日本のCO2が「順調に」減っている理由は産業空洞化だ

2024年01月20日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 

Slavica/iStock

日本の温室効果ガス排出は減少している。環境省はカーボンニュートラル実現について「一定の進捗が見られる」と書いている。

出典:環境省資料

伊藤信太郎環境相は「日本は196カ国の中でまれに見るオントラックな削減をしている」と述べたそうだ。

このオントラックという言葉は、上図の直線に沿って排出量が順調に減っている、という意味で使われている。

だが、排出量が減っている理由は何か。経団連の資料を見ると、産業部門についての要因分解が載っている:

出典:経団連資料 図表7 産業部門の CO2排出量(電力配分後・速報値)増減の要因分解

図で①、②、③とあるのは以下の通りだ。

① 経済活動量の変化

② CO2排出係数の変化(エネルギーの低炭素化)

③ 経済活動量あたりエネルギー使用量の変化(省エネ)

つまり産業部門の2013年から2022年までのCO2排出削減の内訳は、76%が経済活動の低下(①)によるものだ。

エネルギーの低炭素化と省エネは合計で24%しかない。

つまり日本のCO2が「順調に」減っているのは、産業空洞化の結果にすぎない。

日本政府は、これまで「オントラック」でCO2が減ってきたから、2030年、2050年、とこのまま行けるとでも思っているのだろうか。そんなことをすれば、産業は本当に壊滅するだろう。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • スウェーデンの高校生グレタ・トウーンベリが気候変動に対する行動を求め国会で座り込みを行っている。これが欧州各国の注目を浴び、各地で若者たちが行動を起こしているという。ロンドンでは先週末、絶滅への反逆(Extinction
  • 7月22日、インドのゴアでG20エネルギー移行大臣会合が開催されたが、脱炭素社会の実現に向けた化石燃料の低減等に関し、合意が得られずに閉幕した。2022年にインドネシアのバリ島で開催された大臣会合においても共同声明の採択
  • 大阪市の松井市長が「福島の原発処理水を大阪に運んで流してもいい」と提案した。首長がこういう提案するのはいいが、福島第一原発にあるトリチウム(と結合した水)は57ミリリットル。それを海に流すために100万トンの水を大阪湾ま
  • ちょっとした不注意・・・なのか 大林ミカさん(自然エネルギー財団事務局長)が一躍時の人となっている。中国企業の透かしロゴ入り資料が問題化されて深刻度を増しているという。 大林さんは再生可能エネルギーの普及拡大を目指して規
  • 今年3月11日、東日本大震災から一年を迎え、深い哀悼の意が東北の人々に寄せられた。しかしながら、今被災者が直面している更なる危機に対して何も行動が取られないのであれば、折角の哀悼の意も多くの意味を持たないことになってしまう。今現在の危機は、あの大津波とは異なり、日本に住む人々が防ぐことのできるものである。
  • CO2排出を2050年までに「ネットゼロ」にするという日本政府の「グリーン成長戦略」には、まったくコストが書いてない。書けないのだ。まともに計算すると、毎年数十兆円のコストがかかり、企業は採算がとれない。それを実施するに
  • 福島第一原子力発電所の事故を教訓に民主党政権下で発足した、原子力規制委員会と原子力規制庁。独立性確保の名目の下で与えられた巨大な権力を背景に、その行政活動は明らかにおかしい。法律の無視、そして科学的分析を欠いた恣意的な規制を繰り返す。
  • 最近にわかにEV(電気自動車)が話題になってきた。EVの所有コストはまだガソリンの2倍以上だが、きょう山本隆三さんの話を聞いていて、状況が1980年代のPC革命と似ていることに気づいた。 今はPC業界でいうと、70年代末

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑