今週のアップデート — 福島の現状、放射能の健康リスクはない(2012年10月1日)
今週のアップデート
1)札幌医科大学教授(放射線防護学)の高田純博士は、福島復興のためび、その専門知識を提供し、計測や防護のために活動しています。その取り組みに、GEPRは深い敬意を持ちます。その高田教授に、福島の現状、また復興をめぐる取り組みを紹介いただきました。「福島県、放射線量の現状−健康リスクなし、科学的計測の実施と愚かな政策の是正を」
政府の政策ミスによって、福島では正確な放射線量の計測が行われず、また無意味な避難が行われていると分析しています。そしてを人々に強制させており、現状の是正を訴えています。
2)「霞が関は「空気」で電力会社を殺す — 全国の原発を止めたのはたった一通のメモ」。アゴラ研究所の池田信夫所長がJBpressに、寄稿しています。
現在、日本の原発がすべて止まっています。その法的根拠はなく、一通の公印などもない文章の通達で止まっています。こうした行政指導のまやかしを指摘しています。
3)「オーストラリアの電力市場から、価格メカニズムを考える」。提携するNPO国際環境経済研究所のコラムを紹介します。
オーストラリアは、電力取引市場の活用、発送電分離など、電力システムの成功例としてよク取り上げられます。しかし実際には、電力の供給が不足気味になっています。その状況を分析しました。
今週のリンク
1)地球温暖化対策税、いわゆる環境税が今年10月から課税されます。(政府公報「CO2排出を抑制するため、地球温暖化対策のための税が始まります!」)これまでの、石炭や化石燃料課税を強化して、地球温暖化の一因とされる二酸化炭素の排出を抑制しようとするものです。
ところが、原発停止によって、経済環境は変わり、石炭などの利用が電力とエネルギーの安定供給のために必要になっています。この税を今課税することが適切かは分かりません。一世帯の負担は当初年1200円、さらに今後増額する見込みです。
産経新聞は「環境税導入 廃止含め早期の見直しを」という社説を掲載しました。エネルギー関連の負担増が続く中で、新たな増税の必要性があるのかと、疑問を示しています。
2)政府の諮問機関である日本学術会議は9月11日、内閣府の依頼を受けて「高レベル放射性廃棄物の処分について」という文章をまとめ、公表しました。
この種の廃棄物は法に基づき、溶かしてガラスと一緒に固め、地下数百メートルの安定した地層に埋めることになっています。原子力発電環境整備機構(NUMO)が02年から最終処分地を公募していますが、応募した自治体はありません。
現在の公募による最終処分地選定を抜本的に見直すよう求める内容となっています。将来的に取り出しが可能な状態で数十〜数百年間「暫定保管」し、その間に最終処分の方法や場所を決めるように提案しました。事実上、近年中の選定は「不可能」と言うことを指摘しました。
内閣府原子力委員会は10年9月、学術会議に解決策の審議を依頼しました。提言では、処分地選定が行き詰まった理由は(1)今の科学技術では10万年単位の地層の安定性を確約できない(2)原子力政策そのものへの国民的な合意がないまま処分地選定という個別課題を先行させた−−ことなどにあると指摘しています。
3)「始めよう!グリーンエネルギーの社会」(内閣府国家戦略室)。原発ゼロの迷走を主導した内閣府国家戦略室が開設したサイトです。グリーンエネルギーの取り組みを解説した啓蒙サイトです。古川元久国家戦略担当相は、原発ゼロのためにグリーンエネルギーの普及を訴えます。しかし、サイトを見る限り「グリーンエネルギー革命」の内容は具体的ではありません。IT革命と同じことが起こるという楽観的な見通しのみを示し、それに伴うコストと負担の配分が明確ではありません。

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