米国議会報告「欧州の官製エネルギー危機を見習うな」
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2022/01/iStock-1344822290-660x440.jpg)
da-kuk/iStock
昨年の11月に米国上院エネルギー・天然資源委員会(U.S. Senate Committee on Energy and Natural Resources委員長はJohn Barrasso上院議員、ワイオミング州選出、共和党)が「ヨーロッパのエネルギー危機:アメリカへの警告」と題する報告書を公表した。
要点は以下のとおり。
- 欧州のエネルギー危機は政策的なものだ。
- グリーンな政策の結果、風力発電と輸入天然ガスに極端に依存するようになったが、風力不足が原因で天然ガスが品薄・高価格になった。独占的なガス供給者となったロシアはガスの欧州向け販売量を抑制している。
- 欧州ではガス・電力価格が高騰し、需給はひっ迫している。
以上は今や様々なところで言われているものと同じだが、データを挙げながら詳しく記述してある。例えばオランダの市場でのガス価格の高騰、欧州諸国の電力価格の高騰、などである。
同報告は、「欧州の真似をすれば、米国でも同様なエネルギー危機が起きる」としている。温暖化問題への解決策としては、規制や税で強引に進めるのではなく、CCSや原子力などの技術開発を進め、安価、安定で規模拡大が可能な技術を実現することが重要だ、としている。
このような報告が議会から出てくることは重要だ。日本の議会でも、「欧州の官製エネルギー危機の真似をしてはいけない」という報告を出してはどうだろうか?
■
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
熊本県、大分県を中心に地震が続く。それが止まり被災者の方の生活が再建されることを祈りたい。問題がある。九州電力川内原発(鹿児島県)の稼動中の2基の原子炉をめぐり、止めるべきと、主張する人たちがいる。
-
12月14日に投開票が行われる衆議院議員選挙。そこでの各党の選挙公約をエネルギーに焦点を当てて分析してみる。
-
福島原発の事故により、事故直前(2010年度)に、国内電力供給の25% を占めていた原発電力の殆どが一時的に供給を停止している。現在、安全性の確認後の原発がどの程度、再稼動を許可されるかは不明であるが、現状の日本経済の窮状を考えるとき、いままで、国民の生活と産業を支えてきた原発電力の代替として輸入される化石燃料は、できるだけ安価なものが選ばれなければならない。
-
英国で2007年に発表されたスターン氏による「スターン・レビュー」と言う報告書は、地球温暖化による損害と温暖化対策としてのCO2削減の費用を比較した結果、損害が費用を上回るので、急進的な温暖化対策が必要だと訴えた。 当時
-
地球温暖化問題、その裏にあるエネルギー問題についての執筆活動によって、私は歴史書、そして絵画を新しい視点で見るようになった。「その時に気温と天候はどうだったのか」ということを考えるのだ。
-
自然エネルギーの利用は進めるべきであり、そのための研究開発も当然重要である。しかし、国民に誤解を与えるような過度な期待は厳に慎むべきである。一つは設備容量の増大についての見通しである。現在、先進国では固定価格買取制度(FIT)と云う自然エネルギー推進法とも云える法律が制定され、民間の力を利用して自然エネルギーの設備増強を進めている。
-
G20では野心的合意に失敗 COP26直前の10月31日に「COP26議長国英国の狙いと見通し」という記事を書いた。 その後、COP26の2週目に参加し、今、日本に戻ってCOP26直前の自分の見通しと現実を比較してみると
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 地球温暖化の予測には気候モデルが使われる。今回IPCCで
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間