでした。日本を探すと62位、先進国で上位は35位オーストラリア、36位ノルウェー、40位イギリスあたりです。また、図9の「人気度の動向」の折れ線グラフは過去5年間横ばいに見えます。日本の影響がなくなると全体の検索量が増えないようです。
ここで、「SDGs」と「Sustainable Development Goals」を比較してみました(図10)。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/585c429a5480c9aac4b67091299e2165-660x331.png)
図10 Googleトレンド検索結果「Sustainable Development GoalsとSDGsの比較、すべての国、過去5年間」
検索の絶対数は分かりませんが、近年は「SDGs」が5倍から8倍ほどになっています。前述の通り「SDGs」の検索量は日本が突出しているのでSDGsのグラフ(赤)から日本の影響を排除することができれば世界での流行が分かりそうです。さらに、各国の一人当たりでも比較したいところですが、今回はここまでにします。北欧諸国は人口が少ない、という反論があるかもしれませんが、評価基準についてはどのランキングにも言えることなので天に唾するようなものです。
「『SDGs』の検索が世界一の日本はすごい!」と言いたいのではありません。企業のCSR・サステナビリティ部門の担当者や学校の先生といった真面目な人ほど、「日本はSDGs後進国!」と唱える言説に流されてしまうことを筆者は危惧しています。
Googleでの「SDGs」の検索数でみれば日本は世界一で、ランキングとしては大半を途上国が占め、国連関連の報告書では常に上位となる先進国の検索数は極めて少ない、というのも一面の事実です。
■
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
6月24日、東京都の太陽光パネルの新築住宅への義務付け条例案に対するパブリックコメントが締め切られた。 CO2最大排出国、中国の動向 パリ協定は、「産業革命時からの気温上昇を1.5℃以内に抑える」ことを目標としており、C
-
2015年のノーベル文学賞をベラルーシの作家、シュベトラーナ・アレクシエービッチ氏が受賞した。彼女の作品は大変重厚で素晴らしいものだ。しかし、その代表作の『チェルノブイリの祈り-未来の物語』(岩波書店)は問題もはらむ。文学と政治の対立を、このエッセイで考えたい。
-
1992年にブラジルのリオデジャネイロで行われた「国連環境開発会議(地球サミット)」は世界各国の首脳が集まり、「環境と開発に関するリオ宣言」を採択。今回の「リオ+20」は、その20周年を期に、フォローアップを目的として国連が実施したもの。
-
海洋放出を前面に押す小委員会報告と政府の苦悩 原発事故から9年目を迎える。廃炉事業の安全・円滑な遂行の大きな妨害要因である処理水問題の早期解決の重要性は、国際原子力機関(IAEA)の現地調査団などにより早くから指摘されて
-
東京大学大学院情報学環准教授/東日本大震災・原子力災害伝承館上級研究員 開沼 博 3.11以来、処分方針が定まらず棚上げされてきたいわゆる「処理水」(東京電力福島第一原子力発電所で発生した汚染水を多核種除去設備等で処理し
-
エネルギー政策について、原発事故以来、「原発を続ける、やめる」という単純な話が、政治家、民間の議論で語られる。しかし発電の一手段である原発の是非は、膨大にあるエネルギーの論点の一つにすぎない。
-
米国では温暖化対策に熱心なバイデン政権が誕生し、早速4月22日に気候サミットを主催することになった。これに前後してバイデン政権は野心的なCO2削減目標を発表すると憶測されている。オバマ政権がパリ協定合意時に提出した数値目
-
世界的に化石燃料の値上がりで、原子力の見直しが始まっている。米ミシガン州では、いったん廃炉が決まった原子炉を再稼動させることが決まった。 米国 閉鎖済み原子炉を再稼働方針https://t.co/LILraoNBVB 米
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間