審査に欠ける科学的、技術的な視点−浜野議員【原子力規制委員会を改革せよ3】
浜野喜史参議院議員(民進党) (はまの・よしふみ)1983年神戸大経済学部卒業、関西電力入社。全国電力関連産業労働組合総連合会長代理などを経て、2013年参議院議員に当選(比例区)
規制委の審査には、効率性だけでなく科学的、技術的な視点を欠くとの声も多い。中でも原発敷地内破砕帯などを調べた有識者会合は、多くの異論があるなか「活断層」との判断を下している。この問題について追及を続ける浜野喜史議員に聞く。
−原子力規制委員会のこれまでの活動をどう評価しますか。
浜野・あまりに多く問題がありすぎると思っています。新規制基準をつくり、その適用という新しい取り組みを始めたことで、試行錯誤の面はあるでしょう。しかし今年11月時点で適合性審査が終了した原子炉は8基にすぎず、その他は審査を待っている状況です。これはあまりに遅すぎます。
また電力会社には新規制基準の適合性審査で過重な負担がかかっています。審査の現場では、朝令暮改や過剰な書類のやりとりがあると聞きます。真剣に反省し、安全性の確保をおろそかにすることない形で、効率的で効果のある合理的な審査体制を作ることを、規制委、規制庁は真剣に考えるべきです。
−原発敷地内の破砕帯などの調査を行った規制委の有識者会合について、以前からその進め方や報告書の内容について、国会で問題点を追及しています。
浜野・有識者会合では、適正なプロセスを踏んで、本当に科学的、技術的見地から判断したのか疑わしい事案があります。敦賀、志賀、東通の各原子力発電所敷地内の破砕帯などについては、事業者と丁寧な対話もせずに「活断層であることを否定できない」とする報告書をまとめています。
そもそも有識者会合は法的な根拠を有していません。さらに敦賀発電所では、最終報告書の結論について、規制庁が根拠無く書き換えを提案した疑いがあります。これには強い不信感を持っており、引き続き国会で取り上げていきたいと思います。
−そのほかに、どのような問題点がありますか。
浜野・現行の40年運転制限制にも課題があると考えます。40年というのは政治的に決められた仮の数値であり、規制委設置後、科学的・技術的見地から改めて検討されることが国会審議で約束されています。それにも関わらず規制委は全く検討しておらず、これは大きな怠慢と考えています。
−規制行政はどう改革すべきですか。
浜野・特に大切なのは原子力事業者、立地自治体といった原子力に関わるステークホルダーとのコミュニケーションだと思います。今はそれが適切に行われず、規制委は孤立した状態に陥っています。
規制体制は今年1月に国際原子力機関(IAEA)の総合規制評価サービス(IRRS)によるレビューを受け、報告書が4月に公表されました。そこでは「規制委の体制と資源管理が可能な限り効率的で効果的な機能遂行を保証しているか明瞭でない」との記載があります。規制委はこの海外の専門家の意見を真摯に受け止めるべきです。
−規制委の委員はいずれ交代します。どのような人物が委員に相応しいでしょうか。
浜野・委員長をはじめ委員は、自らの専門性のみを頼りにするのではなく、科学的・技術的な見地から国内外の多様な意見に耳を傾け、国民に対し分かりやすく安全、安心を発信できる識者が望ましいと考えています。
(このインタビューはエネルギーフォーラム16年12月号に掲載したものを転載した。許諾いただいた関係者の皆さまに感謝を申し上げる。)

関連記事
-
再エネ賦課金が引き上げられて、世帯当たりで年額1万6752円になると政府が発表しました。 これに対する怒りの声が上がっています。 飯山陽氏「日本人に選ばれた国会議員が、なぜ日本のためではなく中国のための政治をするのか」
-
7月14日記事。双葉町長・伊沢史朗さんと福島大准教授(社会福祉論)・丹波史紀さんが、少しずつはじまった帰還準備を解説している。話し合いを建前でなく、本格的に行う取り組みを行っているという。
-
中国企業が移動式の海上原子力発電所20基を建設する計画を進めている。中国が領有権を争い、基地を建設して実効支配をたくらむ南シナ海に配備される可能性がある。
-
日本の防衛のコンセプトではいま「機動分散運用」ということが言われている。 台湾有事などで米国と日本が戦争に巻き込まれた場合に、空軍基地がミサイル攻撃を受けて一定程度損傷することを見越して、いくつかの基地に航空機などの軍事
-
国際エネルギー機関(IEA)が「2050年にネットゼロ」シナリオを発表した。英国政府の要請で作成されたものだ。急速な技術進歩によって、世界全体で2050年までにCO2の実質ゼロ、日本の流行りの言葉で言えば「脱炭素」を達成
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
加速するドイツ産業の国外移転 今年6月のドイツ産業連盟(BDI)が傘下の工業部門の中堅・中手企業を相手に行ったアンケート調査で、回答した企業392社のうち16%が生産・雇用の一部をドイツ国外に移転することで具体的に動き始
-
影の実力者、仙谷由人氏が要職をつとめた民主党政権。震災後の菅政権迷走の舞台裏を赤裸々に仙谷氏自身が暴露した。福島第一原発事故後の東電処理をめぐる様々な思惑の交錯、脱原発の政治運動化に挑んだ菅元首相らとの党内攻防、大飯原発再稼働の真相など、前政権下での国民不在のエネルギー政策決定のパワーゲームが白日の下にさらされる。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間