ドイツ緑の党が消滅:実はマトモな「極右」のエネルギー政策

NHKより
ドイツのチューリンゲン州で州議会選挙が行われた。得票率は図1の通り。ドイツ連邦の連立政権与党である社会党(SPD)、緑の党(Grune)、自民党(FDP)が大惨敗。躍進したのはドイツでも日本でも大手メディアからは極右扱いされている「ドイツのための選択肢(AfD)」。

図1 チューリンゲン州選挙の得票率
出典:ドイツ第一放送
議席に至っては、緑の党は何とゼロとなり、消滅!

図2 チューリンゲン州選挙の議席数
出典:ドイツ第一放送
やはり選挙があったザクセン州でも結果はほぼ同様だった。ザクセン州もチューリンゲン州も旧東独で、日本ではあまりなじみが無いが、歴史ある由緒正しい地域であることを川口マーン惠美さんが書いている。
さて極右扱いされているAfDだが、そのエネルギー政策を見ると極めてマトモだ。
- 仮説的な気候モデルに基づく政策を止める
- 再エネ推進を止める
- 省エネ推進を止める
- 原子力廃止を止める
となっている。(文末に機械翻訳を付けておく)。
これまでドイツは「エネルギーヴェンデ(エネルギー転換)」をするとして、再エネと省エネを強力に推進する一方で、原子力と石炭火力を廃止してしまった。起きたことはエネルギー価格の高騰であり、庶民の生活は苦しくなり、産業はドイツから逃げ出している。この愚かな「エネルギー転換」を全て止めるというのがAfDの方針だ。
日本でも大手メディアはAfDを極右扱いしているが、これだけ多くの人々に支持されている政党を極右とレッテル貼りすることには違和感がある。ごく普通の人々がその政策の多くに共鳴するからこそのここまで高い得票率であろう。
緑の党が信奉するエネルギー転換ではなく、それを全面的に廃止すると表明しているAfDこそを、チューリンゲン州民は圧倒的に選んだのだ。
これからもドイツでの選挙は続く。ドイツの「エネルギー転換」はいつ消滅するのだろうか?
■
(以下、AfDホームページからエネルギー政策の部分を機械翻訳)
12. エネルギー政策
気候保護政策:迷走を止め、環境を守れ
地球が存在する限り、気候は変化し続ける。ドイツ政府の気候保護政策は、まだ証明されていない仮説的な気候モデルに基づいている。
再生可能エネルギー源法(EEG)」は国家計画経済であり、社会的市場経済からの逸脱である。それ以外の非市場的な発電所には、「気候保護」を理由に多額の補助金が出される。その結果、国民と経済から少数の補助金獲得者への巨大な富の再分配が行われている。
したがってAfDは、EEGを代替することなく廃止することに賛成する。AfDは、欧州法に反し違憲とされたEEGを連邦憲法裁判所で見直すようキャンペーンを展開する。
省エネ条例と再生可能エネルギー熱法の廃止
建物の所有者、住宅所有者、テナントに対して、建物の断熱対策や省エネルギー対策を求める政府のパターナリズムは終わらせなければならない。省エネ条例(EnEV)と再生可能エネルギー熱法(EEWärmeG)は、建築費の急激な上昇を招き、豪華な改修を正当化する理由となっている。その結果、多くのアパートの家賃は、中・低所得者にとってはほとんど手の届かないものになっている。AfDは、テナントとオーナーを保護するために、EnEVとEEWärmeGを代替なしに廃止することに賛成している。
バイオエネルギー:補助金の廃止、優先的なフィードインの停止
EEGを廃止し、バイオガス発電所からの電力への補助金と優先給電を廃止することに賛成する。割当制度によるバイオ燃料への補助金も廃止しなければならない。
原子力:代替エネルギーの研究-寿命延長が実施されるまで
2002年と2011年に行われた原子力発電の段階的廃止という性急な決定は、客観的に正当化されたものではなく、経済的に損害を与えるものであった。電力供給が十分に確保されていない限り、AfDは、現在も稼働中の原子力発電所の運転期間を暫定的に延長することに賛成する。
私たちは、原子炉や発電所の技術だけでなく、原子力エネルギーに関する研究も再認可したいと考えている。必要な安全基準が遵守されなければならないことは言うまでもない。しかし、原子力の利用はそれ自体が目的ではなく、将来的にはその代替も考えられる。そのため、他のあらゆるエネルギー形態も精力的に研究され続けなければならない。
■

関連記事
-
以前、尾瀬の自然保護活動に関して「仮想評価法(CVM)」という手法を使ってその価値の計測を試みたことがある。ハイカーが押し寄せて自然が荒廃した1960年代の尾瀬の写真と、保護活動により回復した現在の尾瀬の写真を2つ提示し、尾瀬の美しい自然価値に対して自分が支払ってもいいと考える評価額(支払い意思額)を聞いたものだ。回答のなかには驚くほど高額の回答もあり、平均すると年間で1人1000円超となった。担当者としては、尾瀬の自然に高い価値を感じてくださっていることを嬉しく思うと同時に、その場で自分が支払うわけではない「架空の財布の紐」は緩いのだとも感じた。
-
8月に入り再エネ業界がざわついている。 その背景にあるのは、経産省が導入の方針を示した「発電側基本料金」制度だ。今回は、この「発電側基本料金」について、政府においてどのような議論がなされているのか、例によって再生可能エネ
-
日本の原子力規制委員会、その運営を担う原子力規制庁の評判は、原子力関係者の間でよくない。国際的にも、評価はそうであるという。規制の目的は原発の安全な運用である。ところが、一連の行動で安全性が高まったかは分からない。稼動の遅れと混乱が続いている。
-
スマートジャパン 3月3日記事。原子力発電によって生まれる高レベルの放射性廃棄物は数万年かけてリスクを低減させなくてならない。現在のところ地下300メートルよりも深い地層の中に閉じ込める方法が有力で、日本でも候補地の選定に向けた作業が進んでいる。要件と基準は固まってきたが、最終決定は20年以上も先になる。
-
昨年10月に公開された東京電力社内のテレビ会議の模様を見た。福島第一原発免震重要棟緊急対策室本部と本店非常災害対策室とのやりとりを中心に、時々福島オフサイトセンターを含めたコミュニケーションの様子の所々を、5時間余り分ピックアップして、音声入りの動画を公開したものだ。また、その後11月末にも追加の画像公開がなされている。
-
武田薬品、炭素クレジットでの相殺中止 直接削減を拡大 武田薬品工業は毎年の温暖化ガス(GHG)排出量をボランタリー(民間)カーボンクレジットで相殺するのを中止する。信頼性や透明性を高めるため、高品質クレジットの購入は続け
-
エネルギー、原発問題では、批判を怖れ、原子力の活用を主張する意見を述べることを自粛する状況にあります。特に、企業人、公職にある人はなおさらです。その中で、JR東海の葛西敬之会長はこの問題について、冷静な正論を機会あるごとに述べています。その姿勢に敬意を持ちます。今回は、エネルギー関係者のシンポジウムでの講演を記事化。自らが体験した国鉄改革との比較の中でエネルギーと原子力の未来を考えています。
-
北海道大停電について「出力ではなく周波数が問題だ」というデマが流れているので、テクニカルな話だが、事故の経緯をくわしく見てみよう。苫東厚真の3基は一挙に止まったわけではなく、地震直後には1号機が動いていた。読売新聞による
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間