進まないがれき処理、被災地では片付け進む — 現地リポート
進まないがれき処理

陸前高田市のがれきの仮置き場
岩手県・宮城県の「災害廃棄物」の量は、通常の11年分・19年分にも達しています。現地では、仮焼却施設をつくるなど、全力で処理をしていますが、それでも、なお大量の災害廃棄物が残っています。一日も早い東北復興のために、全国の力を貸してください。
これは環境省の広域処理情報サイトのトップページにあるメッセージ。宮城県と岩手県のがれきの総量は、環境省の推計量で2045万トン。政府は2014年3月末までに、がれき処理を終わらせる目標を掲げている。
残念ながら、がれき処理はなかなか進んでいない。2012年3月22日時点で受け入れたのは青森、山形、東京、静岡県島田市のみだ。
今年3月の中旬にGEPR編集部のメンバーが岩手県陸前高田市、宮城県石巻市を訪ねた。1年前の震災直後には道路と土地の境界がわからないほどのがれきが広大な土地を埋め尽くしていた。今では1年を経て道路上のがれきはほぼ撤去された。
津波でアスファルトごとえぐられ流された道路も、今では多くの部分で補修作業が完了。橋が流され通行止めだった国道も仮設の橋が架けかえられ、今では通行止めの道路もほとんどなくなった。
がれきはどこへいったのか。国(政府)の対応が遅いので、被災地の各自治体では、独自でがれきの処理プランを計画し、仮置き場に集めている。陸前高田市には海沿いに松が並ぶ高田松原という景勝地があった。これらの松は津波で流されるか、海水に浸かって枯れ、1本だけ残っている。ここが、国道と海岸の間の敷地ががれきの仮置き場になっている。

陸前高田市のがれきの仮置き場
がれき、分別再利用の取り組みも
石巻市でも復興は進む。日本製紙石巻工場の1年前と現在を比べると、散乱したがれきが片付けられている様子が分かる。この石巻工場の南側に石巻地区のがれきの仮置き場がある。

日本製紙の石巻工場の震災直後の様子と、今年3月時点の比較
石巻港には、大規模ながれき処理の敷地が設けられ、コンクリートや、木材、ゴムタイヤなど、種類ごとに分別され、処理がすでにはじまっていた。
石巻市のがれき。分別されて処分を待つ(Google Mapより)
宮城県は石巻近郊のリサイクルプランを2011年9月に策定した。分別しながら、がれき処理を行う。コンクリート生成過程での燃料などにも転用される。しかし半分は県外で処理しなければ、さばききれないと見込まれている。

土嚢の内容物として利用されるコンクリートがれき
実際の仮置き場をみると、コンクリートの残骸は、ここで大きさごとに大別され、大きいものは粉砕されていた。粉砕したものは、コンクリートのリサイクル工場に運ばれるほか、土嚢の内容物として使われ、その土嚢は道路の地盤や土手の基礎として役立てられていた。

石巻市の整地された道路と同一の長さにカットされ処理を待つ震災廃棄物の木材
がれきには木材も多かった。津波は防潮林や、山の斜面の樹木をなぎ倒したためだ。それらは太さや長さごとに分別され、きれいに整頓され、積上げられている。石巻の二次仮置き場衛星写真を見ると、可燃ゴミ、丸太、コンガラに区分けされて仮置きされている。将来はバイオマス発電所を建設する予定であると言う。
がれきの状況は被災地によってまちまちだ。今回訪問した2市は特に多く、石巻市の量は616万3000トン、陸前高田市は101万6000トンという膨大な量だ。現地だけでは明らかに処理できない。そして膨大な量を直接目にすると、圧倒されてしまう。
がれきを拒否する理由として、放射能汚染が広がるという主張がある。言うまでもないが福島第一原発から遠く離れた岩手、宮城でその可能性は少ない。ありえない恐怖に踊らされる前に、目前にあるがれき処理に全国で協力をすることが必要ではないだろうか。

関連記事
-
波紋を呼んだ原田発言 先週、トリチウム水に関する韓国のイチャモン付けに対する批判を書かせていただいたところ、8千人を超えるたくさんの読者から「いいね!」を頂戴した。しかし、その批判文で、一つ重要な指摘をあえて書かずにおい
-
小泉元首相の「原発ゼロ」のボルテージが、最近ますます上がっている。本書はそれをまとめたものだが、中身はそれなりの知識のあるゴーストライターが書いたらしく、事実無根のトンデモ本ではない。批判に対する反論も書かれていて、反原
-
福島原発事故後、民間の事故調査委員会(福島原発事故独立検証委員会)の委員長をなさった北澤宏一先生の書かれた著書『日本は再生可能エネルギー大国になりうるか』(ディスカバー・トゥエンティワン)(以下本書と略記、文献1)を手に取って、非常に大きな違和感を持ったのは私だけであろうか?
-
以前にも書いたことであるが、科学・技術が大きく進歩した現代社会の中で、特に科学・技術が強く関与する政策に意見を述べることは、簡単でない。その分野の基本的な知識が要るだけでなく、最新の情報を仕入れる「知識のアップデート」も
-
著名なエネルギーアナリストで、電力システム改革専門委員会の委員である伊藤敏憲氏の論考です。電力自由化をめぐる議論が広がっています。その中で、ほとんど語られていないのが、電力会社に対する金融のかかわりです。これまで国の保証の下で金融の支援がうながされ、原子力、電力の設備建設が行われてきました。ところが、その優遇措置の行方が電力自由化の議論で、曖昧になっています。
-
調達価格算定委員会で平成30年度以降の固定価格買取制度(FIT)の見直しに関する議論が始まった。今年は特に輸入材を利用したバイオマス発電に関する制度見直しが主要なテーマとなりそうだ。 議論のはじめにエネルギーミックスにお
-
「もしトランプ」が大統領になったら、エネルギー環境政策がどうなるか、これははっきりしている。トランプ大統領のホームページに動画が公開されている。 全47本のうち3本がエネルギー環境に関することだから、トランプ政権はこの問
-
チャーミー大島先生との巡り会い 大島教授に最初にお会いしたのは、彼が立命館大学教授になって数年、岩波の〝赤本〟『原発のコスト』をもって華々しく論壇に登壇した直後の頃だった。原発の反対・推進が相まみえるパネル討論会でのこと
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間