環境運動で自滅しエネルギーの覇権を敵に委ねる日米欧
1. 化石燃料の覇権は中国とOPECプラスの手に
2050年までにCO2をゼロにするという「脱炭素」政策として、日米欧の先進国では石炭の利用を縮小し、海外の石炭事業も支援しない方向になっている。
のみならず、CO2を排出するから、脱炭素のためには石油や天然ガスも新規の開発は止めるべきだという国際エネルギー機関IEAの報告が出た。
シェルやBPなどの先進国の石油・ガス産業は、環境運動家が入り込んだ国際機関、政府、金融機関や株主の圧力を受けて、石油・ガス事業から撤退しつつある。
だが先進国が石炭・石油・ガスといった化石燃料事業から撤退すると、その空隙を埋めるのは誰か。
石油・ガス市場は、OPECにロシア等を加えた「OPECプラス」に制圧されつつある。OPECプラスの企業の大半は国営企業であり、環境運動の圧力が及ばない。先進国の民営企業とは異なるのだ。
このようにして、化石燃料の覇権は中国とOPECプラスといった、先進国の「敵」の手に渡りつつある。
2. 原子力の覇権は中国とロシアの手に
では原子力はどうか。
環境運動のせいで、先進国では原子力発電所は減り続けている。対照的に、中国・ロシアは大きく数を増やしている(図1)。
中国・ロシアは海外での原子力事業も伸ばしている(図2)。ロシアはベラルーシ、スロベニア、トルコ、インド、バングラディシュで原子力発電所を建設中である。中国はパキスタンで建設中である他、アルゼンチンでも契約を締結した(原子力白書による)。
製造者としての中国、ロシアの躍進は顕著で、2011 年以降に運転開始した 51 基 のうち 31 基が中国製、8基がロシア製となっている。両者で世界全体の4分の3を占めている訳だ。
「敵にパワーを贈る」という愚策
先進国は、安価で信頼できる化石燃料と原子力を、中国、ロシア、OPECプラスといった「敵」の手に委ね、高価で不安定な太陽風力に頼っていこうとしている。
先進国は「グリーン成長により、化石燃料も原子力も不要になる」などと言っているが、これは危険なファンタジーだ。
エネルギーは経済発展と国力の源泉だ。日本は夢から醒め、化石燃料と原子力を軸とした強靭なエネルギー政策に戻るべきだ。
■
関連記事
-
細川護煕元総理が脱原発を第一の政策に掲げ、先に「即時原発ゼロ」を主張した小泉純一郎元総理の応援を受け、東京都知事選に立候補を表明した。誠に奇異な感じを受けたのは筆者だけではないだろう。心ある国民の多くが、何かおかしいと感じている筈である。とはいえ、この選挙では二人の元総理が絡むために、国民が原子力を考える際に、影響は大きいと言わざるを得ない。
-
英国国営放送(BBC)で内部監視の役目を受け持つEditorial Complaints Unit (ECU)は、地球温暖化に関するBBCのドキュメンタリー番組が、気候変動について誤った報道をしたと判定した。 番組「ワイ
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 5月22日に放映されたNHK・ETVの「サイエンスZERO」では、脱炭素社会の切り札として水素を取り上げていたが、筆者の目からは、サイエンス的思考がほとんど感じられない内容だっ
-
20世紀末の地球大気中の温度上昇が、文明活動の排出する膨大な量のCO2などの温室効果ガス(以下CO2 と略記する)の大気中濃度の増加に起因すると主張するIPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)による科学の仮説、いわゆる「地球温暖化のCO2原因説」に基づいて、世界各国のCO2排出削減量を割当てた京都議定書の約束期間が終わって、いま、温暖化対策の新しい枠組みを決めるポスト京都議定書のための国際間交渉が難航している。
-
はじめに 欧州の原子力発電政策は国ごとにまちまちである。昔は原子力発電に消極的だったスウェーデンが原子力発電を推進する政策を打ち出しているのもおどろきだが、ドイツの脱原発政策も異色である。 原子力発電政策が対照的なこの2
-
気候科学の第一人者であるMITのリチャード・リンゼン博士は、地球温暖化対策については “何もしない “べきで、何かするならば、自然災害に対する”強靭性 “の強化に焦点を当て
-
2015年2月3日に、福島県伊達市霊山町のりょうぜん里山がっこうにて、第2回地域シンポジウム「」を開催したのでこの詳細を報告する。その前に第2回地域シンポジウムに対して頂いた率直な意見の例である。『食べる楽しみや、郷土の食文化を失ってしまった地元民の悲しみや憤りは察してあまりある。しかし、その気持ちにつけこんで、わざわざシンポジウムで、子供に汚染食品を食べるように仕向ける意図は何なのか?』
-
中国国家電網のロゴ問題をきっかけに強い批判を浴びていた内閣府の再エネタスクフォースの廃止が決まった。当然である。根拠法もなく河野太郎氏の集めた「私兵」が他の役所に殴り込み、大林ミカ氏のような活動家がエネルギー基本計画にま
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間