米下院司法委が大手金融機関と左翼活動家の気候カルテルを暴く
去る2024年6月11日に米下院司法委員会が「気候変動対策:環境、社会、ガバナンス(ESG)投資における脱炭素化の共謀を暴く」と題するレポートを公開しました。
これすごい内容なのですが、相変わらず日本ではほとんど報道がありませんでした。筆者が見かけた記事はロイターと日経のみ。
金融大手の気候変動での結託は独禁法違反、米下院司法委が報告書
何やら共和党が騒いでいるだけ、といった印象の記事だったので筆者も気にかけなったのですが、改めて報告書を読んでみたところ、脱炭素やESGを取り巻く悪質さについて多くの事実が明かされていました。
11月の大統領選でトランプ氏が返り咲いたら一気に動く可能性があるので日本企業も把握しておいた方がよい情報だと思います。そこで、サマリーの一部をご紹介します。
気候変動対策:環境・社会・ガバナンス(ESG)投資における脱炭素化の共謀を暴露
米国下院司法委員会中間報告書
2024年6月11日
エグゼクティブサマリー
競争は、すべてのアメリカ国民にとって価格を下げるだけでなく、より良い商品やサービスを生み出す。一方、談合は消費者にとって高い物価をもたらすため、最高裁は「独占禁止法の最高悪」と表現する。
委員会は、過激な環境・社会・ガバナンス(ESG)目標を米国民に押し付ける左翼活動家と大手金融機関の明らかな共謀を調査してきた。この共謀は、基本的な自由市場の原則に違反するだけでなく、何百万人ものアメリカ人消費者のコストを引き上げ、選択肢を減らす恐れがある。
委員会は、左翼環境活動家と大手金融機関の「気候カルテル」が結託し、アメリカ企業に「脱炭素化」と「ネット・ゼロ」を強要している証拠を入手した。気候カルテルのメンバーは、「クライメート・アクション100+」のような団体へのコミットメントを通じて、企業に炭素排出量の開示、削減を強制し、企業のリーダーシップに手錠をかけ、企業の言論や請願の自由を封じ込め、アメリカ経済を脱炭素化することに合意している。気候カルテルはまず企業経営陣と交渉し、次に株主委任状決議の提出と「フラグ付け」を行い、最終的には「従わない企業」の取締役を排除するという段階的な圧力戦術を武器にして、過激な政策を押し付けている。
気候カルテルのメンバーは以下の通り:
・クライメート・アクション100+、ネット・ゼロ資産運用イニシアティブ、ネット・ゼロのためのグラスゴー金融同盟(GFANZ)
・カリフォルニア州公務員退職年金基金(CalPERS)のような青い州(筆者註:民主党支持傾向の州)年金基金
・Ceresのような急進的環境NPO
(中略)
・スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)500の株式を保有し、議決権行使している「ビッグ3」資産運用会社、ブラックロック、ステート・ストリート、バンガード。
ESG談合の調査の一環として、委員会は合計で272,294の文書と2,565,258ページの非公開情報を受領し検討した。十分な資料を提出しなかったため、委員会はGFANZ、Ceres、As You Sow、Arjuna、BlackRock、State Street、Vanguard、ISS、Glass Lewisに対して文書召喚状を発行せざるを得なかった。文書証拠に加え、委員会は気候カルテル内の主要プレーヤーのインタビューや証言の書き起こしを完了した。
委員会が入手した証拠によれば、気候カルテルのメンバーは共通の目標に向かって結託している。すなわち、アメリカ産業の「脱炭素化」であり、これは必然的に生産量を減らし、アメリカの消費者の物価を上昇させる。これまでの調査で、気候カルテルがいかにアメリカ企業への攻撃をエスカレートさせ、アメリカ人の日常生活に欠かせない製品やサービスの生産削減を企業に強いているかが明らかになった。
委員会は以下のことを発見した:
– 気候カルテルは、アメリカの生活様式に宣戦布告した。気候カルテルは、アメリカ人が車を運転し、飛行機に乗り、食事をすることを可能にしている化石燃料、航空、農業産業の米国企業に対して、ネット・ゼロを求める「世界戦争」を仕掛けている。
– 気候カルテルは、企業に「脱炭素化」を強制することで合意した。クライメート・アクション100+のようなグループのメンバーは、炭素排出量の開示、削減、およびこれらの約束を強化するための強制メカニズムの採用によって、「2050年までに温室効果ガス排出量を正味ゼロ」に到達させるために、「(自分たちが)投資している企業と」関与することを明示的に約束している。
– 気候カルテルは、「気候変動の歴史において間違った側」にいる企業に対する圧力を「強化」し、「拡大」している。気候カルテルは、株主総会の決議を提出し、経営陣に反対票を投じ、自ら選んだ人物と取締役会のメンバーを交代させることでトップの座に就くつもりだ。
– 気候カルテルは「化石燃料を地中に埋めたまま」にし、価格を引き上げ、アメリカの消費者の生産量を減らそうとしている。ESG活動家が要求するネット・ゼロを達成するためには化石燃料の使用を削減しなければならない。飛行機での移動を2019年の水準に抑え、総飛行回数を12%削減しなければならない。食料需要の伸びは削減されなければならず、牛肉の消費量は現在の米国レベルの約半分まで削減されなければならない。
– 気候カルテルは、アメリカの消費者を攻撃して終わりではない。クライメート・アクション100+は、「単なる言葉/約束/情報開示ではなく、行動することが重要」である。同社は「単純な情報開示要求の域を超え」、現在では企業に対して「より野心的な」要求を行っている。
バイデン政権は、気候カルテルの共謀について有意義な調査を怠ってきた。ましてや、長年にわたる米国の反トラスト法違反に対する明白な強制措置をとることはできなかった。
報告書全文は冒頭のリンク先からご覧ください。クライメート・アクション100+の中で、上記ビッグ3が立場の弱い金融機関やアセットマネジャーを脅しており、その結果金融機関から企業に対して過激なESG要求が行われているという記述は生々しく、日本の下請けいじめを連想させます。
よく爽やかなプロフィール写真付きでレターやESGセミナーの案内メールを受け取りますが、実は皆さんご苦労されているようです。
また、司法委員会の調査によって得られた証言や提出された内部資料が、大手金融機関や左翼環境活動家の共謀・カルテルの明確な証拠として示されています。カルテルではないなどと言い逃れはできません。共謀の中身は極めて独善的であり、企業側の損失や消費者・市民生活への悪影響などまったく意に介さず、企業担当者としては怒りを覚えます。
さらに、委員会が繰り返し要求しても回答を拒否したり誤魔化したりした、との言及もあります。あれだけ企業に対して情報開示や経営の透明性などを強要するESG投資家側が、司法委員会の調査から逃げ回るというのも噴飯ものです。このような連中の要求に対して、企業側が真面目に応える必要はないなと呆れてしまいます。
前述のサマリーには具体例がないためESG投資家側の悪質性が分かりません。ぜひとも企業担当者に報告書本編を読んでいただきたいです。合わせて日本メディアには事実を公平に淡々と報じてほしいものです。脱炭素やESGに否定的な報道を避けていては、日本企業の意思決定に偏りが生じてしまいます。
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