IPCC報告の論点㊼:縄文時代には氷河が後退していた

SeppFriedhuber/iStock
以前、海氷について書いたが、今回は陸上の氷河について。
6000年前ごろは、現代よりもずっと氷河が後退して小さくなっていた(論文、紹介記事)。
氷河は山を侵食し堆積物を残すのでそれを調査した研究を紹介する。対象地点は下図の●。
下図が分析の結果。
折れ線(左軸)は、現在よりも氷河(正確には氷河および氷冠、Glaciers and Ice Caps, GICs)が小さかった割合。6000年前ごろ(図の中央付近で6ka。kaは千年の意味)はほとんどの氷河が現在より小さかったことが分かる。
氷河が小さかった理由は、気温がやや高かったこともあるが、太陽と地球の配置の関係で夏の日射量が多かったことが効いているという。
このころの夏季の北極圏の日射エネルギーはいまよりも1割も多かった。地球温暖化の効果はせいぜい日射エネルギーにして1%の程度だから、桁違いだった訳だ(下図)。
シロクマなど、いまの北極圏の生態系は、このような自然変動を潜り抜けてきた。したたかなものだけが生き残ってきた。
ちなみに6000年前ごろというと日本では縄文海進期と言われ温暖だったころだ。また改めて書くが、このころはシベリアや日本海も暖かったらしい。
■
IPCCの報告が2021年8月に出た。1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。
【関連記事】
・IPCC報告の論点①:不吉な被害予測はゴミ箱行きに
・IPCC報告の論点②:太陽活動の変化は無視できない
・IPCC報告の論点③:熱すぎるモデル予測はゴミ箱行きに
・IPCC報告の論点④:海はモデル計算以上にCO2を吸収する
・IPCC報告の論点⑤:山火事で昔は寒かったのではないか
・IPCC報告の論点⑥:温暖化で大雨は激甚化していない
・IPCC報告の論点⑦:大雨は過去の再現も出来ていない
・IPCC報告の論点⑧:大雨の増減は場所によりけり
・IPCC報告の論点⑨:公害対策で日射が増えて雨も増えた
・IPCC報告の論点⑩:猛暑増大以上に酷寒減少という朗報
・IPCC報告の論点⑪:モデルは北極も南極も熱すぎる
・IPCC報告の論点⑫:モデルは大気の気温が熱すぎる
・IPCC報告の論点⑬:モデルはアフリカの旱魃を再現できない
・IPCC報告の論点⑭:モデルはエルニーニョが長すぎる
・IPCC報告の論点⑮:100年規模の気候変動を再現できない
・IPCC報告の論点⑯:京都の桜が早く咲く理由は何か
・IPCC報告の論点⑰:脱炭素で海面上昇はあまり減らない
・IPCC報告の論点⑱:気温は本当に上がるのだろうか
・IPCC報告の論点⑲:僅かに気温が上がって問題があるか?
・IPCC報告の論点⑳:人類は滅びず温暖化で寿命が伸びた
・IPCC報告の論点㉑:書きぶりは怖ろしげだが実態は違う
・IPCC報告の論点㉒:ハリケーンが温暖化で激甚化はウソ
・IPCC報告の論点㉓: ホッケースティックはやはり嘘だ
・IPCC報告の論点㉔:地域の気候は大きく変化してきた
・IPCC報告の論点㉕:日本の気候は大きく変化してきた
・IPCC報告の論点㉖:CO2だけで気温が決まっていた筈が無い
・IPCC報告の論点㉗:温暖化は海洋の振動で起きているのか
・IPCC報告の論点㉘:やはりモデル予測は熱すぎた
・IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあったのか
・IPCC報告の論点㉚:脱炭素で本当にCO2は一定になるのか
・IPCC報告の論点㉛:太陽活動変化が地球の気温に影響した
・IPCC報告の論点㉜:都市熱を取除くと地球温暖化は半分になる
・IPCC報告の論点㉝:CO2に温室効果があるのは本当です
・IPCC報告の論点㉞:海氷は本当に減っているのか
・IPCC報告の論点㉟:欧州の旱魃は自然変動の範囲内
・IPCC報告の論点㊱:自然吸収が増えてCO2濃度は上がらない
・IPCC報告の論点㊲:これは酷い。海面の自然変動を隠蔽
・IPCC報告の論点㊳:ハリケーンと台風は逆・激甚化
・IPCC報告の論点㊴:大雨はむしろ減っているのではないか
・IPCC報告の論点㊵:温暖化した地球の風景も悪くない
・IPCC報告の論点㊶:CO2濃度は昔はもっと高かった
・IPCC報告の論点㊷:メタンによる温暖化はもう飽和状態
・IPCC報告の論点㊸:CO2ゼロは不要。半減で温暖化は止まる
・IPCC報告の論点㊹:アメダスで温暖化影響など分からない
・IPCC報告の論点㊺:温暖化予測の捏造方法の解説
・IPCC報告の論点㊻:日本の大雨は増えているか検定
■

関連記事
-
今年7月から実施される「再生可能エネルギー全量買取制度」で、経済産業省の「調達価格等算定委員会」は太陽光発電の買取価格を「1キロワット(kw)時あたり42円」という案を出し、6月1日までパブコメが募集される。これは、最近悪名高くなった電力会社の「総括原価方式」と同様、太陽光の電力事業会社の利ザヤを保証する制度である。この買取価格が適正であれば問題ないが、そうとは言えない状況が世界の太陽電池市場で起きている。
-
まもなく3・11から10年になる。本書は当時、民主党政権の環境相として福島第一原発事故に対応した細野豪志氏の総括である。当時の政権の誤りを反省し、今も続くその悪影響を考えている。 本人ツイッターより あの事故が民主党政権
-
「複合災害の記憶と教訓を将来に引き継ぐ」 こう銘打たれ、2020年9月20日に「東日本大震災・原子力災害伝承館」が福島県双葉郡双葉町にオープンした。 原子力災害と復興の記録や教訓の「未来への継承・世界との共有」 福島にし
-
(前回:COP29の結果と課題①) 新資金目標に対する途上国の強い不満 ここでは2035年において「少なくとも1.3兆ドル」(パラグラフ7)と「少なくとも3000億ドル」(パラグラフ8)という2つの金額が示されている。
-
東北電力についでBWR2例目の原発再稼動 2024年12月23日、中国電力の唯一の原子力発電所である島根原子力発電所2号機(82万kW)が発電を再開しました(再稼働)。その後、2025年1月10日に営業運転を開始しました
-
新設住宅への太陽光発電設置義務付けを検討中の東京都がQ&Aとして「太陽光発電設置 解体新書」を8月1日に出した。 Q&Aと言っても筆者がこれまで指摘した、一般国民の巨額の負担や、江戸川区等の洪水時の感電による二次
-
眞鍋叔郎氏がノーベル物理学賞を受賞した。祝賀ムードの中、すでに様々な意見が出ているが、あまり知られていないものを紹介しよう。 今回のノーベル物理学賞を猛烈に批判しているのはチェコ人の素粒子物理学者ルボシュ・モトルである。
-
2018年4月全般にわたって、種子島では太陽光発電および風力発電の出力抑制が実施された。今回の自然変動電源の出力抑制は、離島という閉ざされた環境で、自然変動電源の規模に対して調整力が乏しいゆえに実施されたものであるが、本
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間