中国は石炭大増産でCOP26期間中に過去最高を更新

2021年11月18日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

Philippe Fritsch/iStock

あまり報道されていないが、CO2をゼロにするとか石炭火力を止めるとか交渉していたCOP26の期間中に中国は石炭を大増産して、石炭産出量が過去最大に達していた。中国政府が誇らしげに書いている(原文は中国語、邦訳は筆者)。

国家発展改革委員会は11月11日、石炭の生産と供給を増やすための措置が引き続き実施されるにつれて、高品質の石炭生産能力がさらに解き放たれると報告した。石炭生産は急速に回復し、増加した。11月10日には、1日あたりの石炭生産量が過去最高の1,205万トンに達し、前回のピークから12万トン増加した。その中でも、山西省、陝西省、新疆ウイグル自治区などの石炭生産量は、すべて過去最高を記録した。これは国のエネルギー供給を確保し価格を安定させる活動の強固な基盤となる。

中国は昨年末以来、石炭不足と電力不足に悩んでおり、政府は必死になって石炭増産を奨励している(参考 九州大学堀井准教授と筆者の対談動画 および対談記事)。その成果が出てきたということだ。

じつはこの中国の石炭大増産のお陰で、世界全体で進行しているエネルギー危機も緩和される訳で、光熱費の上昇とインフレ懸念で悩みを深めている世界各国政府にとってもこれは朗報なのだ。

バラマキ財政でインフレ懸念を招き「バイデンフレーション」と揶揄されているバイデン大統領も例外ではない。

ボリス・ジョンソン英首相はCOP26で採択された「グラスゴー気候合意」は石炭の終焉をもたらす、などと発言したが、これが世界の現実だ。

その英国でもガス・電気の価格が高騰し大問題になっているが、中国の石炭増産のお陰でこれも少しは緩和しそうだ。

クリックするとリンクに飛びます。

「脱炭素」は嘘だらけ

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 前回お知らせした「非政府エネルギー基本計画」の11項目の提言について、3回にわたって掲載する。まずは第1回目。 (前回:強く豊かな日本のためのエネルギー基本計画案を提言する) なお報告書の正式名称は「エネルギードミナンス
  • アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
  • 東日本大震災からはや1年が経過した。昨年の今頃は首都圏では計画停電が実施され、スーパーの陳列棚からはミネラルウォーターが姿を消していた。その頃のことを思い返すと、現在は、少なくとも首都圏においては随分と落ち着きを取り戻した感がある。とはいえ、まだまだ震災後遺症は続いているようだ。
  • IPCC第6次評価報告書(AR6)の第1作業部会(自然科学的根拠)の政策決定者向け要約(SPM)が発表された。マスコミでは不正確なあおりやデータのつまみ食いが多いので、環境省訳を紹介しよう。注目される「2100年までの気
  • 米国シェールガス革命に対する欧州と日本の反応の違いが興味深い。日本では、米国シェールガス革命によって日本が安価に安定的に燃料を調達できるようになるか否かに人々の関心が集中している。原子力発電所の停止に伴い急増した燃料費負担に苦しむ電力会社が行った値上げ申請に対し、電気料金審査専門委員会では、将来米国から安いシェールガスが調達できることを前提に値上げ幅の抑制を図られたが、事ほど左様に米国のシェールガス革命に期待する向きは大きい。
  • (前回:再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か) 火力をさらに減らせば再生可能エネルギーを増やせるのか 再生可能エネルギーが出力制御をしている時間帯も一定量の火力が稼働しており、それを減らすことができれば、その分再エネ
  • トランプ大統領は就任初日に発表した大統領令「Unleashing American Energy – The White House」において、環境保護庁(EPA)に対し、2009年のEndangerment Findi
  • 「もんじゅ」以降まったく不透明なまま 2016年12月に原子力に関する関係閣僚会議で、高速原型炉「もんじゅ」の廃止が決定された。それ以来、日本の高速炉開発はきわめて不透明なまま今に至っている。 この関係閣僚会議の決定では

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑