フェイスブックが温暖化問題を検閲する
アメリカでは地球温暖化も党派問題になっている。民主党系は「温暖化は深刻な脅威で、2050年CO2ゼロといった極端な温暖化対策が必要だ」とする。対して共和党系は「それほど深刻な問題ではなく、極端な対策は必要ない」とする。
大統領選ではフェイスブックなどのSNSが党派性をむき出しにして民主党支持に回ったことは記憶に新しい。
そしていま、フェイスブックは、温暖化についても「ファクトチェック」で党派性を強めている。
最近になって、共和党寄りの有力なウェブサイトであるブライトバートに掲載された記事に対して「ファクトチェック」が行われ、「この記事は信憑性が極めて低い」と格付けをされた(図1)。
このような格付けをされると、当該記事は検索に掛かりにくくなるなど、閲覧、拡散に事実上の制限がかかる。このような検閲手法は「シャドー・バン」と呼ばれている。
しかしながら、このファクトチェックは、きわめて杜撰である。
ブライトバートの記事は、研究機関GWPFの報告書を取材して書かれたものだ。この報告書は、政府機関等の過去の統計データをレビューしたものである。そこでは、ハリケーンの強度や頻度の増加は起きていないといったこと、そして人類は健康で長寿になり、マラリヤなどによる死亡は大幅に減ってきたこと、等を示している。
だが「ファクトチェック」ではこれに対して、「シミュレーション研究(イベントアトリビューションを含む)では災害は増えているという結果になるから、これを引用しないのはおかしい」、などと言っている。
もとより、報告書で過去の統計データをきちんと精査するという方針にしたことに、何の問題もない。シミュレーションは任意のパラメータ設定だらけであって、過去の統計データとは全然データの質が違う。
更に「ファクトチェック」では、マラリヤなどによる死亡が大幅に減ったのは確かだが、それは温暖化によるものではない、などと言っている。もとより GWPFの報告書は温暖化によるものだなどとは言っていない。まるで見当違いの批判をしている。
この「ファクトチェック」は延々と続くが、見ているとだんだん嫌になってくる。数人の研究者が、報告書をきちんと読みもせずに、党派性だけで、信憑性を貶めるために、結論ありきの「ファクトチェック」をやっているに過ぎない。
GWPFは多岐にわたる反論を公開しているが、フェイスブックは聞く耳を持つのだろうか。
更に悪いことに、フェイスブックは更に検閲を強化するとブライトバートが報道している(図2)。温暖化に関しては「正しい情報はこちら」だとして、フェイスブックが選定したサイトへ誘導する仕組みを作るらしい。
この画像を見てもわかるように、ブライトバートのニュースは目下のところフェイスブックで多数シェアされている一方で、共和党系のパーラーへのリンクも貼られるようになっている。
これからは、フェイスブックは検閲を強め、共和党系の人々はこれを嫌ってパーラーに乗り換えていくことになりそうだ。筆者記事も、フェイスブックからはシャドー・バンで追放される日が近いかもしれない。
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