今週のアップデート — 電力自由化、残された論点「金融」(2013年7月16日)

2013年07月16日 14:00

今週のアップデート

1)金融界の電気事業制度改革に対する懸念
 
著名なエネルギーアナリストで、電力システム改革専門委員会の委員である伊藤敏憲氏の論考です。電力自由化をめぐる議論が広がっています。その中で、ほとんど語られていないのが、電力会社に対する金融のかかわりです。これまで国の保証の下で金融の支援がうながされ、原子力、電力の設備建設が行われてきました。ところが、その優遇措置の行方が電力自由化の議論で、曖昧になっています。この分野からの議論が必要です。提携する国際環境経済研究所(IEEI)からの転載です。

2)「電力システム改革」を改革すべし!(その2)

元経産省の官僚である石川和男氏の論考です。3回掲載の第2回です。電力自由化が行われなかったゆえに、電力会社間の一体的な運営、また回復が遅れたという指摘について疑問を示しています。

3)日本の強み、「省エネ」をなぜ活かせないのか

GEPRの編集担当で環境ジャーナリストの石井孝明の論考。重要なのに、エネルギーで注目されない省エネという論点を取り上げ、その必要性を訴えています。

今週のリンク

1) 参院選 原発再稼動、乏しい論戦

河北新報の7月15日記事。原発政策をめぐる参議院選挙の論点整理と総括記事です。選挙で各党が取り上げているものの、それほど議論が深まっていないことを示しています。なお原発について、維持、再稼動を明確にしているのは自民党だけです。

2)ニューヨーク大停電。数千人が地下鉄に閉じ込められ、略奪と暴動が発生(過去何があった?)(英語)

ニューヨークタイムズのアーカイブ。2013年7月15日記事。25年前の1977年7月15日、ニューヨーク市全域が停電、一部地域は復旧まで25時間かかりました。日本では2011年震災直後の関東地区の計画停電などの社会混乱は記憶に新しいところです。エネルギーは私たちの生活の根幹をつくります。

3)「死の淵を見た男—吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」の著者、門田隆将氏の後援から(再掲載)

原発事故当時、東京電力の福島第1原発所長だった、吉田昌郎氏が7月9日に亡くなりました。ご冥福をお祈りします。GEPRでは、吉田氏にインタビューしたジャーナリスト門田隆将氏の講演を掲載しています。

4)菅直人氏の見苦しい嘘

池田信夫アゴラ研究所所長のコラム。菅直人氏が、吉田昌郎氏の死去に伴って、海水注入をめぐってツイッターで大量に情報を発信しています。原発事故の際に海水注入を指示したのは「自分ではない」と。その発言には疑念があります。

5)中国が核燃料工場建設を中止、抗議デモ受け

ロイター通信、7月15日記事。広東省に建設予定の各燃料工場の設置が、住民の反対で一時中止になりました。今後どのようになるかは分かりません。強権的な政策を進めてきた中国政府が原子力問題では、住民の意見を取り上げる可能性が出てきました。

 

 

This page as PDF

関連記事

  • 今回の大停電では、マスコミの劣化が激しい。ワイドショーは「泊原発で外部電源が喪失した!」と騒いでいるが、これは単なる停電のことだ。泊が運転していれば、もともと外部電源は必要ない。泊は緊急停止すると断定している記事もあるが
  • 「口では福島支援と言いながらちっとも支援していない」。原子力規制委員会の田中俊一委員長は9月11日の記者会見で、福島第一原発事故の汚染水漏れで福島県や近県の水産物を敬遠する動きが国内外で強まっていることに不満を示した。
  • 先日、「国際貿易投資ガバナンスの今後」と題するラウンドテーブルに出席する機会があった。出席者の中には元欧州委員会貿易担当委員や、元USTR代表、WTO事務局次長、ジュネーブのWTO担当大使、マルチ貿易交渉関連のシンクタンク等が含まれ、WTOドーハラウンド関係者、いわば「通商交渉部族」が大半である。
  • 小泉・細川“原発愉快犯”のせいで東京都知事選は、世間の関心を高めた。マスコミにとって重要だったのはいかに公平に広く情報を提供するかだが、はっきりしたのは脱原発新聞の視野の狭さと思考の浅薄さ。都知事選だというのに脱原発に集中した。こんなマスコミで日本の将来は大丈夫かという不安が見えた。佐伯啓思・京大教授は1月27日付産経新聞朝刊のコラムで「原発問題争点にならず」と題して次のように書いた。
  • 先進国では、気候変動対策の一つとして運輸部門の脱炭素化が叫ばれ、自動車業界を中心として様々な取り組みが行われている。我が国でも2020年10月、「2050年カーボンニュートラル」宣言の中で、2035年以降の新車販売は電気
  • 福島原発事故以降、「御用学者」という言葉がはやった。バズワード(意味の曖昧なイメージの強い言葉)だが、「政府べったりで金と権勢欲のために人々を苦しめる悪徳学者」という意味らしい。今は消えたが2012年ごろまで「御用学者リスト」(写真)がネット上にあった。卑劣にも、発表者は匿名で名前を羅列した。それを引用し攻撃を加える幼稚な輩もいた。
  • 環境教育とは、決して「環境運動家になるよう洗脳する教育」ではなく、「データをきちんと読んで自分で考える能力をつける教育」であるべきです。 その思いを込めて、「15歳からの地球温暖化」を刊行しました。1つの項目あたり見開き
  • 3・11の福島原子力事故は、日本のみならず世界の原子力市場に多大なる影響を及ぼした。日本では、原子力安全のみならず原子力行政そのものへの信頼が失墜した。原子力に従事してきた専門家として、また政府の一員として、深く反省するとともに、被災者・避難を余儀なくされている方たちに深くお詫び申し上げたい。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑