広島・長崎の原爆の被害者の追跡調査の第14報(英語)
放射線影響研究所による広島・長崎の原爆の被害者の調査で、米学術誌『Radiation Research誌の2012年3月号に掲載された。(英語版)(要約の日本語版)
この結果では、低線量被曝(100mSv以下)について、LNTモデル(低線量被曝でも、直線的にがんの発症が増加する)が、放射線のがん死亡への影響をよく説明しているとしています。具体的には、(1)線形モデル、(2)線形+二次モデル、(3)二次モデルを、同研究所の統計と比較して処理すると、1と2が妥当であるというもの。二次モデルとは、この場合にLNT仮説が成立しないとして、いき値(ある水準から増加する)などの考えを取り入れたもの。
同論文は、原爆被曝者ではLNT仮説が健康被害で当てはまることを、以前の被曝者への研究よりも強く示す。しかし、それは低線量の被曝でも即座に健康被害に結びつくことを示すものではなく、また仮説にすぎない。
仮にLNT仮説が成立したとしても、それは他の健康リスクと比べて、低線量被曝の場合にはかなり低いものだ。(100mSvの被曝で、全がんの発生量の増加の相対リスクは1.005)(GEPR記事「放射能のリスクを生活の中のリスクと比較する」)そして低線量被曝についてのこれまでの知見を大きく変えるものではない。(GEPR記事「放射線の健康影響 ― 重要な論文のリサーチ」)
同論文に、アゴラ研究所の池田信夫所長が解説を加えている。
関連記事
-
アゴラ研究所・GEPRはインターネット放送「言論アリーナ」を運営している。東日本大震災、そして福島第一原発事故から4年となる、3月11日に「なぜ正確な放射能情報が伝わらないのか-現地視察した専門家の提言」を放送した。
-
記者団の質問には6人の専門家からなる「国際専門家グループ」の副議長であるエイドリアン・シンパー博士が答えた。シンパー博士は英国原子力廃止措置機関の戦略技術担当取締役だ。
-
原発における多層構造の請負体制は日本独自のものであるが、原発導入が始まって以来続けられているには、それなりの理由がある。この体制は、電力会社、原子炉メーカー、工事会社、下請企業、作業者、さらには地元経済界にとって、それぞれ都合が良く、また居心地の良いものであったため、この体制は関係者に強く支持されてきた。
-
筆者は1960年代後半に大学院(機械工学専攻)を卒業し、重工業メーカーで約30年間にわたり原子力発電所の設計、開発、保守に携わってきた。2004年に第一線を退いてから原子力技術者OBの団体であるエネルギー問題に発言する会(通称:エネルギー会)に入会し、次世代層への技術伝承・人材育成、政策提言、マスコミ報道へ意見、雑誌などへ投稿、シンポジウムの開催など行なってきた。
-
改めて原子力損害賠償制度の目的に立ち返り、被害者の救済を十分に図りつつ原子力事業にまつわるリスクや不確実性を軽減し、事業を継続していくために必要な制度改革の論点について3つのカテゴリーに整理して抽出する。
-
太陽光発電と風力発電をはじめとする自然変動電源に関しては、発電のタイミングを人為的にコントロールすることができないため、電力の需要と供給のタイミングが必ずしも一致しない。そのためしばしば送配電網の需給調整力の枠を超えた発
-
奈良林教授が、専門家向けにまとめた報告。
-
波紋を呼んだ原田発言 先週、トリチウム水に関する韓国のイチャモン付けに対する批判を書かせていただいたところ、8千人を超えるたくさんの読者から「いいね!」を頂戴した。しかし、その批判文で、一つ重要な指摘をあえて書かずにおい
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間