衆院選から見えた:若年層は脱炭素やSDGsなど望んでいない
企業で環境・CSR業務を担当している筆者は、様々な識者や専門家から「これからは若者たちがつくりあげるSDGs時代だ!」「脱炭素・カーボンニュートラルは未来を生きる次世代のためだ!」といった主張を見聞きしています。また、脱炭素やSDGsを唱える人たちが選挙のたびにSNS上で「政権選択選挙!」「与党に国民の審判を!」「若者よ投票に行こう!」などと呼びかける姿を目にします。今回に関しては、脱炭素や原発・エネルギー政策の比較なども盛んに拡散されており、これまで以上に脱炭素・SDGs界隈では政権交代への熱が高かったように感じます。
今回の衆院選で政権交代を実現する場合の受け皿は共産党と連携した立憲民主党だったわけです。つまり、普段脱炭素やSDGsを推進している人たちは共産党が協力する政権を誕生させたかった、ということになります。そして、現実に起きた国民の審判は真逆の結果でした。
日本経済新聞がまとめた年代別の投票先を見てみると、自民は世代を問わずまんべんなく支持されていますが(2017年は若年層の支持率が高い)、立民や共産の支持層は高齢化しているようです。
ところで、今回の衆院選で10代〜30代の若年層は環境・気候変動対策をまったく重視しなかったようです。日テレNEWS24の出口調査によれば、18・19歳が重視した政策の上位は①新型コロナ対応(25.2%)、②子育て・教育政策(13.7%)、③景気対策(11.4%)でした。同じく20代では①景気対策(19.0%)、②子育て・教育政策(18.6%)、③新型コロナ対応(18.1%)、30代は①子育て・教育政策(30.8%)、②景気対策(20.6%)、③新型コロナ対応(11.9%)と、上位3項目は同じ傾向でした。
社会全体の課題である新型コロナ対応を除けば、若年世代にとって差し迫った課題である「子育て・教育政策」「景気対策」を重視するのは当然と言えます。
一方、「環境・気候変動の対策」については、グラフに数値が記載されていないもののおおよそ18・19歳で3%程度、20代・30代では2%程度に見えます。いずれの年代でも、「社会全体のデジタル化の推進」(1%程度)に次いで重視しない政策でした(ちなみに、10代~30代では憲法改正よりも低い結果)。
若年層で環境・気候変動対策への関心が低い理由は分かりませんが、上位が「子育て・教育政策」「景気対策」であることを裏返せば、日々の生活に直結する電気代の高騰を招きかねない点を考慮した可能性はありそうです。
繰り返しになりますが、多くの識者や専門家が「脱炭素やSDGsは次世代のため!」「若者が投票に行って政権交代を実現しよう!」と訴えていましたが、少なくとも上記の日経、日テレNEWS24のグラフからは、実際に投票所へ足を運んで選挙に参加した若年層は政権交代を望んでおらず、環境・気候変動対策にも関心がない、と言えそうです。
むしろ、上記2つのグラフからは50代以上の高齢層ほど政権交代を望んでおり、かつ投票においては環境・気候変動対策を重視したように見えます。
“年齢別にみると、じつは18~24歳という若い人たちが最も気候変動の心配をしていない。気候変動と答えたのはわずか15%だ。
よく「海外の若者が気候変動対策を強化するよう求めてデモをしている、これは若者と大人という世代間の戦いだ」と主張する映像が報道されているが、どうも違うようだ。”
脱炭素を訴えるグレタさんも、学校をサボって気候マーチを行う日本の若者たちも、声は大きいのですが実は少数派なのかもしれません。日頃からこうした若者たちと活動を共にしている脱炭素・SDGsを唱える大人たちには大きなブームに見えているのでしょうか。むしろ学校に行って勉強している若者たちこそが脱炭素について冷静に受け止めており、今回の衆院選の結果にも表れたのだと考えられます。
多くの若年層にとっては子育てや景気対策こそが重要であり、その土台となる経済を縮小する脱炭素やSDGsなど望んでいないのではないでしょうか。
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