IPCC報告の論点㊵:温暖化した地球の風景も悪くない

ThomasVogel/iStock
2021年8月に出たIPCCの報告の要約に下図がある。過去の地球の平均気温と大気中のCO2濃度を比較したものだ。これを見ると、CO2濃度の高い時期(Early Eocene)に、気温が大変に高くなっているように見える。

図1
だが気温はCO2濃度だけで決まる訳では無い(この図の説明もよく読むとそう書いてある)。
地球の歴史を俯瞰してみよう (Scotese 2021)。
図2の黒実線は過去5億年にわたる地球の平均気温の推計である。3億年前(図中の300)ごろに地球は寒く、その後暑くなったが、3000万年前ぐらいから寒くなり、近頃(といっても過去300万年ぐらい)に急激に気温が下がっていまは14.5℃ぐらいになっている。

図2 地球の気温
この3億年規模の気温の大きな変動は、大陸の移動によるものだ。
今の(といっても4000万年前ごろからの)地球は、南極には大陸があり、北極の周りには陸地が集中している。このため、両極とも氷床(万年氷のこと)が発達しやすい。
とくに3300万年前頃には、南極大陸と南米大陸が分かれて、南極を周回する海流が出来て、南極の気温が低下し、氷床が発達、南極は世界の冷凍機のようになった。
さて人類がCO2を出すと、地球の風景はどうなるか。図2には、(Scotese 2021)の試算が書いてある。図中に赤でLimits of PAWとあるのは、いまの人為的な温暖化(Present Anthoropogenic Warming)の限界ということ。前提として、気候感度を1.5℃から4.5℃の間、CO2濃度は777ppmまで上昇するとしている。
図2から分かるが、わりと近い過去に、地球はかつてこの気温範囲にあった。1490万年前と3100万年前だ。そのころの大陸の配置は、いまとほぼ同じだった(図3)。

図3
グリーンランドからは氷床は消えている(夏季には雪はもちろん降る)。だが、南極には大陸がある。このような大陸の配置である限り、地球はそれほど暑くはならない。
このときの風景はどうだったか。
「陸生哺乳類が繁栄し、多様化し、大陸に広がっていた。クジラや巨大なサメが海を支配していた。植物も多様化した。草原やサバンナには草が生い茂り、熱帯にも温帯林にも多様な生物が生息していた。世界は住みやすい場所だった。」
悪くないではないか。
もちろん、もし地球温暖化が急激すぎるならば、それに適応するのは大変かもしれない。だがいまのところ、気候危機なるものの兆しはない。
■
【関連記事】
・IPCC報告の論点①:不吉な被害予測はゴミ箱行きに
・IPCC報告の論点②:太陽活動の変化は無視できない
・IPCC報告の論点③:熱すぎるモデル予測はゴミ箱行きに
・IPCC報告の論点④:海はモデル計算以上にCO2を吸収する
・IPCC報告の論点⑤:山火事で昔は寒かったのではないか
・IPCC報告の論点⑥:温暖化で大雨は激甚化していない
・IPCC報告の論点⑦:大雨は過去の再現も出来ていない
・IPCC報告の論点⑧:大雨の増減は場所によりけり
・IPCC報告の論点⑨:公害対策で日射が増えて雨も増えた
・IPCC報告の論点⑩:猛暑増大以上に酷寒減少という朗報
・IPCC報告の論点⑪:モデルは北極も南極も熱すぎる
・IPCC報告の論点⑫:モデルは大気の気温が熱すぎる
・IPCC報告の論点⑬:モデルはアフリカの旱魃を再現できない
・IPCC報告の論点⑭:モデルはエルニーニョが長すぎる
・IPCC報告の論点⑮:100年規模の気候変動を再現できない
・IPCC報告の論点⑯:京都の桜が早く咲く理由は何か
・IPCC報告の論点⑰:脱炭素で海面上昇はあまり減らない
・IPCC報告の論点⑱:気温は本当に上がるのだろうか
・IPCC報告の論点⑲:僅かに気温が上がって問題があるか?
・IPCC報告の論点⑳:人類は滅びず温暖化で寿命が伸びた
・IPCC報告の論点㉑:書きぶりは怖ろしげだが実態は違う
・IPCC報告の論点㉒:ハリケーンが温暖化で激甚化はウソ
・IPCC報告の論点㉓: ホッケースティックはやはり嘘だ
・IPCC報告の論点㉔:地域の気候は大きく変化してきた
・IPCC報告の論点㉕:日本の気候は大きく変化してきた
・IPCC報告の論点㉖:CO2だけで気温が決まっていた筈が無い
・IPCC報告の論点㉗:温暖化は海洋の振動で起きているのか
・IPCC報告の論点㉘:やはりモデル予測は熱すぎた
・IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあったのか
・IPCC報告の論点㉚:脱炭素で本当にCO2は一定になるのか
・IPCC報告の論点㉛:太陽活動変化が地球の気温に影響した
・IPCC報告の論点㉜:都市熱を取除くと地球温暖化は半分になる
・IPCC報告の論点㉝:CO2に温室効果があるのは本当です
・IPCC報告の論点㉞:海氷は本当に減っているのか
・IPCC報告の論点㉟:欧州の旱魃は自然変動の範囲内
・IPCC報告の論点㊱:自然吸収が増えてCO2濃度は上がらない
・IPCC報告の論点㊲:これは酷い。海面の自然変動を隠蔽
・IPCC報告の論点㊳:ハリケーンと台風は逆・激甚化
・IPCC報告の論点㊴:大雨はむしろ減っているのではないか
■

関連記事
-
IEA(国際エネルギー機関)が特別リポート「エネルギーと大気汚染」(Energy and Air Pollution)を6月発表した。その概要を訳出する。 [2016年6月27日] IEAのリポートによれば、エネルギー投
-
シンポジウムの第2セッション「原発ゼロは可能か」で、パネリストとして登場する国際環境経済研究所理事・主席研究員の竹内純子さんの論考です。前者はシンポジウム資料、後者は竹内さんが参加した、温暖化をめぐるワルシャワでの国際会議でのルポです。シンポジウムを視聴、参加する皆さまは、ぜひ参考にしてください。
-
石炭火力に対する逆風がますます強まっている。環境団体はパリ協定の2℃目標を達成するため、石炭関連資産からの資本引き上げを唱道し、世界の石炭資源の88%は使わずに地中に留めておくべきだと主張している。COP24では議長国ポ
-
2023年は、気候学にとって特別な年であった。世界各地の地上気象観測地点で、過去に比べて年平均気温が大幅に上昇したからである。 ところが残念なことに、科学者はこの異常昇温を事前に予測することができなかった。 CO2などに
-
米国のウィリアム・ハッパー博士(プリンストン大学物理学名誉教授)とリチャード・リンゼン博士(MIT大気科学名誉教授)が、広範なデータを引用しながら、大気中のCO2は ”heavily saturated”だとして、米国環
-
NHKで流れた福島原発事故の映像、ここに使用済核燃料が保管され一時的にその溶融の危険が指摘された。
-
電力供給への貢献度に見る再生可能エネルギーの立ち位置 電力各社のホームページを見ると、供給エリアの電力総需要と太陽光発電量が表示されています。それを分析することで再生可能エネルギー(ここでは最近導入がさかんな太陽光発電と
-
経産省が、水素・アンモニアを非化石エネルギー源に位置づけるとの報道が出た。「製造時にCO2を排出するグレー水素・アンモニアも、燃焼の瞬間はCO2を出さないことから非化石エネルギー源に定義する」とか。その前にも経産省は22
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間