トランプ政権はエネルギードミナンス重視だが日本は脱炭素という愚行
トランプ政権の猛烈なスタートダッシュに世界が圧倒されている。ホワイトハウスのHPには、サインしたばかりの大統領令が、即日、続々とアップされた。下手な報道を見るよりも、こっちを見た方がよほど正確で早い。
トランプ政権はエネルギー政策をたいへんに重要視している。ホワイトハウスHPの「われわれの優先事項(Our Priorities)は僅か5行の簡潔なものだが、この中の5項目は「コストを下げる、国境を護る、エネルギードミナンスを解き放つ、強さによる平和を確立する、米国を安全にする」となっていて、エネルギードミナンスは、5つの主要課題の1つとなっている。
エネルギードミナンスとは、以前書いたように、米国の埋蔵する莫大なエネルギーを採掘し、大量かつ安価に供給することで、自国と友好国の経済力を高め、敵(中国やロシアなど)に対する優勢(ドミナンス)を構築する、という考え方だ。
https://agora-web.jp/archives/240206063735.html
この「READ MORE」をクリックすると、さらに説明があるが、ここも4項目しかない。
「アメリカを安全にする、コストを下げエネルギードミナンスを確立する(Make America Affordable and Energy Dominant Again)、行政機構を改革する、アメリカの価値を取り戻す」である。
ここでもまたエネルギードミナンスが4つの主要課題のうちの1つとなっており、しかももっとも多くの行数を割いて説明している。その内容を訳すと以下の通りだ:
- 気候過激主義に基づくバイデンの政策を廃止し、許認可手続きを合理化し、エネルギー生産や利用に過剰な負担を強いる規制(燃料以外の鉱物の採掘や加工を含む)をすべて見直し無効化することで、米国のエネルギーを解き放つ。
- エネルギー政策において、自動車、シャワーヘッド、トイレ、洗濯機、電球、食器洗浄機などにおける消費者の選択肢を拡大する。
- エネルギー緊急事態を宣言し、必要なあらゆる資源を活用して重要なインフラを構築する。
- 自然景観を損ない、米国のエネルギー消費者への奉仕に失敗する大規模な風力発電所へのリースを終了する。
- パリ気候協定から離脱する。
- すべての政府機関は生活費削減のための緊急対策を実施する。
- アメリカ第一の貿易政策を発表する。
- 米国企業を罰するような国内の税制の改正について、外国の組織の意向に囚われることはしない。
さて、日本はまさに「気候過激主義に基づくバイデンの政策」に擦り寄ってきたが、それはここで、トランプ政権によって全否定されている。
今後の日本政府の予定としては、1月27日には「地球温暖化対策計画(案)」へのパブコメを締め切る。この案には、2035年50%削減、2040年73%削減(2013年比)というCO2排出目標が書きこまれている。政府はこれを閣議決定して、パリ気候協定の事務局に対して、締め切りとされる2月10までに提出することになっている。
石破政権はただでさえトランプ政権に相手にされていないと報じられている。そこにきて、出来るはずのない数値目標を設定し、パリ協定に提出などしたら、ますます、その愚かさをさらけだすことになる。
日本は2月10日のパリ協定事務局への数値目標提出を無期延期すべきだ。米国が離脱したいま、そのまま提出しなければ、パリ協定は空文化する。
その上で、日本はトランプ政権からエネルギーを買えばよい。トランプ政権は、エネルギー・ドミナンスの一貫として、エネルギーを友好国に輸出する、ということもはっきりと打ち出している。
日本にとっても、中東も台湾周辺も不穏ないま、強力な同盟国であるアメリカからのエネルギー輸入は、安全保障上このましい。またトランプ政権は貿易赤字削減を目的として、日本にも交渉を仕掛けてくることは必定だが、そのときには、エネルギー輸入はよいディールの材料にもなる。
いまエネルギー政策の方針を大きく転換しないと、これから日本のエネルギー、そして対米関係は修復することが大変になってしまう。
■

関連記事
-
刻下の日本におけるエネルギー問題(電力供給問題)が中小企業に及ぼす負の影響について、安定供給・価格上昇・再生可能エネルギー導入・原発再稼働などの側面から掘り下げてみたい。
-
新しい日銀総裁候補は、経済学者の中で「データを基に、論理的に考える」ことを特徴とする、と言う紹介記事を読んで、筆者はビックリした。なぜ、こんなことが学者の「特徴」になるのか? と。 筆者の専門である工学の世界では、データ
-
前稿で紹介した、石橋克彦著「リニア新幹線と南海トラフ巨大地震」(集英社新書1071G)と言う本は、多くの国民にとって有用と思える内容を含んでいるので、さらに詳しく紹介したい。 筆者は、この本から、単にリニア新幹線の危険性
-
総選挙とCOP26 総選挙真っ只中であるが、その投開票日である10月31日から英国グラスゴーでCOP26(気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催される。COVID-19の影響で昨年は開催されなかったので2年ぶりとなる
-
「もしトランプ」が大統領になったら、エネルギー環境政策がどうなるか、これははっきりしている。トランプ大統領のホームページに動画が公開されている。全47本のうち3本がエネルギー環境に関することだから、トランプ政権はこの問題
-
米国保守系シンクタンクのハートランド研究所が「2024年大統領選の反ESGスコアカード」というレポートを発表した。大統領候補に名乗りを上げている政治家について、反ESG活動の度合いに応じてスコアを付けるというもの。 これ
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク、GEPRはサイトを更新を更新しました。 1)トランプ政権誕生に備えた思考実験 東京大学教授で日本の気候変動の担当交渉官だった有馬純氏の寄稿です。前回の総括に加えて
-
地球温暖化による海面上昇ということが言われている。 だが伊豆半島についての産業総合研究所らの調査では、地盤が隆起してきたので、相対的に言って海面は下降してきたことが示された。 プレスリリースに詳しい説明がある。 大正関東
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間