米国15州、脱炭素を標榜する金融機関との取引停止を示唆

Tenedos/iStock
バイデン政権は、米国内の金融機関に化石燃料産業への投資を減らすよう圧力をかけてきた。そして多くの金融機関がこれに応じてポートフォリオを変えつつある。
これに対して、11月22日、15の州の財務長官らが叛旗を翻した。
すなわち、連名で大手金融機関に書簡を送り、「石炭・石油・天然ガス産業への融資を打ち切った金融機関とは、州の資金の預け入れなどの取引関係を解消する」と脅した。
National Review誌が報じている(”Fifteen States Respond to ‘Woke Capitalism’, Threaten to Cut Off Banks That Refuse to Service to Coal, Oil Industries “)。
すなわち、
15州の財務担当者の連合は月曜日、米国の銀行業界に書簡を送り、石炭、石油、天然ガス産業への融資を断つ企業方針を採用した銀行に対して「集団行動」を取る予定であることを警告した。. . . この書簡では、「州の収入の大部分を減少させることを目的とした政策を採用した」金融機関に対して、「州の資金を保有、維持、管理することに大きな利益相反がある」と警告した。
この書簡に署名した州は、ウェストバージニア州、アリゾナ州、アーカンソー州、アイダホ州、ルイジアナ州、ミズーリ州、ネブラスカ州、ノースダコタ州、サウスカロライナ州、サウスダコタ州、ユタ州、ワイオミング州、アラバマ州、テキサス州、ケンタッキー州である。いずれも化石燃料産業が経済にとって重要な州だ。
書簡の受取人には、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、シティグループ、ゴールドマン・サックスなどの大手が含まれている。
各州の口座と年金基金を合わせると、問題となる金額は1兆ドルとはいかないまでも、数千億ドルに達すると見られる。
翻って日本はどうか。
日本でも、金融機関は化石燃料産業への投資から撤退するという方針を発表している。だがその一方で、化石燃料を利用する産業(ほとんどの産業がそうだが)は多くの自治体の経済の根幹になっている。ならば、自治体の資金をそれら金融機関が預かることは、利益相反となる。
構図は全く同じだ。日本でも、自治体から金融機関に書簡が送られる日が近いのだろうか。
■

関連記事
-
“ドイツのソフトな全体主義化”。陰謀論だと言われることは承知の上で、随分前からこの問題に言及してきた。ドイツで起きる出来事を真剣に定点観測するようになってすでに20年あまり、政治や世論の転換前の兆候として、メディアで使わ
-
第6次エネルギー基本計画の検討が始まった。本来は夏に電源構成の数字を積み上げ、それをもとにして11月のCOP26で実現可能なCO2削減目標を出す予定だったが、気候変動サミットで菅首相が「2030年46%削減」を約束してし
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク、GEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
2025年5月、米国フロリダ州で画期的な法案が可決された。議会は、気候工学(ジオエンジニアリング)や天候改変行為を犯罪とする法案「SB 56」を通過させ、違反者には最大5年の懲役と10万ドルの罰金が科される見通しだという
-
政府は内閣府に置かれたエネルギー・環境会議で9月14日、「2030年代に原発の稼動をゼロ」を目指す新政策「革新的エネルギー・環境戦略」をまとめた。要旨は以下の通り。
-
アメリカは11月4日に、地球温暖化についてのパリ協定から離脱しました。これはオバマ大統領の時代に決まり、アメリカ議会も承認したのですが、去年11月にトランプ大統領が脱退すると国連に通告し、その予定どおり離脱したものです。
-
英国はCOP26においてパリ協定の温度目標(産業革命以降の温度上昇を2℃を十分下回るレベル、できれば1.5℃を目指す)を実質的に1.5℃安定化目標に強化し、2050年全球カーボンニュートラルをデファクト・スタンダード化し
-
今年7月から実施される「再生可能エネルギー全量買取制度」で、経済産業省の「調達価格等算定委員会」は太陽光発電の買取価格を「1キロワット(kw)時あたり42円」という案を出し、6月1日までパブコメが募集される。これは、最近悪名高くなった電力会社の「総括原価方式」と同様、太陽光の電力事業会社の利ザヤを保証する制度である。この買取価格が適正であれば問題ないが、そうとは言えない状況が世界の太陽電池市場で起きている。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
- 勝負は既についている? TSMC(熊本)vs.ラピダス(北海道)
- 治安が悪化するドイツ:押し出されたのは少女か、それとも法か
- トランプが気候変動は「いかさま」だという理由
- 地球温暖化は加速しているが、その原因はCO2ではない
- 三菱商事撤退が示す洋上風力の幻想:日本はなぜ推進をやめられないのか
- 80万トンともいわれる廃棄ソーラーパネルの2040年問題
- 洋上風力プロジェクトに黄信号:三菱商事に続いてENEOSにも逆風
- 迷走する洋上風力発電競争入札:毎回のルール変更で業界大混乱
- プラスチックごみはリサイクルしないで燃やせばいい
- スペイン大停電の原因は過剰な再エネ依存と判明:日本にも迫る電力不安の現実