今週のアップデート — 風評被害をどのように扱うべきか?(2012年4月9日)

2012年04月09日 09:00

今週のコラム

1)表面的に沈静化に向かいつつある放射能パニック問題。しかし、がれき受け入れ拒否の理由になるなど、今でも社会に悪影響を与えています。この考えはなぜ生まれるのか。社会学者の加藤晃生氏から「なぜ科学は放射能パニックを説得できないのか — 被害者・加害者になった同胞を救うために社会学的調査が必要」を寄稿いただきました。

加藤氏の論は社会学の流れを踏まえ、パニックを「科学的というよりは宗教的な恐怖」と推定します。しかしパニックに陥った人の実態がかなり不明確であるため、まず調査を試みたいとしています。

2)東京電力は、国が株を保有した形での経営再建が行われる方向です。しかし、次の経営トップが決まらず、先行きが不透明なままです。この理由は、東京電力が福島原発事故に関連するすべての損害を引き受ける形になっているためです。その中には「風評被害」というあいまいなものまで東京電力の責任として賠償の対象になっています。内閣府のエネルギー環境会議のコスト等検証委員会では風評被害も含めて原発のコストを算出しています。

これは正しいのでしょうか。GEPR編集部は「原発事故風評被害、誰が責任を負うべきか—東電に全額負担させる疑問」を提供します。発電における環境外部制の評価での国際基準では、このような風評などを当然コストに含んでいません。この疑問を示したコラムです。

3)GEPRはNPO法人の国際環境経済研究所と提携し、コンテンツを共有します。竹内純子主席研究員のコラム「架空の財布の紐は緩い—電気料金上昇の本当の影響を考える」を掲載します。

今週のニュース

東京電力は、国が株を保有した形での経営再建が行われる方向です。しかし、次の経営トップが決まらず、先行きが不透明なままです。
東電会長人事、なぜ難航? とTBSが状況をまとめています。

東電の経営陣の人事が決まらなければ、今後の再建計画も決められません。難事であり、引き受け手がいない状況です。

今週のリンク

コスト等検証委員会報告書(平成23年(2011年)12月19日)
内閣府国家戦略室のエネルギー環境会議がまとめた報告書です。しかし、数値の取り方が恣意的であり、国際的な算定基準を使っていないなど、各所で批判されています。

GEPRでも、今回のコラムに加えて、澤昭裕IEEI所長の国際環境経済研究所(IEEI)所長
のコラム「曲解だらけの電源コスト図made byコスト等検証委員会」 を紹介しました。

 

This page as PDF

関連記事

  • 1997年に開催された国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)で採択された京都議定書は、我が国の誇る古都の名前を冠していることもあり、強い思い入れを持っている方もいるだろう。先進国に拘束力ある排出削減義務を負わせた仕組みは、温暖化対策の第一歩としては非常に大きな意義があったと言える。しかし、採択から15年が経って世界経済の牽引役は先進国から新興国に代わり、国際政治の構造も様変わりした。今後世界全体での温室効果ガス排出削減はどのような枠組を志向していくべきなのか。京都議定書第1約束期間を振り返りつつ、今後の展望を考える。
  • そもそも原子力水素とは何か 原子力水素とは、原子力をエネルギー源として製造される水素のことをいう。2050カーボンニュートラル実現のためには運輸、産業、果ては発電においても水素を利用することがキーポイントなるといわれてい
  • 先週、アップルがEV開発を中止するというニュースが世界中を駆け巡りました。EVに関してはベンツも「30年EV専業化」戦略を転換するようです。国レベルでも2023年9月に英スナク首相がEV化を5年遅らせると発表しました。
  • 調達価格算定委員会で平成30年度以降の固定価格買取制度(FIT)の見直しに関する議論が始まった。今年は特に輸入材を利用したバイオマス発電に関する制度見直しが主要なテーマとなりそうだ。 議論のはじめにエネルギーミックスにお
  • 国連気候変動枠組み交渉の現場に参加するのは実に2 年ぶりであったが、残念なことに、そして驚くほど議論の内容に変化は見られなかった。COP18で、京都議定書は第2約束期間を8年として、欧州連合(EU)・豪などいくつかの国が参加を表明、2020年以降の新たな枠組みについてはその交渉テキストを15年までに固めることは決定した。
  • 以前も書いたが、北極のシロクマが増えていることは、最新の報告書でも再確認された(報告書、記事)。 今回の報告書では新しい知見もあった。 少なくとも2004年以降、ハドソン湾西部のホッキョクグマの数には統計的に有意な傾向が
  • 福島第一原発事故後、日本のエネルギー事情は根本的に変わりました。その一つが安定供給です。これまではスイッチをつければ電気は自由に使えましたが、これからは電力の不足が原発の停止によって恒常化する可能性があります。
  • 北朝鮮が核実験を行う意向を、1月28日現在で示しています。この実験内容について、東京工業大学の澤田哲生助教に解説いただきました。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑