今週のアップデート - 電力価格上昇と経済(2014年8月4日)
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
今週のアップデート
池田信夫アゴラ研究所所長の論考です。日本経済のあらゆる経済指標が下向きになっています。70年代の経済事情と比べながら、それはエネルギー価格の上昇、原発停止など、「供給制約」が一因という指摘です。エネルギーをめぐる、経済への影響の分析が、なかなか行われていません。
2) 原発再稼働すれば、電気料金は下がる?―否、原発再稼働しなければ、電気料金はもっと上がる
国際環境経済研究所の澤昭裕所長の論考です。電力料金の算定方式が震災後、これまでの1年から3年の経営計画を見込んで計算されるようになりました。その結果、実際に行われていない原発の再稼動を織り込んで、電力料金が検討されています。実際に原発は動かず、電力会社が、火力発電の増加分のコスト増をぜんぶ受け止め、経営危機に陥っています。専門的な指摘ですが、電力料金上昇で、国民全体が影響を受ける深刻な問題です。
3) 欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(2)競争力への懸念
有馬純日本貿易振興機構ロンドン事務所長の論考です。環境、気候変動重視で動いてきた欧州の政策は、コスト増ということで産業界に負担を強いています。それを見直そうという動きが広がっています。
2)と3)の原稿は、国際環境経済研究所からご提供いただきました。
今週のリンク
アゴラ研究所の池田信夫所長の論考。ニューズウィーク日本版7月30日記事。北電の電力再値上げ申請を分析。どの電力会社も、原発の停止で経営危機に直面し、値上げに追い込まれると指摘しています。
日経ビジネスオンライン7月28日記事。原発停止で電力料金の値上げが続き、北海道で最大で6 割など、電力料金の上昇の可能性が出ています。日本の産業にどのような負担を与えるかの分析記事です。
NHK7月31日報道。北海道電力が31日、家庭用の電力料金の再値上げを申請しました。原発の停止などの影響で、採算が悪化しているためです。昨年9月に7%の値上げをしていました。国会申請では今年10月から17%の上昇を見込んでいます。同社は経営危機に直面し、北海道経済への悪影響も懸念されます。
米経済誌フォーブスウェブ版。7月29日記事。原題は「Japan’s Nuclear Roadmap To Economic Destruction」日本の原子力規制委員会の行動を批判しています。同委員会の事業者との対話不足、原発の基準審査の遅れ、さらに活断層審査で原子炉を廃炉に追い込む行動は、経済的な損害を拡大すると懸念を述べています。筆者のジェームス・コンカ氏は米国のエネルギーコンサルタントです。海外から、日本のエネルギー政策の混乱を指摘する意見が多数出ています。
福井新聞7月31日記事。自民党の電力安定推進議員連盟が、政府に申し入れをしました。早急な再稼働、審査の適正な実施を求めています。規制委員会にも提案するそうです。エネルギー・原子力政策には、その見直しを求める声も強まっています。一方で、原発の利用に懐疑的な声も根強くなっています。

関連記事
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
新潟県知事選挙では、原発再稼動が最大の争点になっているが、原発の運転を許可する権限は知事にはない。こういう問題をNIMBY(Not In My Back Yard)と呼ぶ。公共的に必要な施設でも「うちの裏庭にはつくるな」
-
24日、ロシアがついにウクライナに侵攻した。深刻化する欧州エネルギー危機が更に悪化することは確実であろう。とりわけ欧州経済の屋台骨であるドイツは極めて苦しい立場になると思われる。しかしドイツの苦境は自ら蒔いた種であるとも
-
「もしトランプ」が大統領になったら、エネルギー環境政策がどうなるか、これははっきりしている。トランプ大統領のホームページに動画が公開されている。 全47本のうち3本がエネルギー環境に関することだから、トランプ政権はこの問
-
このたび「エネルギードミナンス:強く豊かな日本のためのエネルギー政策(非政府の有志による第 7次エネルギー基本計画)」を発表しました(報告書全文、150ページ)。 杉山大志と野村浩二が全体を編集し、岡芳明、岡野邦彦、加藤
-
既にお知らせした「非政府エネルギー基本計画」の11項目の提言について、3回にわたって掲載する。今回は第3回目。 (前回:非政府エネ基本計画②:太陽光とEVは解答ではない) なお報告書の正式名称は「エネルギードミナンス:強
-
きのうの日本記者クラブの討論会は、意外に話が噛み合っていた。議論の焦点は本命とされる河野太郎氏の政策だった。 第一は彼の提案した最低保障年金が民主党政権の時代に葬られたものだという点だが、これについての岸田氏の突っ込みは
-
自民党萩生田光一政調会長の発言が猛批判を受けています。 トリガー条項、税調で議論しないことを確認 自公国3党協議(2023年11月30日付毎日新聞) 「今こういう制度をやっているのは日本ぐらいだ。脱炭素などを考えれば、あ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間