山火事は温暖化のせいではない
山火事が地球温暖化のせいではないことは、筆者は以前にも「地球温暖化ファクトシート」に書いたが、今回は、分かり易いデータを入手したので、手短かに紹介しよう。(詳しくは英語の原典を参照されたい)
まずカリフォルニアの山火事が話題になっている米国から。
下図は、山火事で焼失した米国の森林面積である。2017年は山火事が騒がれたが、それでも歴史的に見ると小さい。1930年代の方が5倍も焼失面積は大きかった。
オーストラリアでも、最近の山火事で20万平方キロが消失したことが話題になった。これは日本の面積37万平方キロの半分に相当するから、確かに広大な面積だ。しかし歴史的には1974年から1975年にかけての山火事の方が巨大で、なんと117万平方キロが消失した。これは日本の面積の3倍にもなる。
世界全体で見ても、山火事による焼失面積は減少傾向にあることが、下図から分かる。
以上は20世紀のデータであったが、長期的な傾向を見るために、1600年まで遡ってみる。下図は、北米西部の800以上の地点での山火事の記録件数である。
この図から分かることは、まず、人間が入植する以前(図の左側の白い部分、概ね1875年まで)は、山火事は頻繁に起きていた、ということだ。北米西部は(オーストラリアも)、山火事はもともと自然の一部なのだ。
そして、人間が入植した後(図の右側、概ね1875年以降)は、山火事が減少した。
減少の理由は、第1に、家畜を飼うようになったので、草や木が食われて、山火事の燃料が無くなったためである。そして第2に、消防活動によって山火事を抑え込むようになったためである。
では冒頭の図のように、2000年ごろから米国の山火事面積がまた増えてきた理由は何だろうか?
最大の要因は、長い間にわたり人間が山火事を抑制し続けた結果として、山に燃料が溜まってしまったことである。
山に燃料が溜まりすぎると山火事の元になるので、伐り出したり、計画的に火入れをして燃やしてやらないといけないのだが、米国もオーストラリアもそれをしてこなかった。
火入れと山火事の関係を示すデータが下図である。
この図は西オーストラリアにおいて、山火事による焼失面積と、計画的な火入れの面積を比較したものである。計画的な火入れが盛んだった1970年頃は山火事が抑えられていたが、火入れが減った後の1990年以降には山火事が増加していることが分かる。
近年になって山火事が増加しているもう1つの理由は、人間の居住域が広がり、そこで電気や燃料の利用をしくじって火元となることだ。
山火事は地球温暖化のせいにされることがあるが、少なくとも主要な要因では無いし、因果関係があるか否かもはっきりしていない。

関連記事
-
2021年8月に出たIPCCの報告の要約の図Figure TS.9を見ると、CO2濃度上昇し、過去200万年で最高の水準に達した、としている。こう言うと、まるで未曽有の危険領域に達したかのようだ。 けれども、本文をひっく
-
経済産業省は東電の原子力部門を分離して事実上の国営にする方向のようだが、これは順序が違う。柏崎刈羽原発を普通に動かせば、福島事故の賠償や廃炉のコストは十分まかなえるので、まず経産省が今までの「逃げ」の姿勢を改め、バックフ
-
岸田首相肝いりのGX実行会議(10月26日)で政府は「官民合わせて10年間で150兆円の投資でグリーン成長を目指す」とした。 政府は2009年の民主党政権の時からグリーン成長と言っていた。当時の目玉は太陽光発電の大量導入
-
政策家の石川和男氏へのインタビュー記事です。政府は、発送電分離を柱にする2020年までの電力自由化を打ち出しました。しかし、これは「電力価格を引き下げる」という消費者や企業に必要な効果があるのでしょうか。また原発のことは何も決めていません。整合性の取れる政策は実行されるのでしょうか。
-
はじめに アメリカがプルトニウムの削減を求めてきたとの報道があってプルトニウムのことが話題になっている。まず、日本がなぜプルトニウムを生産するのかを説明する。もちろん、高速炉が実用化されたらプルトニウムを沢山使うようにな
-
福島原発の事故により、事故直前(2010年度)に、国内電力供給の25% を占めていた原発電力の殆どが一時的に供給を停止している。現在、安全性の確認後の原発がどの程度、再稼動を許可されるかは不明であるが、現状の日本経済の窮状を考えるとき、いままで、国民の生活と産業を支えてきた原発電力の代替として輸入される化石燃料は、できるだけ安価なものが選ばれなければならない。
-
【要旨】過去30年間、米国政府のエネルギー技術革新への財政支援は、中国、ドイツ、そして日本などがクリーン・エネルギー技術への投資を劇的に増やしているにもかかわらず著しく減少した。政府のクリーン・エネルギー研究開発への大幅な支出を増やす場合に限って、米国は、エネルギー技術革新を先導する現在の特別の地位を占め続けられるはずだ。
-
ニュージーランド議会は11月7日、2050年までに温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にする気候変動対応法を、議員120人中119人の賛成多数で可決した。その経済的影響をNZ政府は昨年、民間研究機関に委託して試算した。 その報
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間