SDGsウォッシュを見極める方法

2021年07月30日 06:50

SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)については、多くの日本企業から「うちのビジネスとどう関連するのか」「何から手を付ければよいのか」などといった感想が出ています。こうした悩める企業への回答として、SDGsのコンサルタントからは「どの目標に貢献しているかを整理すればよいのです」「御社はすでに3つもSDGsに貢献していることが分かりましたね!素晴らしい!」などの指導がなされます。その後、その企業は何も行動を変えることなく、胸に17色のバッジを着けるだけで高額なコンサル料を支払って満足しているのが実態です。

SB/iStock

さて、SDGsの前文には有名なこの文章があります。

すべての国及びすべてのステークホルダーは、協同的なパートナーシップの下、この計画を実行する。我々は、人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒やし安全にすることを決意している。我々は、世界を持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることに決意している。我々はこの共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さないことを誓う。

外務省webサイトより抜粋。太字は筆者が追加。)

「誰一人取り残さない」がクローズアップされがちですが、筆者は「緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとる」ことこそがSDGsの本質だと考えています。つまり、現在の人類の行動や企業活動は持続可能ではないので、行動を変革することこそがSDGsの目的のはずなのです。しかしながら、現実には何ら行動変革を伴わず、「我が社はSDGsに貢献しています」と喧伝する事例ばかりが再生産されています。

このように、何ら行動が変わっていないのにwebサイトやサステナビリティ報告書等でSDGsの17項目と自社の活動の星取表を付けたり(以下、SDGsタグ付けと呼ぶ)、役員や従業員が胸にSDGsバッジを付けるだけでSDGsに貢献していると喧伝している企業は「SDGsウォッシュ」と言われても反論ができないはずです。SDGsウォッシュとは、SDGsに取り組んでいるように装っているが実態が伴っていない組織や活動について指摘されるものであり、元来は企業の環境活動に対して指摘する「グリーンウォッシュ」として広く使われてきた用語です。

ただし、このSDGsウォッシュやグリーンウォッシュには統一された定義がありません。そこで、SDGsウォッシュに関しては以下の定義を提案します。

SDGsに取り組んでいると自称している企業や、胸にSDGsバッジを付けている人に以下の2つを質問します。

① その活動(事業、ビジネス等)は2015年9月以降に開始したものですか。
② 2015年9月以降に始めた場合、その活動はSDGsがあったから生まれたものですか。

この両方を満たさなければ、SDGsウォッシュと言われる可能性があることを、企業は肝に銘じるべきです。この①②の質問は、SDGsによる行動変革や付加価値の有無を問うています。仮に2015年8月以前から行っていた活動であれば何も行動が変わっておらず、またSDGsがなくても生まれた・成立した活動であればSDGsによる付加価値は何もないはずです。この①②を満たさない活動は、後付けで上塗りしたSDGsタグ付けなのです。

企業でSDGsを推進している事務局担当者は、改めて自社の活動をこの①②に照らしたうえで、両方を満たす活動であれば今後も胸を張ってドンドン進めてください。一方で、もしも①②を満たさない場合、勇気を持って自社のwebサイトからSDGsマークを外し、役員や従業員からSDGsバッジを回収すべきではないでしょうか。SDGs推進の事務局であれば、実効性が伴わない環境広報やイメージ戦略はグリーンウォッシュに当たることを認識しているはずですが、不思議なことに近年SDGsに関してだけはこの意識が企業から消えてしまっています。国やSDGsコンサルが推進しているのだからよいだろうと考えるのではなく、地球環境問題や社会課題に対する各社・各担当者の倫理感に照らして考えていただきたいものです。

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