「気候変動で飢えたシロクマ」は誤報で訂正済み

Alexey_Seafarer/iStock
今回も前回に続いて英国シンクタンクの動画から。
大手の環境雑誌ナショナル・ジオグラフィックが、飢えてやせ細った、ショッキングなシロクマの映像を見せて、気候変動の影響だ、気候緊急事態だ、とした。この映像は25億回も再生され、また新聞・雑誌でも多く取り上げられた。
だが動物学者のスーザン・クロックフォードは、シロクマがケガをしたりガンになったりして餓死するのはよくあることで、この一頭だけで気候変動のせいにするのは間違いだ、と指摘した。
本当に気候変動のせいならば、他にも瘦せ細っているシロクマが居そうなものだが、別にそんなことは報告されていないからだ。
さすがにナショナル・ジオグラフィックも誤りを認め、訂正記事を出した。
要するに、このシロクマが瘦せているのは気候変動のせいだという因果関係については、言い過ぎ(went too far)でした、ということだ。
なのだが、その後が言い訳がましくて、「気候変動になるとこのようなことが起こると言いたかった」のだそうだ。
ちなみに、この訂正記事の後半には、「海氷が無くなるとシロクマが死ぬことについては科学が確立している」と書いてあるが、これも嘘であることも、スーザン・クロックフォードの著書”Fallen Icon(堕ちた偶像)” の8章に詳しく書いてあり、動画でも説明してある。そのようなシミュレーションはあったが、過去数年の海氷の減少期に、シロクマはまったく減らなかったのだ。
前回のセイウチといい、今回のシロクマといい、とにかく動物の悲惨な映像を見せて、全然因果関係の無い気候変動のせいにするという方法は、科学を無視して気候危機という感情を煽る「悲劇ポルノ(tragedy porn)」だ、とクロックフォードは糾弾している。
グレタ・ツゥーンベリも、アッテンボローに影響されてショックを受け、環境運動に目覚めたと言っている。つくづく、罪作りな所業である。
■

関連記事
-
NHKで流れた福島原発事故の映像、ここに使用済核燃料が保管され一時的にその溶融の危険が指摘された。
-
ドナルド・トランプ氏が主流メディアの事前予想を大きく覆し、激戦区の7州を制覇、312対226で圧勝した。この勝利によって、トランプ氏は、「グリーン・ニュー・スカム(詐欺)」と名付けたバイデン大統領の気候政策を見直し、税制
-
福島第一原子力発電所の重大事故を契機に、原発の安全性への信頼は大きくゆらぎ、国内はおろか全世界に原発への不安が拡大しました。津波によって電源が失われ、原子炉の制御ができなくなったこと、そしてこれを国や事業者が前もって適切に対策をとっていなかったこと、そのため今後も同様の事故が発生するのではないかとの不安が広がったことが大きな原因です。
-
「トンデモ本」というのを、ご存じだろうか。著者の思い込み、無知などによる、とんでもない話を書いた本の呼び方だ。「日本トンデモ本大賞」というものもあり、20年前の第1回は、「ノストラダムス本」が受賞している。当時、かなりの人が1999年7月に人類は滅亡するという、このトンデモないこじつけの予言を信じていた。2011年は大川隆法氏の『宇宙人との対話』が選定されている。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 アフリカのサヘル地域では1980年代に旱魃が起きて大きな
-
米ニューヨーク・タイムズ、および独ARD(公営第1テレビ)などで、3月7日、ノルドストリームの破壊は親ウクライナ派の犯行であると示唆する報道があった。ロシアとドイツを直結するバルト海のガスパイプラインは、「ノルドストリー
-
去る4月16日に日本経済団体連合会、いわゆる経団連から「日本を支える電力システムを再構築する」と題する提言が発表された。 本稿では同提言の内容を簡単に紹介しつつ、「再エネ業界としてこの提言をどう受け止めるべきか」というこ
-
9月29日の自民党総裁選に向け、岸田文雄氏、高市早苗氏、河野太郎氏、野田聖子氏(立候補順)が出そろった。 主要メディアの報道では河野太郎氏がリードしているとされているが、長らくエネルギー温暖化政策に関与してきた身からすれ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間