中国のCO2は先進国の合計を追い越し、更に増え続ける

2021年07月06日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

ronniechua/iStock

中国のCO2排出量は1国で先進国(米国、カナダ、日本、EU)の合計を追い越した。

分かり易い図があったので共有したい。

図1

図1は、James Eagle氏作成の動画「China’s CO2 emissions almost surpass the G7」からのスクリーンショット。縦軸は年間のCO2排出量で単位は100万トン。左が中国、右は先進国(G7である米国、英国、カナダ、日フランス、ドイツ、イタリア、日本、およびその他のEU)。

動画では中国のCO2排出が2000年以降急速に伸び続け、2019年時点でほぼ追いついていることが分かる。伸びの勢いからみて、既に逆転しているであろう。

さて今後はどうか。

日本を含めて、先進国は軒並み2030年までにCO2を半減すると宣言している。

その一方で、中国の現行の5か年計画では、2025年までにあと1割CO2を増やす見込みである。また中国は2030年まではCO2の増加を続けるとしている

図2

この図2の縦軸はCO2等注1)の年間排出量で、単位は億トン。今後5年の中国の増加量は、日本の年間排出量に匹敵する。

先進国が本当にCO2を半減できるなどとは筆者は思わないが、それを目指すだけで、産業空洞化などによる経済的な悪影響は計り知れない。

その一方で、中国はCO2に制約されることなく経済成長を続ける。

先進国は、民主主義を守るどころか、共産主義・中国の台頭を前にして、わざわざ自滅しようとしている。

<注記>
注1) やや細かく言うと、この図2は、図1と厳密には数値の意味が違う。CO2だけでなくメタンなど他の温室効果ガスも加えたCO2等で表示してある。本稿の議論には影響はない。

クリックするとリンクに飛びます。

「脱炭素」は嘘だらけ

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 有馬純 東京大学公共政策大学院教授 2月16日、外務省「気候変動に関する有識者会合」が河野外務大臣に「エネルギーに関する提言」を提出した。提言を一読し、多くの疑問を感じたのでそのいくつかを述べてみたい。 再エネは手段であ
  • 金融庁、ESG投信普及の協議会 新NISAの柱に育成 金融庁はESG(環境・社会・企業統治)投資信託やグリーンボンド(環境債)の普及に向けて、運用会社や販売会社、企業、投資家が課題や改善策を話し合う協議会を立ち上げた。
  • 昨年9月から定期的にドイツのエネルギー専門家と「エネルギー転換」について議論する場に参加している。福島第一原子力発電所事故以降、脱原発と再エネ推進をかかげるドイツを「日本が見習うべきモデル」として礼賛する議論が目立つよう
  • ドナルド・トランプ氏が主流メディアの事前予想を大きく覆し、激戦区の7州を制覇、312対226で圧勝した。この勝利によって、トランプ氏は、「グリーン・ニュー・スカム(詐欺)」と名付けたバイデン大統領の気候政策を見直し、税制
  • GEPRフェロー 諸葛宗男 はじめに 米国の核の傘があてにならないから、日本は核武装すべきだとの意見がある。米国トランプ大統領は、日本は米国の核の傘を当てにして大丈夫だと言いつつ日本の核武装を肯定している。国内でも核武装
  • 4月8日、マーガレット・サッチャー元首相が亡くなった。それから4月17日の葬儀まで英国の新聞、テレビ、ラジオは彼女の生涯、業績についての報道であふれかえった。評者の立場によって彼女の評価は大きく異なるが、ウィンストン・チャーチルと並ぶ、英国の大宰相であったことは誰も異存のないところだろう。
  • アメリカ共和党の大会が開かれ、トランプを大統領に指名するとともに綱領を採択した。トランプ暗殺未遂事件で彼の支持率は上がり、共和党の結束も強まった。彼が大統領に再選されることはほぼ確実だから、これは来年以降のアメリカの政策
  • 東日本大震災、福島原発事故で、困難に直面している方への心からのお見舞い、また現地で復旧活動にかかわる方々への敬意と感謝を申し上げたい。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑