最終処分場の問題はビジネスライクに考えよう

2015年09月28日 12:00
アバター画像
アゴラ研究所所長

今月の14日から15日にかけて、青森県六ヶ所村の再処理施設などを見学し、関係者の話を聞いた。大筋は今までと同じで、GEPRで元NUMO(原子力発電環境整備機構)の河田東海夫氏も書いているように

  • 高速増殖炉の実用化する見通しはない
  • 再処理のコストは直接処分より約1円/kWh高い
  • そのメリットは廃棄物の体積を小さくすることだ

つまり経済的に考えると、今まで再処理工場などに投資された約3兆円を無視すると、核燃料サイクルのキャッシュフローはマイナスだということである。この1円/kWhというコストは計画どおり原発が稼働した場合の話で、原発が減ると単価はもっと高くなる。今はプルトニウムをMOX燃料に加工して消費しているが、この単価は普通のウラン燃料の2倍であり、わざわざ再処理して高価な燃料をつくる意味はない。

ほぼ唯一のメリットは、プルトニウムをガラス固化して体積を減らせば最終処分場の面積が減らせるということだが、これも実際には大したメリットではない。物理的には、最終処分場に適した空き地があるからだ。他ならぬ六ヶ所村である。

むつ小川原は、かつて石油コンビナートを建設するために造成されたが、それが挫折したまま放置され、図のように再処理工場に使われているのはごく一部で、今でも約250km2が空いている。これは大阪市とほぼ同じ面積で、使用ずみ核燃料を300年分以上、収容できる。再処理工場を建設するとき、地盤などの問題はすべてクリアしたので、使用ずみ核燃料を地層処分するには適している。これは関係者もすべて認める事実だ。

ではなぜNUMOの最終処分場選びが難航し、今度は国が直接やることになるなど、この問題が迷走しているのか。それは国と青森県との間で六ヶ所村を最終処分場にしないという確認書を歴代の知事とかわしたからだ。民主党政権でも、2012年8月22日に枝野経産相が三村知事に対して「青森県に最終処分場をお願いすることはない」と確認した。

これには複雑な経緯があり、かつて激しい反対運動に対して「六ヶ所村は工場であって核のゴミ捨て場ではない」といって住民を説得した経緯もあるらしい。この約束には法的拘束力はないが、地元の了解なしに国が方針を変更することはできないだろう。

しかし再処理して核兵器の材料になりうるプルトニウムをわざわざつくるのは、核拡散のリスクもある。今でも日本は45トン(原爆5000発以上)のプルトニウムを保有しているが、2018年には日米原子力協定の期限が切れる。アメリカは、プルトニウムを何に使うのか、追及してくるだろう。どうせ捨てるなら、使用ずみ核燃料のまま六ヶ所村に埋めればいいのだ。

これに対する反論としては、河田氏のように「核燃料のエネルギーの1%しか使わないまま捨てるのはもったいない」という意見があるが、それならむつ市などにある中間貯蔵所を増やし、キャスクに入れたまま半永久的に貯蔵すればいい。遠い将来、プルトニウムを使う技術がもし実用化すれば、また使うことも可能だ。

いずれにせよ「膨大なコストをかけて再処理工場をつくったのだから使わないともったいない」というサンクコストの錯覚を捨てれば、問題は単純である。ただこれまでの経緯もあるので、これは電力会社というより国の判断だろう。必要なら、安倍首相が青森県に出向いて知事を説得してもいいのではないか。

キャッシュフローが数兆円のマイナスになるプロジェクトは、資本主義の社会ではありえない。これは国家事業ではなく、コストは電力会社が(そして最終的には電力利用者が)負担するので、ビジネスライクに考えてはどうだろうか。

(2015年9月28日掲載)

This page as PDF

関連記事

  • nature.com
    nature.com 4月3日公開。英語題「Impacts of nuclear plant shutdown on coal-fired power generation and infant health in the Tennessee Valley in the 1980s」石炭火力発電へとシフトした結果、粒子汚染が増加し、影響を受けた場所のほとんどで乳児の健康が損なわれた可能性があることから、公衆衛生に対する悪影響が示唆されている。
  • イタリアがSMRで原子力回帰 それはアカンでしょ! イタリアがメローニ首相の主導のもとに原子力に回帰する方向だという。今年5月に、下院で原発活用の動議が可決された。 世界で最初の原子炉を作ったのはイタリア出身のノーベル物
  • 原発事故の起こった福島で、機会あればさまざまな形で原子力と放射線についいて説明しています。原子力にかかわってきたものの責務であると考えるためです。除染をめぐる質問で、長期目標に設定された年間追加被ばくの1mSv (ミリシーベルト)が正しいのかということです。
  • 福島第一原発事故から3年近くたち、科学的事実はおおむね明らかになった。UNSCEARに代表されるように、「差し迫った健康リスクはない」というのがほぼ一致した結論だが、いまだに「原発ゼロ」が政治的な争点になる。この最大の原因は原子力を悪役に仕立てようとする政治団体やメディアにあるが、それを受け入れる恐怖感が人々にあることも事実だ。
  • 政策家の石川和男さんが主宰する霞が関政策総研のネット放送に、菅直人元首相が登場した。
  • 高速増殖炉もんじゅの先行きが議論されています。原子力研究者などが集まった原子力国民会議が、「もんじゅ、再生に向けた提言」をまとめている。
  • スマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO(ゴー)」。関係なさそうな話だが、原子力やエネルギーインフラの安全についての懸念を引き起こす出来事が、このゲームによって発生している。
  • 「40年問題」という深刻な論点が存在する。原子力発電所の運転期間を原則として40年に制限するという新たな炉規制法の規定のことだ。その条文は以下のとおりだが、原子力発電所の運転は、使用前検査に合格した日から原則として40年とし、原子力規制委員会の認可を得たときに限って、20年を越えない期間で運転延長できるとするものである。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑