気候カルテルの構図はまるで下請け孫請けいじめ

Thx4Stock/iStock
昨年10月のアゴラ記事で、2024年6月11日に米下院司法委員会が公表した気候カルテルに関する調査報告書のサマリーを紹介しました。
サマリーでは具体性がなくESGの実態や悪質性が伝わらないため、報告書本編の内容も紹介します。日本国内ではまったく報じられないことがたくさん記述されていました。ぜひ日本企業の皆さまにも知っていただきたい内容です。盛りだくさんなので複数回に分けてお届けします。今回は気候カルテルの構図について。
4つの最も過激な犯罪者は、投資先の企業が脱炭素に取り組むよう要求する集団であるClimate Action 100+、その共同設立者である環境非営利団体Ceres、カリフォルニア州公務員退職年金制度(CalPERS)、アクティビスト投資家Arjuna Capital, LLC(Arjuna)である。
Climate Action 100+やCalPERSなどは日本企業向けのESGセミナー等でもよく目にしますが、米国司法省の報告書で「最も過激な犯罪者(most radical offenders)」と指摘されています。特に以下の章ではClimate Action 100+やCeresの行動が詳述されており、気候カルテルの構図が暴かれています。
Climate Action 100+は、企業経営陣との交渉から、株主決議を提出し、反対票を投じ、取締役を交代させることまで、(ネット・ゼロなどの)急進的な要求に対して遅れているとみなした重要企業への関与をエスカレートさせる。
(中略)
Climate Action 100+は、どの企業が気候問題の歴史において正しい側、どの企業が間違った側にいるかを特定するという使命を自負しているのだ。
Climate Action 100+は資産運用会社を脅迫し、顧客を武器化して気候カルテルに参加させ従わせる。
(中略)
2019年に資産運用会社であるブラックロック、バンガードがClimate Action 100+の支持する米国の株主提案すべてに反対票を投じた後、Ceresはブラックロック、ステート・ストリート、フィデリティを含む世界最大の資産運用会社数社に圧力をかけるキャンペーンを開始した。Ceresは資産運用会社の顧客を集め、顧客を通して資産運用会社に対して「気候変動への野心とリーダーシップを強化」することを強制した。
実際、ブラックロックが Climate Action 100+に参加したのは、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がブラックロックから500億ドルをシフトしたためであり、ロイズ・バンキング・グループの子会社であるスコティッシュ・ウィドウズがブラックロックとの資産運用契約に(Climate Action 100+を)盛り込むよう主張したためである。
他のカルテルと同様に、Climate Action 100+は「署名者の説明義務」を高めることでこの共謀からの離脱を見破り阻止する。
委員会による反競争的談合調査の開始を受けて、ブラックロック、ステート・ストリート、J.P.モルガン・アセット・マネジメントの世界最大級の資産運用会社3社が約14兆ドルの総資産を引き揚げClimate Action 100+メンバーから外れた。
これを読んで筆者は自身の不明を恥じました。ここ数年、ブラックロックなどの資産運用会社こそが世界中にESGを普及させてきた頭目であり、傘下の金融機関のESG部門と結託して企業に中身のないESG対応を強要し、通常の投資商品と構成銘柄はほとんど変わらないのにESGファンドと称することで割高な手数料ビジネスを展開してきたのだと思い込んでいましたが、実態は違ったようです。
彼らの背景にはClimate Action 100+などの気候カルテルが存在しブラックロックらも半ば脅迫されていたのでした。
そして気候カルテルから脅迫されたビッグスリーなどの資産運用大手がさらに立場の弱い金融機関やアセットマネジャーに圧力をかけ、その結果金融機関から企業に対して過激なESG要求が行われてきた、ということのようです。
これではまるで下請けいじめ孫請けいじめ。どうりでいくらESG評価基準について質しても明確な回答が得られないわけです。ESGには理論的な裏付けも、理念も信念もないのですから。
よく爽やかなプロフィール写真付きでレターやESGセミナーの案内メールを受け取りますが、実は皆さんご苦労されているようです。
なお、このClimate Action 100+には残念ながら多くの日本企業も名を連ねています。皆さん米国連邦議会の下院から過激な犯罪者と指摘された組織だというご認識をお持ちなのでしょうか。筆者が担当者だったら即刻脱退します。
■

関連記事
-
ところが規制委員会では、この運用を「原子力発電所の新規制施行に向けた基本的な方針(私案)」という田中俊一委員長のメモで行なっている。これはもともとは2013年7月に新規制が実施された段階で関西電力大飯3・4号機の運転を認めるかどうかについての見解として出されたものだが、その後も委員会決定が行なわれないまま現在に至っている。この田中私案では「新規制の考え方」を次のように書いている。
-
あらゆる手段を使って彼の汚点を探せ!というのが、フェーザー内相(社民党・女・53歳)の極秘命令だったらしい。 彼というのはシェーンボルム氏。2016年より、サイバーセキュリティの監視などを担当するBSI(連邦情報セキュリ
-
原子力をめぐる論点で、専門家の意見が分かれているのが核燃料サイクルについての議論です。GEPRは多様な観点から問題を分析します。再処理は進めるにしても、やめるにしても多くの問題を抱えます。
-
いろいろ話題を呼んでいるGX実行会議の事務局資料は、今までのエネ庁資料とは違って、政府の戦略が明確に書かれている。 新増設の鍵は「次世代革新炉」 その目玉は、岸田首相が「検討を指示」した原発の新増設である。「新増設」とい
-
「石器時代は石が無くなったから終わったのではない」 これは1973年の石油ショックの立役者、サウジアラビアのヤマニ石油大臣の言葉だ。 当時、イスラエルとアラブ諸国の間で第四次中東戦争が起きて、サウジアラビアは「石油戦略」
-
福島第一原子力発電所の重大事故を契機に、原発の安全性への信頼は大きくゆらぎ、国内はおろか全世界に原発への不安が拡大しました。津波によって電源が失われ、原子炉の制御ができなくなったこと、そしてこれを国や事業者が前もって適切に対策をとっていなかったこと、そのため今後も同様の事故が発生するのではないかとの不安が広がったことが大きな原因です。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。
-
はじめに述べたようにいま、ポスト京都議定書の地球温暖化対策についての国際協議が迷走している。その中で日本の国内世論は京都議定書の制定に積極的に関わった日本の責任として、何としてでも、今後のCO2 排出枠組み国際協議の場で積極的な役割を果たすべきだと訴える。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間