原子力規制委員会は事業者の疑問に誠実に答えよ-浜野喜史参議院議員
浜野喜史参議院議員(民主党)は、原子力規制委員会による規制行政、また日本原電敦賀2号機の破砕帯をめぐる問題を国会で10回以上、質問で取り上げている。規制行政への意見を聞いた。
-敦賀原発の破砕帯問題をどのように考えるか。
私は関西電力出身で電力関連産業の仲間の支援を受けて議員に選出されている。しかし国会でこの問題を繰り返し取り上げている理由は、電力関連産業のためだけではなく、日本のためである。「こんな行政があっていいのか」という思いが質問の動機だ。非常に問題のある対応が、原子力規制委員会、規制庁によって行われている。
敦賀2号機の問題は、ずさんな行政の象徴であると考えている。「東日本大震災復興及び原子力問題特別委員会」では総論ではなく各論で疑問を示している。しかし規制委から誠実な回答はない。彼らは事業者にも、国民にも説明責任を果たしていない。
-規制委の活動の何が問題か。
山ほどあるが、その一つは事業者の疑問に誠実に向き合っていないことだ。日本原電は66の疑問を出しているが、それに真摯に答えていない。田中規制委委員長は「いちいち事業者の個別の指摘に答えるやり方を採っていない」としている。これはおかしい。行政権を振るわれる企業が、説明を求めるのは当然のことだ。規制委は原子力発電所の稼働を左右する絶大な権力を持っており、その行使は独善であってはいけない。
また規制委の活動は法律に基づかないものがある。活断層の判断をする有識者会合もそうだ。この会合に法的な根拠はない。規制委は有識者会合の調査を参考に、安全性審査をするとしているが、どのように参考にするかも示していない。
-浜野議員の規制委への国会での質問は10回にもなる。メール問題のおかしさも、明らかになった。
原電の主張、またピアレビューの有識者会合のメンバーの異論がまともに議論されていない。議員として判断基準の資料要求をしたところ、そうした意見に対して「感想と受け止める」など、理由があいまいなまま、報告書がまとめられていることが明らかになった。
驚いたのは、電子メールの削除問題だ。最終報告書をまとめる過程が公開されず、さらに電子メールは「今後の業務において参照する必要がないため削除した」という。その説明に憤りを禁じ得ない。文書管理がずさんすぎる。何かを隠しているのではないかと当然疑ってしまう。
報告書は、「重要な知見の一つとして参考とする」と位置づけられているが、そんな行政の対応を納得できるはずがない。
-原子力規制行政は混乱している。今後、どのようにすべきか。
原子力規制委員会を作ったときは混乱状態の中で、できた組織に政治が数多くの課題を丸投げした面があると思う。いったんできた組織、ルールの変更は難しい面がある。ただし今の状況を変えなければ、問題のある行政を認めてしまうということになる。引き続きしっかり声を挙げていきたい。
(取材・構成 石井孝明 ジャーナリスト)
(このインタビューはエネルギーフォーラム12月号に掲載したものを転載した。許諾いただいた関係者の皆さまに感謝を申し上げる。)
(2015年12月21日掲載)
関連記事
-
混迷のスリランカ スリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が軍用機で国外逃亡したというニュースが7月13日に流れた。 スリランカではここ数か月、電気も燃料も食料も途絶え、5月以来54.6%のインフレ、中でも食糧価格が80
-
3月上旬に英国、ベルギー、フランスを訪問し、エネルギー・温暖化関連の専門家と意見交換する機会があった。コロナもあり、久しぶりの欧州訪問であり、やはりオンライン会議よりも対面の方が皮膚感覚で現地の状況が感じられる。 ウクラ
-
政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、「2030年CO2排出46%削減」という目標を決めましたが、それにはたくさんお金がかかります。なぜこんな目標を決めたんでしょうか。 Q1. カーボンニュートラルって何です
-
経済産業省は、電力の全面自由化と発送電分離を行なう方針を示した。これ自体は今に始まったことではなく、1990年代に通産省が電力自由化を始めたときの最終目標だった。2003年の第3次制度改革では卸電力取引市場が創設されるとともに、50kW以上の高圧需要家について小売り自由化が行なわれ、その次のステップとして全面自由化が想定されていた。しかし2008年の第4次制度改革では低圧(小口)の自由化は見送られ、発送電分離にも電気事業連合会が強く抵抗し、立ち消えになってしまった。
-
地球温暖化問題は、原発事故以来の日本では、エネルギー政策の中で忘れられてしまったかのように見える。2008年から09年ごろの世界に広がった過剰な関心も一服している。
-
「トンデモ本」というのを、ご存じだろうか。著者の思い込み、無知などによる、とんでもない話を書いた本の呼び方だ。「日本トンデモ本大賞」というものもあり、20年前の第1回は、「ノストラダムス本」が受賞している。当時、かなりの人が1999年7月に人類は滅亡するという、このトンデモないこじつけの予言を信じていた。2011年は大川隆法氏の『宇宙人との対話』が選定されている。
-
4月30日に、筆者もメンバーとして参加する約束草案検討ワーキングにおいて、日本の温暖化目標の要綱が示され、大筋で了承された。
-
日本政府はどの省庁も「気候変動のせいで災害が激甚化・頻発化している」と公式文書に描いている。だから対策のために予算ください、という訳だ。 表1を見ると、内閣府、内閣官房、環境省、国土交通省、農林水産省、林野庁とみな「激甚
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














