今週のアップデート — エネルギー予算の使い方は正しいか?(2013年2月18日)
今週のアップデート
1) 経済学者の八田達夫氏に寄稿をいただきました。
日本のエネルギーに対する政府による支援策は、原発や再生可能エネルギーの例から分かるように、補助金が多い形です。これはこれまで「ばらまき」に結びついてしまいました。八田氏はこれに疑問を示して、炭素税の有効性を論じています。炭素税はエネルギーの重要な論点である温暖化対策の効果に加え、新しい形の財源として各国で注目されています。
2)「東電「福島復興本社」に期待–地元の不信、不満を受け止めてほしい」
原子力の技術者からの一般投稿。この人は福島の復興、除染に関わってきました。加害者である東電の姿が見えないという、現地の被災者の声を伝えています。東電が本社の機能の一部を福島に移したことで、真の復興が続く期待を述べています。
3)「京都議定書の“終わりの終わり”–国連気候変動枠組み交渉の現場でみた限界点」
提携する国際環境経済研究所(IEEI)の主任研究員である竹内純子さんがドーハで昨年末に行われたCOP18の参加記録です。京都議定書体制が完全に壊れた事、そして見通せないものの、新しい動きの兆しについて述べています。
今週のリンク
1)「電力システム改革専門委員会報告書」
経済産業省の有識者会議の報告で、13年2月8日に公表されました。電力自由化について、2016年度までに小売り自由化、5−7年後に発送電分離をすることを実現させる工程を提言しています。
ただしそのメリット、デメリットの議論が丁寧に行われたかは疑問です。慎重な検証が国会、政府を通じて行われる事を期待します。
2)「アジアで原発新設100基 日韓ロ、受注競争が加速 2020年で50兆円市場」
日本経済新聞、2月15日記事。アジアの原発建設が急増しています。このビジネスチャンスがある限り、各国政府は原発を止めることはできないでしょう。ただし、リスクがこれまで以上に高まる現実も直視しなければなりません。
3)「原発再稼働、判断の客観性課題 原子力規制委人事が国会承認」
日本経済新聞2月16日記事。国会同意人事である原子力規制委員会の委員が承認されました。残念ながら、国会では委員を呼び、詳細にその見解を聞くという取り組みが行われませんでした。委員会の行動については、活断層認定をめぐる混乱など、合理性なく原発を止めていることに、電力業界から批判が出ていました。
電力中央研究所の研究者、杉山大志氏の論考。同研究所温暖化防止政策ホームページより。
省エネによって、逆にエネルギー消費が増えるという議論が、最近検エネルギー関係者の間で研究されるようになっています。「リバウンド効果」と言います。例えば、20世紀に蒸気機関から電力モーターに動力源が変った後で、エネルギー消費が急拡大しました。その動きを概説した文章です。
5)「東京電力福島復興本社ホームページ」
東京電力のホームページ。福島での同社の動きを伝えています。東電の言う通り「皆さまの苦しみを忘れない、そして必ずこの美しいふるさと福島を再生・復興させる」という誓いの通りのことをするのか。原子力事故の被害者をはじめ、あらゆる立場の人が注目しています。

関連記事
-
7月2日に掲載された杉山大志氏の記事で、ESG投資の旗を振っている欧米の大手金融機関が人権抑圧にはお構いなしに事業を進めていることを知り衝撃を受けました。企業のCSR/サステナビリティ担当者は必読です。 欧米金融機関が、
-
原発は「トイレのないマンション」とされてきました。使用済みの核燃料について放射能の点で無害化する方法が現時点ではないためです。この問題について「核燃料サイクル政策」で対応しようというのが、日本政府のこれまでの方針でした。ところが、福島第一原発事故の後で続く、エネルギーと原子力政策の見直しの中でこの政策も再検討が始まりました。
-
大阪市の松井市長が「福島の原発処理水を大阪に運んで流してもいい」と提案した。首長がこういう提案するのはいいが、福島第一原発にあるトリチウム(と結合した水)は57ミリリットル。それを海に流すために100万トンの水を大阪湾ま
-
途上国からの要求は年間1兆ドル(140兆円!)に跳ね上がった。 全部先進国が撒いた種だ。 ここのところ先進国の代表は何を言ってきたか。以下のバイデン大統領のCOP27でのスピーチが典型的なので紹介しよう: 米国では、西部
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
気候変動を気にしているのはエリートだけだ――英国のアンケート結果を紹介しよう。 調査した会社はIpsos MORIである。 問いは、「英国で今もっとも大事なことは何か?」というもの。コロナ、経済、Brexit、医療に続い
-
学術的知識の扱い方 学界の常識として、研究により獲得された学術的知識は、その創出、伝達、利用の3点での適切な扱いが望ましい。これは自然科学社会科学を問わず真理である。ところが、「脱炭素」や「地球温暖化」をめぐる動向では、
-
東京電力の福島復興本社が本年1月1日に設立された。ようやく福島原発事故の後始末に、東電自らが立ち上がった感があるが、あの事故から2年近くも経った後での体制強化であり、事故当事者の動きとしては、あまりに遅いようにも映る。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間