今週のアップデート — 原発事故3年、福島の現状は?(2014年3月10日)
アゴラ研究所の運営するエネルギー・環境問題のバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
東日本大震災から3月11日で3年が経過します。犠牲者の方のご冥福をお祈りします。また震災によって引き起こされた福島第一原発事故の収束を願い、原子力災害の被災者の方にお見舞いを申し上げます。今回は、原発事故から3年にちなんだ記事を揃えました。
今週のアップデート
震災と原子力災害に直面した福島県南相馬市の復興に努力する地域リーダーの箱崎亮三さんへのインタビュー記事です。さまざまな問題が同時に進行しています。ジャーナリストで、GEPRの編集を担当する石井孝明の寄稿です。
政府の避難指示によって13万人の避難が続いています。地域で区切る政府のやり方は、避難指示の出た地域の時間を止め、復興を遅らせています。福島の人々の声を、上記石井がまとめました。
3)「専門家が自らの役割の認識を不足」学会報告【原発事故3年】
日本原子力学会が事故調査報告をまとめました。専門家の責務の認識が不足していたことを、強調しています。この反省を、今後の安全のために活かしてほしいです。
池田信夫アゴラ研究所所長のコラムです。原子力における健康リスクを他のエネルギー源との比較で示しています。
今週のリンク
英紙ガーディアンの3月9日の科学記事。原題は「Fukushima’s children at centre of debate over rates of thyroid cancer」。健康被害の可能性は少ないのに、その中で、「えせ科学者が普通の科学者より大きな声で話し、福島に迷惑を与えている」と、英国の科学者の痛烈な批判コメントを掲載しています。
2)揺れるウクライナ:「ガス紛争」再燃も ロシア、輸出停止に言及 東欧諸国へ打撃深刻
毎日新聞3月9日記事。政変とロシア軍のクリミア半島への展開によって、ウクライナ情勢が緊迫しています。天然ガス産出国のロシアは、無資源国のウクライナにガスを供給。またそこを通るパイプラインを通じて、欧州にガスを売り、重要な収入源にしています。このガスを外交交渉の武器にするでしょう。これは天然ガス価格の高騰をもたらし、日本に影響を与えかねません。
3)クリミア・ウクライナ情勢を理解するキーワード「サウス・ストリーム」とは何か
ニュース解説のKousyoublogのまとめ記事。ウクライナ周辺のガスパイプライン網を解説。欧州と同国はエネルギー供給での脱ロシアを模索していますが、なかなか実現できないようです。
4)チェルノブイリの移住基準は、外部被ばく線量5 mSv/年ではない
産業総合研究所フェローの中西準子博士のブログです。チェルノブイリでは5mSvで強制移住が行われたという情報が日本で流れましたが、それは誤りだそうです。事故直後に「30キロ圏内は避難」という距離による移住勧告の後で、2年御再編されて年間被ばく量39ミリシーベルトでの移住が求められたそうです。5ミリシーベルトは、移住を勧告する水準ではありませんでした。
読売新聞九州版、3月6日記事。原発は原子力規制委員会の新基準の適合審査を受けているために止まっています。その中で九州電力川内原発(鹿児島県)の審査が早く終わりそうなことを各メディアが伝えています。次は政治の決断が必要です。

関連記事
-
福島原発事故をめぐり、報告書が出ています。政府、国会、民間の独立調査委員会、経営コンサルトの大前研一氏、東京電力などが作成しました。これらを東京工業大学助教の澤田哲生氏が分析しました。
-
トランプ政権の誕生で、バイデン政権が推進してきたグリーンディール(米国では脱炭素のことをこう呼ぶ)は猛攻撃を受けることになる。 トランプ大統領だけではなく、共和党は総意として、莫大な費用がかかり効果も殆ど無いとして、グリ
-
昨年9月1日に北海道電力と東北電力の電力料金値上げが実施された。これで、12年からの一連の電力値上げ申請に基づく料金値上げが全て出そろったことになる。下表にまとめて示すが、認可された値上げ率は各電力会社の原発比率等の差により、家庭等が対象の規制部門で6・23%から9・75%の範囲に、また、工場やオフィスビルを対象とする自由化部門で11・0%から17・26%である。
-
「生物多様性オフセット」COP15で注目 懸念も: 日本経済新聞 生物多様性オフセットは、別名「バイオクレジット」としても知られる。開発で失われる生物多様性を別の場所で再生・復元し、生態系への負の影響を相殺しようとする試
-
著者はIPCCの統括執筆責任者なので、また「気候変動で地球が滅びる」という類の終末論かと思う人が多いだろうが、中身は冷静だ。
-
前回に続き、米国マンハッタン研究所の公開論文「エネルギー転換は幻想だ」において、マーク・ミルズが分かり易い図を発表しているので簡単に紹介しよう。 どの図も独自データではなく国際機関などの公開の文献に基づいている。 205
-
東京電力福島第一原子力発電所の1号機から4号機においては東日本大震災により、①外部電源および非常用電源が全て失われたこと、②炉心の燃料の冷却および除熱ができなくなったことが大きな要因となり、燃料が損傷し、その結果として放射性物質が外部に放出され、周辺に甚大な影響を与える事態に至った。
-
イタリアのトリノで4月28日~30日にG7気候・エネルギー・環境大臣会合が開催され、共同声明を採択した。 最近のG7会合は、実現可能性がない1.5℃目標を前提に現実から遊離した議論を展開する傾向が強いが、トリノの大臣会合
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間