今週のアップデート — 原子力、チェルノブイリの現状(2013年5月13日)
今週のアップデート
1)非科学的な原子力規制委員会の行動を憂う — 不公正を許してはならない
資産運用会社の経営者でありながら、原子力行政の「非科学的」「不公正」な状況を批判してきた森本紀行HCアセットマネジメント社長に寄稿をいただきました。原子力規制委員会は、危険性の許容範囲の議論をするのではなく、不可能な「絶対安全」を事業者に求める行政を行っています。そして政治がこの暴走を放置しています。この現状を考える材料として、この論考は公平かつ適切な論点を提供しています。
2)チェルノブイリ博物館で福島展を開催 — 2つの事故の教訓を未来への希望に変えるために
キエフ在住の大阪大学大学院生の研究者である宮腰由希子さんの寄稿です。1986年に起こったウクライナのチェルノブイリ原発事故は、2011年の福島事故と同じように多くの人を苦しめ、地域社会を混乱させました。そこにあるチェルノブイリ博物館は6月から、福島展を開催します。ちなみに現地の方は、チェルノブイリと比較して福島で2年も被災者が帰れない現状を「おかしい」と考えているようです。
3)まだない未来? — ジュネーブ・モーターショーから垣間見えたもの
提携する国際環境経済研究所(IEEI)サイトからの転載です。趣向を変えて自動車を取り上げた小論を紹介します。実は自動車は日本全体のエネルギー使用量(一次エネルギー総供給)で見ると、自動車は4割弱を使っています。この省エネが、エネルギーでは重要な課題です。今「エコ」は当たり前で、それをうまく自動車の製造・販売の構想に織り込むことが課題になっているようです。
今週のリンク
プレジデントオンライン5月13日記事。原子力工学の博士号を持つ著名経営コンサルタントの大前研一氏が、原子力の分離、そして現在の12電力体制(Jパワー、日本原電を含む)を4社に再編してはどうかと提言しています。ただし、東電、また原子力専業会社の形には言及していません。GEPRでも、政策家石川和男氏による「電力、全面自由化・発送電分離より大合併再編が必要 ― 原発の将来を見据えて」という記事を提供しています。今後検討が視野に入る問題です。
2)東電は黒字化するか、独自試算の結果は–原発再稼働は難しく経常赤字が必至
東洋経済ONLINE5月10日記事。同社の記者による取材と試算ですが、新潟県柏崎刈羽原発が止まると、同社の今期の収支均衡化は値上げ、さらに景気回復による需要増のもたらす増収を合わせても不可能と見込んでいます。東京電力の経営破綻は、国民負担を増やすことになります。
朝日新聞の5月13日記事。ネットでは一部会員向け。日本原子力研究開発機構の運営する高速増殖炉「もんじゅ」の運用がまた遅れます。もんじゅは原子力発電によって生じるプルトニウムを使う目的でも建設されており、核燃料サイクルの進捗遅れをもたらします。記事は確報ではないものの、同機構の運営の責任が問われるべきでしょう。
共同通信5月11日配信。自民党に7月の参議院選挙の公約、マニフェスト案を各メディアが伝えています。原発について「安全性が確認されたものから再稼動」という従来案の延長の政策を行うようです。しかし電力改革、原子力規制委員会のおかしな政策というエネルギー政策の重要論点については、選挙で主張するのか、まだ明確ではありません。
内閣府原子力委員会5月10日付メールマガジン。鈴木達治郎委員長代理の寄稿です。同委員会は国内有識者の意見を聞いています。原子力発電の比率、核燃料サイクルの意義、プルトニウム問題です。同委員会はこの立案をになう機関です。核燃料サイクルについて、識者の間では「継続」の意見が多いことがうかがえます。しかし、それはコストの兼ね合いで考えなければならないでしょう。2030年までに15兆円がかかると見込まれています。
関連記事
-
よく日本では「トランプ大統領が変人なので科学を無視して気候変動を否定するのだ」という調子で報道されるが、これは全く違う。 米国共和党は、総意として、「気候危機説」をでっちあげだとして否定しているのだ。 そしてこれは「科学
-
1.太陽光発電業界が震撼したパブリックコメント 7月6日、太陽光発電業界に動揺が走った。 経済産業省が固定価格買取制度(FIT)に関する規則改正案のパブリックコメントを始めたのだが、この内容が非常に過激なものだった。今回
-
海は人間にとって身近でありながら、他方最も未知な存在とも言える。その海は未知が故に多くの可能性を秘めており、食料庫として利用しているのみならず、たくさんのエネルギー資源が存在している。
-
2023年は、気候学にとって特別な年であった。世界各地の地上気象観測地点で、過去に比べて年平均気温が大幅に上昇したからである。 ところが残念なことに、科学者はこの異常昇温を事前に予測することができなかった。 CO2などに
-
日本政府はCO2を2030年までに46%減、2050年までにゼロにするとしている。 前回、このような極端なCO2削減策が、太平洋ベルト地帯の製造業を直撃することを書いた。 今回は、特にどの県の経済が危機に瀕しているかを示
-
「持続可能な発展(Sustainable Development)」という言葉が広く知られるようになったのは、温暖化問題を通してだろう。持続可能とは、簡単に言うと、将来世代が、我々が享受している生活水準と少なくとも同レベル以上を享受できることと解釈される。数字で表すと、一人当たり国内総生産(GDP)が同レベル以上になるということだ。
-
11月16日~24日までアゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29に参加してきた。本稿ではCOP29の結果と今後の課題について筆者の考えを述べたい。 COP29は資金COP 2023年のCOP28が「グローバルストッ
-
北海道大停電について「出力ではなく周波数が問題だ」というデマが流れているので、テクニカルな話だが、事故の経緯をくわしく見てみよう。苫東厚真の3基は一挙に止まったわけではなく、地震直後には1号機が動いていた。読売新聞による
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間