衆議院選で脱炭素の経済負担は課さないと公約せよ
米ホワイトハウスは、中国などCO2規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税を課す「国境炭素税」について、支持を見合わせている(ロイター英文記事、同抄訳記事)。(国境炭素税について詳しくは手塚氏記事を参照)
バイデン大統領は、手段としての国境炭素税について一般論としては支持している。しかし、現在の民主党が提示している国境炭素税案については支持を表明していない。同案は、民主党が単独可決を目指す3兆5000億ドルの経済政策案に盛り込まれたものだ。
支持しない理由であるが、自動車や家電製品など多くの消費財の価格上昇につながりインフレを引き起こす懸念があること、そして「年収40万ドル以下の米国人に新規の課税をしない」というバイデン氏の公約に反するからだ、という。
年収40万ドルというと4千万円だから、日本なら新入社員から社長まで大抵はこの範囲に入る。
さて日本ではいま脱炭素を掲げたエネルギー基本政策案が8月4日に政府から提示され、パブリックコメントを経て今秋の総選挙後に閣議決定される予定だ。
この案では大幅なCO2削減を掲げており、本コラムで書いてきたように、強行すれば消費税倍増に匹敵する莫大な経済負担が生じると筆者は(多くの識者も同様と思うが)みている。
政府は「グリーン成長によって環境と経済を両立してこれを実現する」と綺麗ごとを言っている。だがこれだけではいつ反故にされるかわからない。
生活を守るため、地域経済を守るために、しっかり言質を取っておこう。
今般の総選挙にあたり、議員には公約として「脱炭素を名目として有権者の経済負担を増やすことはしない」と明言するよう、迫るべきだ。
それを公約しない議員には、どの程度の経済負担を要求するのか、国民に詳しく説明してもらおう。
■
関連記事
-
きのうの日本記者クラブの討論会は、意外に話が噛み合っていた。議論の焦点は本命とされる河野太郎氏の政策だった。 第一は彼の提案した最低保障年金が民主党政権の時代に葬られたものだという点だが、これについての岸田氏の突っ込みは
-
政府の第6次エネルギー基本計画(案)では、2030年までにCO2排出量を46%削減する、2050年までにCO2排出を実質ゼロにする、そのために再生可能エネルギーによる不安定電源を安定化する目的で水素発電やアンモニア発電、
-
高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市) 政府は、高速増殖炉(FBR)「もんじゅ」を廃炉にする方針を明らかにした。これはGEPR(記事「「もんじゅ」は研究開発施設として出直せ」)でもかねてから提言した通りで、これ以外の道はなか
-
エネルギーの問題を需要側から考え始めて結構な年月が経ったが、去年ほど忙しかった年はない。震災後2011年4月に「緊急節電」というホームページを有志とともに立ち上げて、節電関連の情報の整理、発信を行い、多くの方のアクセスを頂いた。
-
地球温暖化というと、猛暑になる!など、おどろおどろしい予測が出回っている。 だがその多くは、非現実的に高いCO2排出を前提としている。 この点は以前からも指摘されていたけれども、今般、米国のピールキーらが詳しく報告したの
-
先日、朝日新聞の#論壇に『「科学による政策決定」は隠れ蓑?』という興味深い論考が載った。今回は、この記事を基にあれこれ考えてみたい。 この記事は、「世界」2月号に載った神里達博氏の「パンデミックが照らし出す『科学』と『政
-
エネルギーで考えなければならない問題は、原子力だけではありません。温暖化、原発の安全管理、エネルギー供給体制など、さまざまな課題があります。
-
前2回(「ごあいさつがわりに、今感じていることを」「曲解だらけの電源コスト図made by コスト等検証委員会」)にわたって、コスト等検証委員会の試算やプレゼンの図について、いろいろ問題点を指摘したが、最後に再生可能エネルギーに関連して、残る疑問を列挙しておこう。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間