今週のアップデートー 使用済み核燃料をどのように処分すべきか(2012年10月9日)
今週のアップデート
1)原発は「トイレのないマンション」とされてきました。使用済みの核燃料について放射能の点で無害化する方法が現時点ではないためです。
この問題について「核燃料サイクル政策」で対応しようというのが、日本政府のこれまでの方針でした。ところが、福島第一原発事故の後で続く、エネルギーと原子力政策の見直しの中でこの政策も再検討が始まりました。
河田東海夫元原子力発電環境整備機構理事に「したたかに堅持すべき核燃料サイクル政策 — 歴史の蓄積、合理性、早急な「突然死」の危険」というコラムを寄稿いただきました。この政策について、堅持の立場から書かれたものです。
2)また原子力研究者の藤堂仁氏に、「放射性廃棄物の処分、解決の可能性−「地中処分」と「核種変換」の紹介」を寄稿いただきました。この問題について技術上の整理を行ったものです。
3)またGEPR編集部は「核燃料サイクルとは何かー期待と困難が併存、政治的問題に」という、問題を短くまとめた解説を提供します。
この問題については、原発批判の中で必ず登場します。しかし使用済み核燃料が存在する中で、原発についてどのような意見があろうと、この問題についての決断に参加しなければならなりません。
GEPRはこの問題について読者の皆さまの意見を募集します。連絡先は info@gepr.org です。
今週のリンク
1)「核燃料サイクルの選択肢について」。内閣府原子力委員会。今年6月に取りまとめた文章。燃料サイクルをどのように行うか、「全量再処理」「再処理と直接処分の併存」「直接処分」の3パターンについて見解をまとめ、国民の選択に委ねました。
同委員会は廃止を含めてあり方を再検討されることになっており、明確な方向を打ち出しませんでした。
2)「核燃料は「リサイクル」できる?」原子力教育を考える会。原子力に批判的な立場の学校教師によって書かれています。
3)「学術会議からの提言・核の廃棄物をどうするか」。大西隆日本学術会議会長。NHK解説委員室ブログ(番組「視点・論点」の文字起こし)日本学術会議が9月に公表した見解「高レベル放射性廃棄物の処分について」 について大西会長による解説です。問題の決定の困難さを紹介しています。
4)「核燃料サイクル「当面継続」−原発ゼロと矛盾 早くもほころび」。産経ビズ記事。政府の政策について、これを受け入れてきた青森県などとのほころびが生じていることを紹介しています。枝野幸男経産省は9月15日、青森県を訪問して政策の継続を説明しました。
5)資源エネルギー庁「原子力を巡る現状について・なぜ、日本は核燃料サイクルを進めるのか」(改訂中)。経産省・資源エネルギー庁の主張、議論がまとめられたページです。しかし、同ページは政府の見直しに合わせて、改訂中です。特に、核燃料サイクル政策を進めた場合のコストが「コスト試算」のページでまとめられています。
関連記事
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。 今週のアップデート 1)日本が保有するプルトニウムでは核武装はできない 元NUMO理事の河田東海夫氏の論考。日本の保有する48トン
-
スマートグリッドと呼ばれる、情報通信技術と結びついた新しい発送電網の構想が注目されています。東日本大震災と、それに伴う電力不足の中で、需要に応じた送電を、このシステムによって実施しようとしているのです。
-
9月5日、韓国の科学技術情報通信省は、東電福島第一原発サイトで増え続けている「トリチウム水」(放射性のトリチウムを含んだ処理水)の問題に関し、「隣国として、海洋放出の可能性とこれに伴う潜在的な環境への影響に深刻な憂慮があ
-
エジプトで開催されていたCOP27が終了した。報道を見ると、どれも「途上国を支援する基金が出来た」となっている。 COP27閉幕 “画期的合意” 被害の途上国支援の基金創設へ(NHK) けれども、事の重大さを全く分かって
-
前回お知らせした「非政府エネルギー基本計画」の11項目の提言について、3回にわたって掲載する。まずは第1回目。 (前回:強く豊かな日本のためのエネルギー基本計画案を提言する) なお報告書の正式名称は「エネルギードミナンス
-
NSのタイムラインに流れてきたので何気なく開いてみたら、たまたま先日指摘した日経エネルギーNextさんの特集の第2回でした。 こちらも残念かつ大変分かりにくい内容でしたので、読者諸兄が分かりやすいよう僭越ながら補足いたし
-
アゴラ研究所の運営するエネルギー調査機関の「GEPR」(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
「脱炭素社会」形成の難問 アポリアとは、複数の理論や議論のうちどれが正しいのかについて合意ができない状態を表わすギリシャ語であるが、英語(aporia)でもフランス語(aporie)でも使われている。ともに「行き詰り」と
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間