今週のアップデート — 原子力をめぐる恐怖感の分析(2013年10月21日)
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
今週のアップデート
1)「原子力が環境、そして世界経済にも最適な理想的エネルギー源 ― 恐怖、無知、盲目的規制のみが立ち塞がる」
オックスフォード大学のウェイド・アリソン教授はGEPRに何度も、放射能リスクと原子力をめぐるコラムを提供いただいています。英国の専門誌のコラムを転載します。過剰な規制が、問題を混乱させているという指摘を分かりやすくまとめました。
2)映画「パンドラの約束」(上)【改訂】— 米環境派、原子力否定から容認への軌跡
3)映画「パンドラの約束」(下)【改訂】— 賛成、反対の二分論の克服を
米国で原子力問題を取り上げたドキュメンタリー映画「パンドラの約束」の報告です。筆者であるGEPRの編集担当の石井孝明は、原子力への一方的な評価に多少戸惑う面があったものの、質の高い映画と評価。原子力問題で否定的な情報しか流れない現在の日本では、多くの人が見るべきと、考えました。来春、日本で一般向けに公開します。以前、在米エネルギー研究者の取材で書いた原稿を改訂しました。
4)エネルギー政策の混迷をもたらしている地球温暖化対策(下)—「低炭素社会」追求への疑問
提携する国際環境経済研究所(IEEI)に掲載された、久保田宏東工大名誉教授の論考を転載しました。低炭素化を追求することが、コストなどの問題を生みかねないことを警告しています。
今週のリンク
1) 福島と日本の政治
ニューヨークタイムズ10月15日論説記事。原題は「Fukushima Politics」。小泉純一郎元首相がさまざまな講演で「原発ゼロ」を唱えるようになりました。それを受けて、同紙は日本でこれまでなかった原子力とエネルギーをめぐる議論を深めるべきと、主張しました。ただし実際のところ日本では議論をしないというより、それが噴出して専門家の意見がかき消され、混乱した状況にあると言えます。
トムソン・ロイター日本版の10月9日コラム。筆者は同社記者の浜田健太郎氏。福島原発事故を起こした東電は、社会に発信する際に、必ず謝罪をします。確かに同社は批判をされるべきであるものの、謝罪で状況が変わるわけではないと指摘。その上で東電が一方的に負担を続ける処理スキームが変わることが必要という意見を述べています。
3)インタビュー:東電、発電所売却し廃炉費用に=橘川武郎教授
トムソン・ロイター日本版、10月17日コラム。一橋大学の橘川教授のインタビュー。東電の処理が問題になっています。水俣病を起こしたチッソが会社存続をしながら、支払いを続けた例を参考に、負担の上で持続可能な形で賠償を続けられる仕組みづくりを主張しています。
NHK10月17日記事。一方で、安倍首相は10月から始まった国会で、会社更生法など東京電力の破綻処理を提案した野党の質問に対して、「東電は民間企業として対策を実施すべき」と答えました。「国が前面に出る」と表現しましたが、その内容はあいまいです。
ウォール・ストリート・ジャーナル10月18日記事。英国が国内の原子力発電の建設で、中国資本の参加を認めました。米国が自国の基幹産業に、中国が関わることを警戒する中で、注目すべき動きです。英語版「U.K. Invites Chinese Nuclear Investment」
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政府のエネルギー・環境会議による「革新的エネルギー・環境戦略」(以下では「戦略」)が決定された。通常はこれに従って関連法案が国会に提出され、新しい政策ができるのだが、今回は民主党政権が残り少なくなっているため、これがどの程度、法案として実現するのかはわからない。2030年代までのエネルギー政策という長期の問題を1年足らずの議論で、政権末期に駆け込みで決めるのも不可解だ。
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