チェコのプラハでもう一つの気候会議が開催される
11月の12日と13日、チェコの首都プラハで、国際気候情報グループ(CLINTEL)主催の気候に関する国際会議が、”Climate change, facts and myths in the light of science”というテーマの下、開催された。
Two day Clintel conference in the Parliament of Prague – Clintel
そこで発表されたコミュニケは著名な科学者や研究者が起草したもので、「気候科学者が数十年に亘り、地球の気温に対するCO2の影響を体系的に誇張してきた」ことを明らかにし、想像上・架空の「気候緊急事態」が終焉を迎えたことを宣言した。
なお、CLINTELは「World Climate Declaration」を発表しており、現在世界の1961名の科学者、技術者、ジャーナリスト、政策決定者らがこの宣言に署名している。
発表されたコミュニケの内容をCLINTELの許可を得て翻訳してみた。
- 小氷河期が終わって以降、二酸化炭素の大気中濃度が適度に上昇したことは、人類にとって正味で有益であった。
- 予測可能な将来の大気中の温室効果ガスの増加も、おそらく正味の利益をもたらすだろう。
- 地球温暖化の速度と振幅は、気候科学者が長年予測してきたよりもかなり小さい。
- 温室効果ガスではなく、太陽が地球の気温の圧倒的な大部分を占めてきたし、今後もそうであろう。
- 地質学的証拠は、産業革命時代の地球温暖化の速度と振幅が、前例のないものでも異常なものでもないことを示している。
- 気候モデルは、本質的に地球温暖化がどの程度起こるのか、温暖化の原因が自然なのか人為的なのか、あるいはその程度について、何も語ることができない。
- 地球温暖化は今後も緩やかで、小さく、無害で、正味で有益なものである可能性が高い。
- 科学界の間では、異常気象の頻度や強さ持続時間は増加しておらず、今後も増加する可能性は低いという点で、大きな合意がある。
- 世界の人口は過去100年間で4倍に増加したが、気候に関連するあるいは気象現象に起因する年間平均死亡者数は99%減少した。
- 世界の年間国内総生産に占める気候関連の財務上の損失の割合は、建設されたインフラが危険な状況に置かれることが増えているにもかかわらず、減少しており、今後も減少し続ける。
- 主に欧米諸国が排出削減のために数兆ドルを費やしたにもかかわらず、世界の気温は1990年以来上昇し続けている。
- 仮に欧米諸国のみならず、すべての国が現在の軌道から直接かつ共同で、公式の目標年である2050年までにネット・ゼロ排出に移行したとしても、その年までに防止される地球温暖化は0.05~0.1℃にすぎない。
- この会議の主催国であるチェコ共和国が、2050年までに直接ネット・ゼロ・エミッションに移行した場合、その目標日までに温暖化を防ぐことができるのは、わずか4000分の1℃である。
- 英国の送電網当局の試算によれば、ネット・ゼロを目指して送電網を準備すれば3兆8,000億ドルかかる。また、送電網が英国の排出量の25%を占め、英国の排出量は世界の排出量の8%であることから、ネット・ゼロ達成のための世界的コストは世界の年間GDPの20年分に相当する2000兆ドルに迫るだろう。
- 風力発電や太陽光発電の設備容量が送電網の平均需要を上回っている場合、風力発電や太陽光発電をさらに追加しても、送電網のCO2排出量はほとんど減少しないが、電力コストが大幅に上昇し、新規および既存の風力・太陽光発電事業者の収入が減少することになる。
- 世界のネット・ゼロ・エミッションを達成するために必要なテクノメタルの資源は、15年間のネット・ゼロ・インフラを構築するのにすら十分ではない。ネット・ゼロは実際には達成不可能である。
- 風力発電と太陽光発電は他のどのエネルギー源よりもコストが高く、断続的で、発電量1TWhあたりの環境破壊が大きいため、政府は補助金を出すことも、優先順位をつけることもやめるべきである。その代わり、石炭、ガス、とりわけ原子力発電を拡大すべきである。
- 気候変動に関する政府間パネルは自らのシナリオに反対する参加者や発表論文を排除し、自らのエラー報告プロトコルを遵守せず、不誠実な結論を導き出した。このような政府間パネルは、直ちに解体すべきである。
最後に、このもう一つの気候会議は、「気候変動に関する公式見解に反対する科学者や研究者に対する迫害をやめ、その代わりに、長く崇高な伝統であった自由で開かれた、検閲のない科学的研究、調査、出版、討論を再び奨励すること」を科学界全体に呼びかけて、閉幕した。
なお、国際気候情報グループ「CLINTEL」については、昨年5月に杉山大志氏が論文を引用している。
IPCC報告の論点63:過去トレンドと掛け離れた海面上昇予測
CLINTELは、2019年9月23日、国連本部で開催された「気候行動サミット」当日、国連事務総長に対して、500名の科学者やエンジニアによる「気候変動政策に反対する」書簡を提出した。この宣言は、気候緊急事態の概念を否定しており、その賛同者は、現在、1961名に達している。
関連記事
-
G7首脳が原爆資料館を視察 G7広島サミットが開幕し、各国首脳が被爆の実相を伝える広島平和記念資料館(原爆資料館)を訪れ、人類は核兵器の惨禍を二度と繰り返してはならないとの認識共有を深めた。 しかし現実にはウクライナを侵
-
ロシアへのエネルギー依存を脱却すべく、欧州が世界中からエネルギーを買い漁っている。この影響で世界のエネルギー価格は暴騰した。これに耐えかねて、開発途上国では石炭の増産と石炭火力発電の利用計画が次々と発表されている。 ニュ
-
サプライヤーへの脱炭素要請は優越的地位の濫用にあたらないか? 企業の脱炭素に向けた取り組みが、自社の企業行動指針に反する可能性があります。2回に分けて述べます。 2050年脱炭素や2030年CO2半減を宣言する日本企業が
-
1月9日放映のNHKスペシャル「2030 未来への分岐点 暴走する温暖化 “脱炭素”への挑戦」は「温暖化で既に災害が激甚化した」と報道した。前回、これは過去の観測データを無視した明白な誤りであることを指摘した。 一方で、
-
熊本県、大分県を中心に地震が続く。それが止まり被災者の方の生活が再建されることを祈りたい。問題がある。九州電力川内原発(鹿児島県)の稼動中の2基の原子炉をめぐり、止めるべきと、主張する人たちがいる。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
広島、長崎の被爆者の医療調査は、各国の医療、放射能対策の政策に利用されている。これは50年にわたり約28万人の調査を行った。ここまで大規模な放射線についての医療調査は類例がない。オックスフォード大学名誉教授のW・アリソン氏の著書「放射能と理性」[1]、また放射線影響研究所(広島市)の論文[2]を参考に、原爆の生存者の間では低線量の被曝による健康被害がほぼ観察されていないという事実を紹介する。
-
中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)は、昨年5月に菅直人首相(当時)の要請を受けて稼動を停止した。ここは今、約1400億円の費用をかけた津波対策などの大規模な工事を行い、さらに安全性を高めようとしている。ここを8月初頭に取材した。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間