猛暑は地球温暖化のせいではない

2020年07月18日 09:00
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キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

猛暑になるたびに「地球温暖化のせいだ」とよく報道される。

だがこれも、豪雨台風が温暖化のせいだという話と同様、フェイクニュースだ。

猛暑の原因は、第1に自然変動、第2に都市熱である。地球温暖化による暑さは、感じることも出来ないくらい、ごく僅かしかない。

1. 政府発表は「地球温暖化の影響」としている

2018年の夏は猛暑だった。日本政府は「東日本の7月の平均気温が平年より2.8℃高くなり、これは1946年の統計開始以降で第1位の高温であった」、「熊谷で最高気温が国内の統計開始以来最高となる41.1℃になった」として、その原因には「地球温暖化の影響があった」としている(政府資料「はじめに」)。

2. 地球温暖化は僅か0.2℃

だが、地球温暖化は、起きているといっても、ごく緩やかなペースである。日本においては、気象庁発表で100年あたり1.1~1.2℃程度である。なお東北大学近藤純正名誉教授によれば、気象庁発表には都市化等の影響が混入していて、それを補正すると100年あたり0.7℃程度であるとされる(図1)。100年あたり0.7℃とすると、子供が大人になる30年間程度の期間であれば0.2℃程度となる。0.2℃と言えば体感できるような温度差ではない。

図1 日本平均の気温の推移。都市化等の影響を除き補正したもの。

政府発表で「熊谷で最高気温が41.1℃になった」とあったが、では、これへの地球温暖化の寄与はいかほどか? もし過去30年間に地球温暖化が無ければ40.9℃であった、ということだ。地球温暖化はごく僅かに温度を上げているに過ぎない。

平均気温についても同じようなことが言える。政府発表で東日本の7月の平均気温が平年より2.8℃高かった、としているが、これも、もし過去30年間に地球温暖化が無ければ2.6℃高かった、ということだ。猛暑であることに変わりはない。

3. 猛暑の第1の原因は自然変動

では猛暑の原因は何かというと、政府資料では図2のようになっている。図中、第5の要因として地球温暖化を挙げているが、他は全て、気圧配置の変化やジェット気流の蛇行など、自然変動だ。

図2 2018年7月の高温をもたらした要因

このような自然変動で起きる気温変化とは、地球規模で見てどのようなものなのか、図3を見るとよく分かる。図3では、2018年の気温が直近の10年間の平均と比較されている。これを見ると、日本と欧州では2018年は暑かった(緑色)ことが分かる。他方で北米とカザフスタンなどは寒かった(青色)ことも分かる。

このように、日本が暑かったといっても、別に地球全体が暑くなった訳ではない。気圧配置の変化やジェット気流の蛇行具合など、大規模な大気の流れの変化によって、南方の熱い空気が北方に運ばれて、北方が猛暑に見舞われたり、それと入れ違いに、北方の寒気が南方に運ばれて、南方が酷寒に見舞われたりする。われわれが日常的に体感している「異常な暑さ」や「異常な寒さ」というのは、このような気象の現象である。

これは、図3からも分かるように、年平均気温にして2℃程度のプラス・マイナスを地球各地で引き起こす。毎年のように2℃程度は上下するのだから、地球温暖化による気温上昇が30年間で0.2℃程度であるのとは文字通り桁違いの変化である。

図3 2018年の気温の直近10年間の平均との比較

出典:Humlum論文

出典:Humlum論文

以上は地球規模の話であったが、日本の中でも、地域によって自然変動がある。図4を見ると、2018年に東日本は猛暑だったといっても、北海道や九州南部では猛暑ではなかったことが分かる。つまり、「日本が地球温暖化のせいで暑くなった」のではなく、「日本の一部が自然変動のせいで暑くなった」のである。

図4  2018年7月の気温の平年との差

4. 猛暑の第2の原因は都市化

さらに、30年も経てば、局所的に気温を上げる要因は沢山ある。

都市化することで、アスファルトやコンクリートが増えると、ヒートアイランド現象が起きて暑くなる。図5を見ると、東京、大阪、名古屋は随分暑くなったことが分かる。100年あたりでは東京は3.2℃、大阪は2.8℃、名古屋は2.6℃も上昇した。地球温暖化はこのうち0.7℃だから、都市化の方がはるかに大きかった。

図5 年平均気温の変化

東京、名古屋、大阪を、比較的都市化の影響が少ないと見られる全国15地点の平均と比較。比較のため1927-1956年の平均がゼロになるように調整してある。(出典:政府資料p33)

東京、名古屋、大阪を、比較的都市化の影響が少ないと見られる全国15地点の平均と比較。比較のため1927-1956年の平均がゼロになるように調整してある。(出典:政府資料p33

気温を上げるのはヒートアイランド現象だけではない。家やビルが建て込むことで風が遮られても1℃ぐらいは上がる(ひだまり効果という)。水田が無くなるとその周辺では1℃くらいは暑くなる。地球温暖化で30年間に0.2℃上昇するという影響は、このような局所的な気温変化によってもかき消されてしまう。

熊谷などで、人々が「猛暑」を感じているとしたら、その殆どは、以上のような地球温暖化以外の要因による暑さだ。

「猛暑の原因が地球温暖化である」という言説はフェイクである。

政府発表では「地球温暖化の影響だ」としているが、これは「地球温暖化の影響はごく一部だ」と書き直すべきだ。

なお本稿について更に詳しい議論は、筆者によるワーキングペーパーを参照されたい。

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