脱炭素のためなら子供たちが強制労働に加担してもよいのか

Jerzy Niezabitowski/iStock
横浜市が市内の小中学校500校のうち65校の屋根にPPAで太陽光発電設備を設置するという報道を見ました。記事からは分かりませんが、この太陽光パネルの製造国はどこなのでしょう。
太陽光発電、初期費用なしPPAが設置促す 補助も充実(2022年4月13日付日本経済新聞)
PPAは初期投資が不要であることに加えて、多くの場合発電した電気の価格が従来の電気料金よりも安く設定されます。従来の電気料金よりも単価が高いのであれば、設備投資で太陽光パネルを買い取って発電した分の電気をゼロ円で利用した方が電気料金の削減につながるためです。従って、発電効率が同等であればPPA事業者は設備費と電気代を抑えるために安価な中国製のパネルを設置すると思われます。
SDGsを学んでいる小学生に対して、自治体や学校はこの太陽光パネルが中国製の場合強制労働によってつくられた可能性があって、そのパネルから発電された電気を利用して照明やパソコンを使うことになると説明ができるのでしょうか。
また、高学年であればインターネットで先進国が新疆ウイグル自治区由来の太陽光パネル、農作物、衣料品の使用禁止を進めていることを知る可能性が十分にありますが、校舎の屋根の太陽光パネルについて質問されたらどう答えるのでしょうか。筆者はとても説明できる自信がありません。強制労働の疑いがある太陽光パネルを利用するのは誰一人取り残さない社会をめざすSDGsとは真逆の行為になってしまいます。
脱炭素のためなら子供たちが強制労働に加担してもよいのでしょうか。将来、この子たちがこうした背景を知った場合にどのように感じるのか、とても心配です。
■

関連記事
-
この3月に米国エネルギー省(DOE)のエネルギー情報局(EIA)が米国のエネルギー予測「Annual Energy Outlook」(AEO)を発表した(AEOホームページ、解説記事)。 この予測で最も重視されるのは、現
-
ソーラーシェアリングとはなにか 2月末に出演した「朝まで生テレビ」で、菅直人元総理が、これから日本の選ぶべき電源構成は、原発はゼロ、太陽光や風力の再生可能エネルギーが主役になる———しかも、太陽光は営農型に大きな可能性が
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
東京大学公共政策大学院教授の関啓一郎氏に、「電力・通信融合:E&Cの時代へ — 通信は電力市場へ、電力は通信融合に攻め込めもう!」というコラムを寄稿いただきました。関教授は、総務官僚として日本の情報通信の自由化や政策作成にかかわったあとに、学会に転身しました。
-
マンハッタン研究所のマーク・ミルズが「すべての人に電気自動車を? 不可能な夢」というタイトル(原題:Electric Vehicles for Everyone? The Impossible Dream)を発表した。い
-
おなじみ国連のグテーレス事務総長が「もはや地球温暖化(global warming)ではなく地球沸騰(global boiling)だとのたまっている。 “地球沸騰”の時代!?観測史上最高気温の7
-
2025年7月2日NHKニュースによると、柏崎市の桜井市長は、柏崎刈羽原子力発電所の7号機の早期の再稼働が難しくなったことを受け、再稼働の条件としている1~5号機の廃炉の方針について、改めて東京電力と協議して小早川社長に
-
先日、「ESG投資がインデックス投資よりもCO2を排出?」という記事を書きました。Investment Metrics社のレポートで「欧州の気候変動ファンドがMSCIワールド・インデックスよりも炭素排出量への影響が大きい
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間